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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season2

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138/284

第Ⅵ探索者⓪


ノッポとデブの騒ぎを聞き付けた衛兵たちに引き渡す。

衛兵の話によると、このノッポとデブは第Ⅵ級探索者。


なんというかトルクエタムのストーカーだった。

彼女たちの周辺に現れる不審人物としてマークされていたらしい。


彼女たちは僕が思っているより人気があった。

彼女たちに力があるので直接的な実力行使は無い。


しかし狙っているのはパーティーだけでなくクラン単位であると聞いた。

現にノッポとデブはクラン『ドラゴン牙ロウ』の下っ端。


『ドラゴン牙ロウ』―――知らない。ミネハさんなら知っているかな。

とにかく街中の抜刀は立派な犯罪だ。


衛兵に見つかったら捕まるのは誰だって知っている。

抜くなら人気のつかない場所が常識だ。クーンハントすら知っているぞ。

そんな感じで僕は人気者って苦労しているんだなと思った。









家に帰る間ずっと考える。

あのミネハさんをどう説得するか。

せめてものお礼として沢山貰った菓子はちょうどいい。利用させてもらおう。

ミネハさんも女の子だ。お菓子が大好き。


だがそれでは心もとないのでいつもの肉屋に寄って雑肉と牛肉を買う。

魔物牛じゃない。ビーフ100%だ。


「おい。聞いたか」

「なにがだよ」


肉を買うときに声が聞こえた。探索者だろうか。

男性がふたり。酒飲みながら雑談している。


「ダンジョンの調査団。戻ってきたらしいぞ」

「ホントか。じゃあ再開か」

「馬鹿。はええよ。調査報告ってあるんだよ。それから判断するから、まだまだ時間が掛かる」

「あー、ギルド仕事ってやつか。それで誰か死んだか?」

「死人は出てないが怪我人は出たようだぞ」

「じゃあマシか。なんによ。これでようやくダンジョンが全部行けるようになるな」

「そうだな。久しぶりに街のダンジョンの探索できるな」

「6階の採取依頼。けっこう溜まっているんだろ」

「それもやるのもいいな」


ようやく閉鎖が解かれる。でも僕は探索者じゃないからな。

それでも入れる方法はある。アクスさんたちに頼んでみるか。

肉を買って家へ急ぐ。


「ただいま」

「おかえり」

「ナ!」


ダガアと一緒にミネハさんが出迎えてくれた。ちょうどいい。

ひとりと一匹はすぐさま、僕の手にある肉の包みと菓子の袋などをちらりと見た。


「けっこう買ってきたのね」

「お菓子もありますよ。貰い物です」

「あら」

「それであのお願いがあるんですが」

「なに?」


僕は袋を全部置いて息をちいさく吸って、吐いた。


「見張り塔なんですけど、その、実は確認する必要性が出来まして」

「どういう意味?」


確認という言葉で目つきが鋭くなるミネハさん。


「実は―――」


僕は包み隠さず話して聖印も見せた。

ミネハさんは黙って聞いて、ダガアを撫でながら頷いた。


「ハイヤーンの遺産ね。聖印ね。ふうん。いいわよ」

「本当ですか!?」

「ただワタシも興味あるから見せてもらうのが条件ね」

「いいですよ。あっコラ」

「ナ?」

「それは後であげるから、大人しくしろ」

「ナ?」


ダガアが菓子の箱を開けようとしていたので咎めて抱き上げる。

まったく油断も隙もない。ミネハさんも笑う。


僕の住んでいる家。棲み家は厳密にいうと家では無く倉庫だ。

なので税金関連から免れていて、まあズルをしている。

一見すると人が住んでいると思われていない。


入り口も木製の狭く小さな物置きのドアにしか見えない。

そのドアは煉瓦造りの建物と石造りの白い建物の間にある。


僕の棲み家を見たミネハさんの第一声が「あんた何処に住んでんの?」だ。

正面から入ると真っ直ぐに別のドアがあり、そこを開けると中庭になっている。


中庭の真ん中にぽつんとある塔。石壁の塔。

見張り塔と僕は呼んでいる。なんとなくそんな感じがした。

それにしては小さい塔だと笑ったこともある。


「しかしこうしてみると」


トルクエタムの拠点と同じ様に四方を囲まれている。

そして初めて気付く。塔を挟んだ反対側……なんの建物だ。

ミネハさんが腰に手をあてて言う。


「こうしてみるとなによ」

「トルクエタムの拠点の塔と雰囲気が似てますね」

「ワタシまだ行ったことないのよね。ビッドからも誘われているんだけど」

「ビッドさん?」


『ザン・ブレイブ』の元パーティーメンバー。

黒髪で兎人族の女の子だ。確かホーランロップイヤーだった。

元々あの拠点は『ザン・ブレイブ』の所有物だった。


「解散したけどトルクエタムの好意でそのまま住んでいるって聞いたわ」

「へえー、いずれトルクエタムに入るんでしょうか」

「そうね。少なくとも今はまだそういうの考えられないって言ってたわ」


確かメンバー間の恋愛で解散したんだっけ。そりゃあなあ。

肩に乗ったミネハさんと話ながら見張り塔に入る。

ダガアは僕の頭に乗る。こいつ。


久々の見張り塔はどこか清潔感があった。

そんな僕の反応を見透かしてかミネハさんがえっへんと自慢する。


「ワタシが掃除したのよ」

「ありがとうございます」

「苦労したわ。それで二階だったわね。でも部屋なんて無いわよ」

「それでも確かめます」

「いいけど」


螺旋階段をあがって、気付いたけど、向こうは右巻きでこっちは左巻きか。

2階の壁にドアは無かった。


「やはり何もないわね」

「いいえ。壁が白いです」


なんで気付かなかったか。

第一の塔でドアがあったところが真っ白い壁になっていた。

それ以外は石のブロック壁だ。ミネハさんは僕に言われてハッとする。


「ぜ、全然気づかなかったわ」

「ナ!」

「さてと」


僕は【フォーチューンの輪】を発動させる。

壁は黄色に光って、えーと……あった。左下の緑の光。


ブロックひとつ分を押すとスライドして空洞が出来る。

向こうの塔とまるっきり同じだな。下の方へスイッチがあって押す。

するとカチャガチャカチャカチャっと白い壁がブロック状になって裏返ししていく。


「な、なによっこれ!」

「ナ!?」


左上から斜めにまるで波打つように白い壁に絵が現れる。

というかこの絵。間違いない。見覚えしか無さ過ぎる。


「ゴミ場だ」

「ゴミ場? ゴミなんてないじゃない」

「間違いない。ゴミ場だ。たぶんあそこだ」


そこに描かれていたのは柱と床。ダンジョンの光景だ。

そして中心から円状に輪が……9個、描かれていた。

9個の輪には異なる文様がそれぞれ描かれている。


ただ中心だけは何もない。綺麗に描かれた輪だけだ。

この9個の輪と似たようなのを僕はゴミ場の壁で見たことがある。


最後にまた文章。また古代語だ。魔女に習っていて良かった。


「ええっと―――『聖印を捧げ聖樹の祈りを聖室に捧げん。我は箱舟へ願う。ハイヤーンの遺産は夢に眠る』か……」

「意味不明ね」

「あっ、もっと下の方になにか書いてあります。えーと後から刻んだのか。『我、ハイヤーンに届かぬ叶わず。いつか辿り果てぬ夢を見続ける。アルハザード=アブラミリン』―――え?」


まったく予想外の名前に驚いた。

アルハザード=アブラミリン。第Ⅰ級探索者。


そして探索者ギルドの総本部であるグランドギルドのマスターだ。

それは全ての探索者のトップを意味する。


僕としては例の森とか色々と直接の繋がりはないけど、縁があるひとだ。


「これはまたとんでもない名前が出てきたわね」

「ナ?」

「ええ、探索者の頂点にいるひとよ」


これで終わりってわけじゃないよな。

聖印を持って第二の塔へ……僕は絵を見回す。


あっ、この中心の輪。何かを填め込む跡がある。丸いカタチから間違いない。

聖印を取り出して填め込む。ピッタリ入る。


するとその部分がガコンっと凹んでスライドし、空洞が出来た。

中に何か入っている。手を伸ばして握って取る。


見ると青い真四角のプレートだった。

表面には浮き彫りで白い大樹が描かれている。


これは……これが聖樹か。聖樹の祈り。

はて、どこかで見たような? どこだったか。


「これを聖室に捧げん、か」

「聖室ってゴミ場なんでしょ」

「そうですね。今から行ってきます」

「ワタシも行くわ」

「ナ!」


そう言うと思った。


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