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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season2

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116/284

猫と狐と犬①


まさかの猫と狐と犬が揃った。


「魔女じゃと……むう」

「あの、あれが魔女様……あの、きれいです。とても美人です……」


パキラさんとジューシイさんが唖然とする。

なんで魔女がここに―――いいや。違う。僕はハッとする。


「魔女じゃない」

「む?」

「わふっ?」

「へ? へ?」


僕はハッキリと指を差して言った。


「あなたは魔女ではないっ!」

「え?」

「わふ?」

「いやいや、いやいや、魔女だねえ。師匠だねえ。どういうことかねえ?」

「嘘だっ! 万年引き籠り魔女が街中に出られるわけがないっ! 僕は森の家と森の中以外に魔女を見た事がない。騙されんぞっ!」


万年引き籠り万年独り身魔女が独りで街に来られるわけが無い!

おのれ、偽者め! よりによって厄介が極まっている魔女に化けるとは!

変身のレリックか。化けるレリックだな。おのれ。変装レリック。


「確かに確かに、コンは1年の9割は家に引きこもっているけどねえ。ほらほら、この狐耳。それと三つの尻尾。よく見るんだねえ。まさしくコンだねえっ」


こっちにややお尻を向けてフリフリと三つの尻尾を揺らす。

魔女の三つの尻尾はひとつずつ実は毛色と毛並みが違う。


右側から1番目の尻尾は根元から先端まで白銀色で、フサフサしている。

2番目の尻尾は付け根が亜麻色で先端が白色でフカフカしている。

3番目の尻尾は付け根がうっすらと白い亜麻色の尻尾でフモフモしている。


つまりこの三つの尻尾は!?


「あっ魔女だ。本物の魔女だ!」


僕はハッとする。三つの狐の尻尾。でかいケツ。あと妖艶エッチな身体。

魔女だ。間違いなく魔女だ。なんてこった。魔女じゃないか。


「……確認方法はともかく。どうやら本物の魔女のようじゃな。ふむ。じゃが、三つの尻尾というのは確かに珍しいのう。わらわもふたつじゃが」


そう言われたので、ついパキラさんの尻尾を見てしまう。

長短の白い尻尾だけどよく見るとふたつの尻尾の色合いが……同じだ。

付け根から先端まで雪のように真っ白くてきれいだ。


「あのあの、複数の尻尾の獣人族は珍しいです。あたくしはひとつです!」

「ジューシイ。わざわざ強調せんでもよい。というかスカートじゃぞ。はしたない」

「あのあの、わん。ごめんなさい」


恥ずかしくて耳の先まで赤くなったジューシイさんは、しゃがんで顔を両手で隠す。

可愛かったので良し。彼女の尻尾は先端が薄い黒色だ。

丸まったタイプではなく垂れタイプ。その形状はぶわっと拡がっていた。


それにしても縞パン……この世界にもあったんだな。

ちょっと感動した。


「はは、はは、うんうん。愉快な子たちだねえ」


それはそう。魔女は困った笑みで僕をみつめる。僕は謝罪した。


「すみません」

「まったくまったく、ウォフ少年がコンをどう見ているか分かった気がしたねえ」

「すみません。まさか魔女が外出できるなんて思わなくて」

「ちょっとちょっと! いやいや、いやいや、出来るねえ。確かに確かに。森から出るのは……………どのくらいかサッパリ分からないほどだけどねえ。ここまで来るのに何度も何度も心が折れて憲兵に怪しまれたりして、もう今から帰りがツライツライとついさっきまで憂鬱で半分泣きそうになっていたけどねえ」


ああ、まさしくこれこそ僕の師匠の魔女だ。

パキラさんがジト目になる。


「……なんかダメ人間の究極形みたいじゃな。これが魔女か」

「あのあの、あの、でも分かります。あたくし。タサン家の地下墓所にずっと引き籠っている姉がいますから、そういうの分かります!」

「えっえっ、さすがにさすがに地下墓所に引き籠るのと一緒にされたくないねえっ」


魔女は辟易する。それもそう。ちなみにその姉。

レルさんに腐肉プリンを食わせたり、ホカホカの腐肉ピザを投げてぶつけた。

あの13番目の姉だよな。

まさか地下墓所に住んでいるとは思わなかった。タサン侯爵家やばくない?

今更か。


「なんじゃそれは……タサンの闇かのう」

「あのあの、あの、違います。闇ですけど闇じゃないです!」

「闇ではないか」


闇だよな。いわゆる黒歴史的なヤツだよな。

たぶん一生治らないヤツ。魔女は愉しそうにする。


「うんうん。やっぱり君たちはとても愉快だねえ。そうだねえ。まずは自己紹介をしようかねえ。コンは魔女。第Ⅰ級探索者で『蓋世の魔女』という通り名があるねえ。そしてウォフ少年の師匠だねえ」

「わらわはパキラ。第Ⅲ級探索者でトルクエタムのメンバーじゃ」

「あのあの、あの、あたくしはジューシイ=タサンと申します!」

「えっと、ウォフです。魔女の弟子やってます」


互いに自己紹介して、僕は気恥ずかしくなる。

魔女はニヤニヤとする。


「いつもいつも愛弟子のウォフ少年がお世話になっているねえ」

「うむ。まあ、わらわも世話になっておるといえばそうじゃのう」

「あのあの、あの、ウォフ様にはあたくしもお世話になってます」


そうだったかな。そうだったかも。

魔女は上機嫌だ。そういえば他人と話す魔女も珍しい光景だ。


「うんうん。本当に可愛い子たちだねえ。ところでところで、コンは気になったんだけどねえ。コッフフフ~コッフフフ~、君たちはウォフ少年の愛人かねえ」

「愛人!?」


というかなにその笑い声。


「は、はあぁっ!? な、なにを言うておる、この魔女め。普通は恋人とか彼女じゃろう! あっいや違うが! わらわ、ぜんぜん違うがのうっ!」


パキラさんが慌てる。頬を朱に染めて尻尾を立たせて慌てている。


「あのあの、あの、わん。あのあの、愛人。わんわん……わんっ」


ジューシイさん。おろおろと身振りして困ったように鳴いている。

実家の犬も宝物の野球ボール失くして探すとき、ああなっていたなあ。


自分で埋めたのに―――僕は溜息をつく。


「魔女。なんで愛人なんですか」

「それはそれは、コンがウォフ少年の恋人だからだねえ。だからだからねえ。君たちはウォフ少年の愛人なんだろうねえ」

「恋人!?」


それ初耳なんですが。


「わふっ!? あの、あのあの、あのあの、あの! あたくしは、あたくしはウォフ様の……じゃなくて、あの、ウォフ様は……かい、友達です! 大切な友達です! あと魔女様はウォフ様の恋人じゃないです!」


かい? パキラさんが助け得たりと魔女に言う。


「そうじゃ。友じゃ! 親しい友じゃ。それと魔女。おぬし恋人じゃないじゃろ」

「そうですよ。友達です。あと魔女は師匠です」


そうそう。友達だ。ともだち。あと魔女は師匠だけど恋人じゃない。

すると魔女は口の端を愉快に曲げていじわるそうにニヤニヤし始めた。なんだよ。


「実は実はねえ。師匠と書いて彼女と読むんだねえ」

「読みませんよ」

「読まぬわ」

「あのあの、読みません。読まないです」


僕達に即座ツッコミされ、魔女はちょっと恥ずかしそうな微苦笑を浮かべた。


「おやおや、君たち。友達なのにやけに突っかかるねえ」

「友じゃからこそ。悪い女に引っ掛からぬようにのう」


そう言ってパキラさんが何故か僕の腕を掴んで寄り添う。


「あのあの、あの、友達としてウォフ様を心配して当然です」


そう言ってジューシイさんも僕の腕を掴んで自分に寄せる。

ふたりとも魔女をジィッと鋭い眼差しで睨んだ。


魔女は僕達を眺め、にやっとした。


「むうむう。両腕は盗られたから、コンはここにしようかねえ」

「えっ、ちょっ」


魔女は思いっきり僕の胸元に飛び込んだ。ちょっ待てよ!?


「狐、おぬしなにをしておるんじゃっ!?」

「あのあの、それはさすがに魔女様でも、わわん。ダメです!」

「おっとおっと、なにをするんだねえ」

「これ狐、離れろ」

「あのあの、ウォフ様から離れてください!」

「ちょっと三人とも?」

「ミャアアアァァァ」

「ガルルルルルゥゥゥ」

「コオオォォォンンン」

「えっ、ちょっ、三人とも暴れないで!」


なんなんだこの猫と狐と犬。ここは動物園か。美少女動物……魔女は美女だ。

ええいっ、僕を真ん中に争わないで色々と色々と三人のあれやそれやこれが当たる! 当たっている! 当ててんのか! 


いや主に当たっているのは魔女とジューシイさんのだ。

パキラさんは、尻尾とお尻がよく当たっている。うん。


「ガルルルルルゥゥゥッッッ」

「ミャアアアアアァァァ」

「ああ、もう」

「コオオオォォォォンンン」


僕は無力だ。


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