第三側妃
夜
今夜は第三側妃の宮だ。
成功例ではないと言ったきり、王の口は重い。
情夫は何人かいるが落ち着いた関係ではないそう。
『情夫が複数…逆ハーレム?』
いつもと違う雰囲気だ。
出迎えた第三側妃は見事な金髪に菫色の瞳の艶やかな美女だった。
30半ばと聞いていたけれど20代に見える。
情夫が複数人と言っていたけれど、この部屋には二人だけ。
側妃のすぐ後ろに控えている浅黒い肌に淡い金髪の20代後半くらいの男と
壁際に控えている40代くらいの執事っぽい男だ。
「あら?綺麗な子連れてますのね。」
政治的な話はそこそこに第三側妃が私の方を見て言った。
「お前でもさすがにこいつは無理だぞ。」
と煽るように王が言う。
何の話?
「ずいぶんと自信がおありですこと。」
と側妃が言えば王が答える。
「ああ、生涯の忠誠を誓ってくれた忠臣だからな。」
いやそんなことしてないけど。
側妃はフフっと妖艶に微笑んだ。
「一晩も有ればその忠誠は私のものに。」
「いや。今度こそそれは無い。」
「じゃ一晩お貸しいただけますね?」
王は壁際の男に目を向けた。
「お前の方はあいつでいいな?」
「ええ。」
と側妃が頷く。
「では明日の朝、こいつに仕える相手を選ばせる。
勝った方が二人の主だ。」
「ええ。この子はきっと帰りませんわよ。
いつものようにね。」
「では従兄殿。こちらへ。」
と壁際の男に向けて王が言う。
従兄なんだ。
並ぶと確かに従兄っぽい。
茶色の髪も緑色の瞳も同じで、王をマイルドにしたのが従兄さんってかんじだ。
従兄を連れて王が出ていく。
すれ違いざまに王は片目を瞑って言った。
「一晩耐えろ。」
えっと私賭けに使われたってこと?
いつものようにってことはこういう賭けは何回も行われていて、
いつも側妃が勝ってるってことかな。
そのわりに他に男がいないのは?と見回すと射殺すような視線とかち合った。
浅黒い肌の従者だ。
感情も思考も私への敵意で埋め尽くされてる。こっわ。
『男の嫉妬は醜いお!』
いやそんなレベルじゃないけど。
他の男たちってどうなってるんだろう。
「あのっ、他の男性は居ないのですか?」
聞かずにはいられない。
「あー他の子たちねえ」
と側妃が浅黒い肌の男を見る。
「この子がやきもち焼いていじめちゃうから今は下働きみたいなことをさせてるわ。」
一応無事ではあるのかな。
もう情夫はこの男だけでいいんじゃないの?
「でも大丈夫。あなたは特別可愛がってあげるから。」
側妃が私の体に触れると後ろの男の殺気がぶわっと膨らむ。
違う意味で可愛がられそう。
「ご冗談を」
と側妃の手を取り私から離すと
《触れたな?コロス!》と男の心の声が伝わってくる。
もうどうしろって言うの。
そもそもなんでこんな賭けをしてるんだろう。
『さっきの従兄さんを解放するため?』
かな。
あの人の首にも制約魔法の帯は視えたから、側妃に隷属状態ってことだよね。
でも側妃とあの人の間には恋情ぽいものは視えなかったなあ。
まあこの側妃様、魔力はほとんど無いらしいけれどガードが固いのか
思考も感情もよく視えないんだけど。




