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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season2

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135/270

トルクエタムとウォフ①

後日談というか、地上に戻ってからちょっとした騒動があった。

転移先は例の森の廃村の教会前だった。


そこには僕達と、生き残ったクーンハントの探索者。

それと不法侵入した探索者がそれなりに居た。


そんな彼等とイザコザが起きて、まあ殆どアガロさんが成敗した。

向こうは僕達を殺す気だった。なので手加減は無用だ。


命乞いをした者は気絶させて縄で縛る。

後で衛兵に引き渡す。


クーンハントの雇い仔も何人か生きていた。

彼等はすっかり怯えていて抵抗も何も無かった。


さすがに縄で縛ることはしない。

ふと男の子と女の子が隠れるようにして離れて行ったのを僕は見た。


雇い仔のみすぼらしい恰好と違ってしっかりしていた。

クーンハントとは無関係だろう。


その日のうちに衛兵に引き渡す。

それからギルドに報告して解散して家に戻ってベッドで泥のように眠った。

起きたのは次の日の昼。ご飯を食べてまた寝る。


そして次の日に起きると、ミネハさんが僕の腹の上で仁王立ちしていた。

鋭い視線を向けられて、小言を浴びせられる。


さすがに寝過ぎたみたいだ。起きて一緒にご飯を食べる。

ダガアもすっかり元気になっていた。


ご飯を食べ終わった後、ナイフの手入れをする。

ひとつずつ、ひとつずつ丁寧に油を塗って拭いて磨いて研ぐ。


最後は死の墓の最深部で新しく手に入った木製の柄のナイフ。

分厚い刃物だ。最深部で手に入れたけどごく普通のナイフ。

この中では一番安い刃物だ。でも結構好きだ。


「そういえばこういうので折り畳み式があったような」


サバイバル用とかであったような。

さてと、今日は何をしようか。

魔女は溜まっている仕事を片付けるのでしばらくは無理だ。


久々にゴミ場にでも行くか。

よし。そうだな。ゴミ場に行ってアリファさんところに行く。

それでシードル亭でご飯。あと肉屋とかに寄って帰る。そうしよう。


立ち上がって準備をして、棲み家を出た。

ゴミ場に向かう途中、見覚えのある後姿を見つけた。


「リヴさん?」

「ん……少年……よっ」


振り向いて気楽に手をあげる。

光る白桃の髪。赤い瞳。白い肌。綺麗な顔立ち。


黒いジャケットを羽織りスペースな白ボディスーツ姿。

腰にあるのは一体成型されたブレード。相変わらずファンタジーで浮いているなあ。


「お久しぶりです」

「ん……元気……?」

「はい。それなりに」

「ん……良かった……あっ……これからヒマ?」

「ええっと、まあ、特にこれといった予定はないです」

「……ん……じゃあ来て欲しい……ところがある……」

「いいですよ」


どこだろう。

リヴさんは歩き出す。

ハイドランジアの北東に向かっている。

あの辺はちょっとした森林公園とか森と別荘とかあったな。


「ん……少年は最近どう」

「えっ、そうですね。色々とありました。リヴさんは?」

「……ん。リヴも色々とあった……」


色々とあるよなぁ。ん? ハイドランジア北東地区?

それって確かパキラさんが言っていた。


「……ひょっとして向かっているところって」

「ん……思い出した……少年…・・ありがとう……」

「なんですか急に」

「ん……お金……パキラの……大金。少年たちのおかげ……聞いたから」

「あ、ああ、拠点が購入できてよかったです」

「ん……でもいいの?」

「なにがです」

「……あんな大金……ポンッとあげるの……ん。リヴ……ビックリ」

「あー……まぁ大金過ぎてピンときてないのもありましたし、それに僕にはこれがあるから、だから今も別に後悔とかないです」

「……その篭手……ん……なんか凄い……」


マジマジとリヴさんが僕の【静聖の篭手】を凝視する。

リヴさんの赤い瞳。綺麗だな。


「そんなに凄いんですか」

「ん……リヴのマクシミリアンAMDスーツと……同じくらい……すごい」


そのスペース的なスーツ。マクシミリアンAMDスーツっていうのか。

AMD……何の略だろう。まぁでも褒められて嬉しくなる。


「それは、その光栄です」

「ん……魔女が造ったのは……パキラに聞いている……あの魔女……大した腕前」


リヴさんに言われるとなんかスケールが違うように感じる。

そんな感じで雑談すると北東地区に着く。


ここは森林が広がる別荘地だ。

貴族や商人や名だたる探索者の別荘や邸宅がある。


近くの森林公園には英雄像があり、また道の真ん中にも英雄像がある。

北東の奥には山があり、滝が有名だ。

名称は……オブ……なんだっけ。


「ん……着いた」

「ここですか」

「……リヴたちの新拠点……」


それは三階建ての屋敷だった。

特徴的なのは左端の二階と三階を繋げたような四角い四つの窓が目立つ出っ張りだ。


こういう建築物を前世の記憶ではオーバーハングという。

この屋敷はオーバーハング建築だ。


しかし十字を描く四つの窓……か。サトゥルヌスを連想させるなぁ。

それにしても外見は一階が全部白くて、二階や三階がレンガ柄だ。


なんだか変わった屋敷だな。


「……ここが」

「ん……中へ……案内する……」

「えっと、いいんですか」

「ん……来て」


正面玄関は両扉だ。

えっマジで……両扉にはライオンヘッドのドアノッカーが設置されていた。


ゲームや漫画やアニメや映画でしかない。

ライオンヘッドのドアノッカー。実在していたのか。


「おお」

「ん……どうしたの。中に入る……」


リヴさんが扉を押し、僕達は屋敷に入った。

二階への階段や各廊下に続いてはいたが、なんというか。

意外にエントランスホールはこじんまりとしていた。


実際タサン侯爵家が滞在している別邸は豪華で大きなエントランスホールだった。

でも僕はこういう感じの方が好きだな。

リヴさんが歩くのでついていく。


二階へ上がって角を曲がると、見知った人物に出会う。


「ウォフ?」

「パキラさん。どうも」

「何故におぬしがここに」


パキラさんは私服姿で本を手にしていた。

髪を軽く掻き上げた。リヴさんが説明する。


「ん……ぐうぜん出会って……連れてきた」

「そういうわけです」

「……リヴ。おぬし」

「ん……せっかくだから……ルピナスは……?」


なんだ? パキラさんは溜息をついた。


「あやつなら部屋じゃ」

「ん……いこ」

「は、はい」


そのままパキラさんと別れて二階の突き当りの部屋へ。

リヴさんはドアをノックする。


「なんですの」

「ん……お客さん……連れてきた」

「来客の予定あったかしら。どうぞ」

「失礼します」


よく分からないまま僕は入室する。

ルピナスさんは驚いた顔で優雅なティーテーブルから立ち上がる。


当然だけど私服姿だ。

でも初めて見るから新鮮さがある。


「な、なんであなたが……」

「こ、こんにちは」


ルピナスさんは僕を驚いた表情のまま見つめ、リヴさんを睨んだ。


「ん……たまたま偶然に……会っただけ……それで……連れてきた」

「……はぁ、わかりましたわ。子供。いいえ。ウォフさん」

「は、はい」

「ここではなんですから移動しましょう」

「は、はい」


なんだろう。なんかこうさっきから空気が妙だ。

僕はルピナスさんたちの後をついていく。

そうするとまたパキラさんに出会った。


「なんじゃ」

「パキラ。あなたも来るのよ」

「むう?」


そんな感じでパキラさんも合流。トルクエタム集合だ。

ルピナスさんか。悪い人じゃないのは分かるけど色々と苦手な部類だ。


妙に沈黙したまま僕達は1階のリビングルームに入る。

大きな暖炉の前に白いソファが二組と白いテーブルがあった。


本棚に食器棚。奥には厨房が見える。

なんだかモデルルームみたいな清潔感がある。


「どうぞ座って」

「は、はい」


ルピナスさんに進められ、白いソファに座る。

そしてテーブルを挟んでルピナスさんを真ん中にして三人が座る。


「…………」


まさかの第Ⅲ級探索者の実力派パーティー・トルクエタムと対面か。

3人とも稀なほど華やかな美少女なので、こうして揃うと妙な迫力がある。


いやいや、なんでこうなったんだ。

ルピナスさんが僕をジッと見る。


「まずは、そうね。その、ウォフさん」

「は、はい」

「わたくしたちをエリクサーで助けてくれてありがとうございます」


ルピナスさんは丁寧に手を添えて頭を下げた。

ああ、そうか。とうとう来たか。



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