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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season1

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ウォフ13歳①


この世界は前世とは比べられないほど過酷で人の価値が低い。

いくら僕が前世の記憶がある転生者という存在だったとしてもだ。


ただ今の年齢では理解できないことも分かるのは便利だったりする。

でも僕の記憶は何かこの世界を変革できたりとかは……ない。


マヨネーズのつくりかたも知らない。

なんであれって腐らないんだろうな。


「さてと、そろそろ行くか。いってて」


古い木枠に藁を敷いたベッド。硬くてたまに腰とか関節が痛い。

もうちょっとなんとかしないとな。


それと、そろそろ藁を替えないと虫が湧く。

殺虫剤でも作れたらいいんだけど、そんな知識もない。


とりあえず樽に溜めた水で顔を洗って、割れている鏡に顔を映す。


「……何度見ても慣れない」


苦笑する。青髪銀目。幼い顔立ち。

実際13歳だから幼い。


毎朝見るけど、どこか遠くの少年を見るようで自分だという感覚は薄い。

転生者だからだろうか。


それでもこの顔は僕だ。

布で顔を拭いて朝食のパン豆を食べる。


パンのようにモチモチした大きな豆だ。

焼くと柔らかく素朴な味で、まあ腹は膨れる。


強引に水で流し込んで食べ終わり。

後は日課の訓練。それが終わるとナイフを装備して棲家を出た。


今日は晴天。雲ひとつなく青々として日の光が眩しい。

街の白い建物が微かに鈍くだけど光っている。


この街の壁や建物の材質は魔物避けの効力がある。

だから街の中を含めて周辺に幾つもダンジョンがあるのに街として今も存続しているわけだ。


街の名前はハイドランジア。水の容器という意味らしい。

確かに地下水が豊富で水に困らない街ではある。


ハイドランジアの西地区の広場。鐘楼の隣。

ぽっかりと大きな怪物の口みたいな洞穴が突如としてあらわれる。


ここがダンジョンの入り口。

僕はまず門番に挨拶した。


「こんにちは。ガウロさん」

「よう。今日もか」


ガウロさんはベテランの門番で顔に傷があって盗賊みたいに怖い。

昔は探索者だったが顔に傷を負って門番になった経緯がある。


「はい。300オーロ」

「おう。毎回しつこいと思うが2階までだ。魔物が出たら逃げろ。いいな」

「わかりました。いってきます」

「遅くなるなよ。刻限は夕方までだ。鐘の音は聞こえるだろ」

「はい」


顔は怖いけどこうやって注意や心配してくれる優しいひとだ。

ハイドランジアには鐘楼がいくつかある。


正確なのかともかく、次の鐘が鳴るまでを大体1時間としていた。

鐘は次の鐘で2回。その次で3回とひとつずつ増えて、夕方に止まる。


そして真夜中に1回だけ鳴る。それで1日が終わりだ。

夕方の鐘は12回。それが鳴ったら刻限ということだ。


ダンジョンに入る方法はふたつ。探索者になるか入場料を払うか。

入場料は300オーロ。オーロは大陸貨幣単位。


ちなみに最小貨幣は雑銅貨。

銅の含有量が低く雑貨と呼ばれ、銀貨と金貨にもある。

300オーロだと雑銅貨30枚必要だ。


なお探索者になるとタダで入れる。

探索者は成人じゃないと登録出来ない。


この辺りの成人は14歳。

僕は13歳なので来年、探索者として登録できる。

ただ登録料が12000オーロとかなりの高額だ。


借金も出来るがガウロさん曰く利息が高くてお勧めできない。

なので頑張って稼ぐしかない。


まるで巨大な怪物の腹の様な岩肌の入り口を抜ける。

唐突に人工的な石造りの通路になった。


明らかに人の手によるものだ。

しかしダンジョンは人知を超えた驚異なので真相は不明だ。


ダンジョンの謎は大いに興味はあるがそれを人生の道とはしない。

石造りの道をレリック【危機判別】を使いながら慎重に進む。


2階へ降りる階段を通り過ぎる。

そのまま突き当たりを右へまっすぐ行くと、急にひらけた場所になる。


そこには大量のゴミが山積みされていた。

ダンジョンから排出されたゴミだ。


ここが僕の仕事場。

ダンジョンのゴミ場だ。


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