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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season2

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145/270

第V級探索者②

リヴさんと一緒に死体を片付ける。

とはいっても彼女が集めた死体を僕が【バニッシュ】で消すだけだ。

【バニッシュ】については、リヴさんには見られていたので改めて説明した。


リヴさんは『ん……掃除に……めっちゃ……便利すぎる』と唸って言った。

うんまあ、こういうときちょー便利だよな。


「……リヴさんはどう思います?」

「ん……なに」


リヴさんは彼等の探索者タグをしゃがんで集めていた。

ギルドに提出するとか。その様子はなんだか土で遊ぶ子どもみたいだ。


「こういう輩を殺すときです」

「ん……依頼で盗賊……討伐あるから……しゃあないって思う……」

「それはそうですけど」

「少年……こういうのは……敵体性生物……ゴブリンと同じ……攻撃したら……リヴたちを殺す……意志がある……殺す気……ん。少年は……死にたいの?」

「そんなわけは」

「ん……なら殺す……しかない……話し合い……無理なら……説得も無理……無駄な労力……後悔……するかも知れない……リヴはしたくない……だから殺すの」


振り向くリヴさんの表情は相変わらず無表情。

僕を映す赤い瞳もきょとんとしていた。

まあそうだよなと僕は独りごちる。









連れて来られたのはトルクエタムの拠点。あの屋敷だ。

リヴさんに案内されるの2回目だなと思いながら、2階の部屋に通された。

あれ、そういえば。


「パキラさんとルピナスさんはいないんですか」

「ん……タサンのところ」

「タサン?」

「色々ある……色々……ね」

「そうですよね」


僕は通された部屋を見回す。

ここはリヴさんの私室だ。


暖かい色のカーペット。クローゼット。小物棚。ベッド。

小さなテーブル。簡素な机。隅にある黒い大きな箱。

それだけの簡素な部屋だ。机の上には金属の箱が置いてある。


天生には光球が浮いていた。よく見るとベッドはパイプベッドだ。

クローゼットもなんかメカメカしく、ジャケットとスーツが収納されている。


簡素……? クローゼット近くの籠には……乱雑に下着が入っていた。

なんとなく彼女は洗濯とかしないだろうと思った。そして気付く。戦慄する。


リヴさんの私室。それってつまり《《おんなのこのへや》》だ。

えっと、いいのかな。なんか意識するとソワソワしてきた。


「……少年……どったの」

「あっ、いえ、それでナイフを直すというのは」

「ん……ちょっと…待ってて……その辺に……適当に座ってて……」

「は、はい」


その辺……ハイプベットに座る。

パイプベッド。パイプでつくられたパイプのベッドである。


この世界にもパイプはある。パイプがなければ水を運ぶことが出来ない。

銅のパイプが主流だ。いやそれは問題じゃない。布団はふかふかしていた。


ふかふかしているのが布団だからふかふかしているのは当然だ。

だが藁のベッドが未だ現役の僕からすれば、この布団はふかふかしている。


リヴさんは黒い大きな箱を漁っている。箱の表面には白く光る線が幾重も通って、チカチカと小さなランプが赤く点滅していた。


何の箱か分からないがファンタジーではない気がする。

それはこの質素な部屋にあちらこちらに見られる。


でもやはり意識するのは女の子の部屋ということだ。

しかしだ。パイプベッドか。そうか。パイプ。


「あっ」


思えば僕は大金を手に入れた。ならば、リフォームできるのではないか。

そうだ。今こそ藁のベッドを卒業するときだ。


それとだ。思わぬ大金に思わず貯金したが……前世の記憶のなんだっけ。

ああ、FIREだ。出来るのでは?


「ん……あった」


そうリヴさんが引っ張り出したのは、銀色に光る滑らかな箱だった。

カプセルに近い。大きさは両手で持つぐらい。というかこれカプセルだ。


「これは?」

「……確か……ナノ……ナノ…………ん。わすれた」

「そ、そうですか」


ナノマシーン……あるのか。いやまあ定番だけど、そうかナノか。

なんとなくどうやって再生するか分かってきた。


「でも……使い方は……リヴ。知ってる……」


カプセルには■△〇×の四つのボタンが側面に付いていた。えらくシンプルだ。

〇を押すと蓋が開く。カプセルの中は簡単な黒い仕切りがされているだけだ。


「ん……ここに……ナイフの……欠片を入れて……」

「はい」

「また……ボタン……押して……」


蓋が閉まる。そして■ボタンを押す。

すると蓋の部分がモニターになってナイフの姿が映し出された。

おお、アガロさんのナイフだ。しかしすぐに音がしてモニターに赤い文字が浮かぶ。


『Error……内容物が足りません……』


「リヴさん?」

「ん……足りない……」


殆ど粉になったからなぁ……。


「何か金属とかありませんか」

「……金属……ない」

「それでもなにかありませんか」

「少年……リヴ……気になって……いたことが……ある……そのポーチ……エリクサーと……異なる……匂い……鉱石……金属……?」

「金属? あっ、ひょっとして」


僕はポーチから布袋を取り出した。

その布袋から四角いサイコロ状の金属を取り出す。


表面がキラキラと金に光っているが純金じゃない。

愚者の黄金みたいな金属だがそうじゃない。


この金属は細かく何十層いいや何百層にも分かれている。

しかもチカチカと薄く僅かだが無数に光っていた。


なんなのか分からない。前世の記憶でもいくつか候補はあるがそれだけだ。

そのどれも正しいかも知れないし正しくないかもしれない。

だからなんなのかは不明だ。


これは死の墓のゴミ場で見つけた青い光・スーパーウルトラレアだ。

今も【フォーチューンの輪】で確認すると青く輝く。


まあこの部屋はいくつか黄色や青で光るものがあるから目を閉じたくなる。

それらについて興味はあるが……なんで下着が入った籠の中に青い光があるんだ?


「……それ……アンオブタニウム」

「えっ、なんて?」

「ん……入れて」


いつの間にかカプセルが開いている。

言われるままに謎の金属アンオブタニウムを入れた。


アンオブタニウム。聞いたことがない。

疑問もあるけど、このカプセルのことを知っているのはリヴさんだ。


これでナイフが蘇るならそれでいい。

蓋を閉めてリヴさんは△のボタンを押す。


「それは?」

「ん……混ぜてる」


△のボタンは緑に点滅し、それが終わると×のボタンを押した。


「それは?」

「ん……合わせてる」


×のボタンは黒く点滅し、それが終わるとモニターにナイフが映し出される。

うん。アガロさんのナイフだ。飼い犬の名前を使っている某教授に似ているナイフ。


それとOKの文字。どうやら造れるみたいだ。

リヴさんが■のボタンを押す。


「それは?」

「ん……復元してる」


■のボタンが青に点滅している。


「……ん。少年」

「なんですか」

「今回は……ごめんなさい……リヴ……やりすぎた……」

「いいですよ。こうして直りますし」

「ん……少年が強くて……楽しくて……だから……調子ノっちった」

「まぁ僕も楽しくなかったといえば、嘘になります」


必死だったけどリヴさんと模擬戦が出来て良かった。

ちなみに魔女相手だと向こうが無手で僕がナイフを使っても、手も足も出ない。

リヴはうっすらと微笑む。


「ん……よかった……少年が……おねえさんのからだで……たのしく……遊べて」

「……ですね」


言い方ぁ。

そして■のボタンの青い点滅が終わり、リヴさんは〇ボタンを押した。

カプセルが開くとドライアイスみたいな煙が出てくる。


それが晴れるとナイフが姿を現した。

復元されたアガロさんのナイ……復元?


「……」


僕はナイフを手にした。拵えなどは変化していない。

前と同じに見える。ただ刃は燃えるような青い色をしていた。


おかしい。燃えるような赤だったはず。

僕はリヴさんを見た。ジト目をする。


「ん……前より……硬く……なった……」

「……」


ナイフを動かすと光加減で刃に宿る青い炎がメラメラと燃えている……気がする。

うーんうーん。不思議だ。前よりも……うーん。どうなっているんだろう。


「少年……気に入ら……ない……なら……する……?」


不思議でチラチラ見ていたのをそう感じたのか。

リヴさんはバツの悪そうに言う。するってなにを?


「いや、そういうわけじゃないんです、その、これで大丈夫です」


僕はナイフを仕舞った。

リヴさんは赤い瞳を潤ませて頭を下げた。


「……少年……ごめんなさい……」

「リヴさん。もうわかりました。許しますよ」

「ん……少年……ありがとう……もしまた……おねえさんのからだで……遊びたかったら……ん……いつでも言って……少年の為なら……リヴ……がんばるから……」

「わ、わかりました……」

「ん……うん」


リヴさんは笑みを浮かべる。


だから言い方ぁ……。





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