ウィズとロイス
ウィズを連れてきて、オングと二人で話を聞く。
寝付けなかった夜に家を抜け出して行った森の近くの湖で
初めてロイスに会ったんだそうだ。
湖は町の水源でもあったから昼は人目もあって
ロイスは夜にこっそり湖に来ていたらしい。
暑い、寝苦しい夜で、ロイスは湖に足を浸しパシャパシャと水を蹴って遊んでいたそうだ。
ウィズに気付いたロイスは逃げようとしたけれど何とか引き留めて
その後も何回か一緒に過ごしたことも有ったのだと言う。
「集団で出くわした時、何があったんだ?」
単刀直入にオングが聞いた。
「ああ、あの後ロイスに湖で会うことは無くなったんだよな。」
遠い目をしてウィズが言う。
「いつも遠目で見て逃げ出してた一人が距離が近いのに驚いて石を投げつけたんだ。
ロイスの額に石が当たって血が出て、みんな逃げ出してロイスも小屋の方へ走っていった。」
「君は庇うなり諫めるなりしなかったの?」
「俺は…」
オングの容赦ない突込みにウィズは俯いた。
「まあ町ぐるみで虐めている人間を庇うなんて子供には酷だよ。」
と言うと
「俺は虐めたりしてない!」
とウィズが言う。
「見ていただけなら同じことだよ。」
オングに切り捨てられて俯くウィズを慰めようと手をのばしたものの
オングの言葉も一理あるし、ウィズの肩に置くはずだった手はウィズの座る椅子の背もたれに着地した。
その手から何か流れ込んでくるような感覚がある。
あれ、何これ?
『残留思念だお!』
えっ、サイコメトリー?
そんなこともできるの?
『思念の強さとか時間とか条件はあるけど、今ならさっき言えなかったロイスの思念が読めるかもしれないお!』
この椅子はさっきロイスが座っていた椅子だ。
触れている手に集中してイメージを読み取ってみる。
痛みと恐怖を感じる。
額に触れた手についた血と
何事かを叫んでいる子供たちが見える。
後ろの方にウィズがいる。
縋るようにウィズを見た思いは次の瞬間凍り付いた。
笑ってる…
確かにその唇の両端は吊り上がっていた。
『Sなの?変態S野郎なの?』
わからん。
でもその時のロイスの感情は絶望にも近かった。
みんなに避けられる中、短い時間でも一緒に過ごした同年代の男の子は
ロイスにとって特別な存在で
きっと仄かな恋心みたいなものもあったんだろう。
だからこそ振り幅も大きく傷も深い。
「どういうことぉ?!」
戻って来たルルナがウィズの姿を見つけるなり掴みかかりそうな勢いで言った。
「石を投げられて血を流してるロイスを見て嘲笑ったそうじゃない!」
「えー?」
オングが心底呆れたようにウィズを見た。
「違う!」
とウィズは慌てて弁明した。
ずっと本当は妖精なんじゃないかと思っていたから、血が流れたのを見て
ああ人間なんだと思ったらつい笑みがこぼれてしまったのだと。
『そうはならんやろ』
うむぅ。
すぐに我に返って家から傷薬を持ち出してロイスの小屋の前に置いたこと。
それから会えなくなっても度々森の入り口にきては遠目にでもロイスを見ていたこと。
ずっと好きだったこと。
ロイスが王都に行ってからほどなく町に魔力測定所が出来て、検査を受けて王都にやってきたことなどを切々と話した。
ロイスを追いかけてってこと?
『ストーカーだお。』
ルルナとオングもちょっと引いてる。
「正直、無理じゃないか?
自分を虐めてた奴と仲良くなんてできないよ。」
とオングが言う。
「それにロイスは好きな人がいるみたいだよ。」
とルルナが言うと、ウィズは私の腕を掴んで縋るように言った。
「お前は応援してくれるよな?」




