薬草採取
翌日夜
訪れたイニー妃の宮で出迎えた二人の首には制約魔法の帯が張り付いていた。
制約魔法を掛ける前に一芝居あったようだけど私は知らない。
知らないままの方が良いような気がしてる。
アリーは 前はほわほわしていた髪を後ろに撫で付けて、
いつもの魔法使いぽいローブではなく護衛騎士みたいな服を身に着けている。
『覚悟を決めた男の顔だお!』
メガネを外したその瞳は綺麗な菫色だ。
あのメガネは魔道具か何かだったのかな。
前の瞳の色が思い出せない。
イニー妃は王の来訪に緊張しているようだ。
終始硬い表情のままで時間が過ぎていった。
『オッサンが気持ち悪い事言ったから!』
トラウマになってないといいけどね。
側妃の宮の最後までまわったら一日休んで
また王妃から回るんだそうだ。
王妃の所には御供は要らないそうで
次の第一側妃は王都から離れた場所で療養中、
第二側妃は高位貴族に下賜されているので
次は5日後の夜と言われて部屋に戻った。
明日は魔法研究部のメンバーと森に薬草採取に行くことになっている。
ラリアさんはまだマクシムの所で特訓中らしくルルナとオングとロイスの3人だ。
護衛役に誰かいないかと言われてウィズに声を掛けた時のことを思い出す。
「ロイスがさ」
と話しかけるとウィズがビクッと跳ねた。
「森に薬草を探しに行きたいって言うから魔法研究部のみんなで行く予定なんだけど
護衛役に来てもらえないか?」
と言うと
「なんで俺が!」
とか言いながら瞳には喜色が浮かんでいたっけ。
『なんでウィズを誘ったんだお?』
だって気持ちを知ってるなら機会くらい作ってあげてもいいじゃない?
ウィズは剣術部だし、誰かに護衛頼めないかって相談されたのは事実だし。
私も護衛役だけど実は剣は好きではない。
直に伝わる生き物を斬る感覚ってやっぱり苦手だ。
朝、集合場所に来たウィズは分かりやすく浮かれていた。
その軽い感じもルルナとオングには好意的に受け取って貰えたようですぐに打ち解けている。
ロイスとはいまいち。
ロイスが人見知りなのかな。
目当ての薬草の群生地だという森は学校からそう遠くないけれど
木々が生い茂る薄暗い場所だった。
木の枝にロイスの髪が引っ掛かって、ルルナが結んでいたロイスの髪を解いて
丁寧にほどいてあげていた。
一陣の風がロイスの髪を広げたところに木漏れ陽が落ちる。
仄暗い森の中でキラキラ輝く白い髪と白い肌を持つロイスは幻想的でさえあった。
「わあ、森の精みたいだ。」
と思わず呟く。
「本当、妖精みたい。」
とルルナも追随すればロイスは照れたように笑った。
聖女効果が効いてるのか、森に魔獣はほとんど居ないみたいだ。
順調に薬草採取は進んで昼を食べたら戻ることになった。
『結局ウィズとロイスの距離は全然縮まらなかったお!』
嬉しそうに言うな。
『ルルナとオングには話しかけまくってたくせにロイスには話しかけれもしないとは
とんだヘタレだお!』
部室に向かう途中でルルナとオングは一旦寮の自室に戻ると言う。
残りの3人で部室に戻る途中、私も用事を見つけて2人に部室で待ってもらうことにした。
飲み物でも買っていこうかな。
『そんなのんびりしてていいんだお?』
ウィズに機会を作ってあげたいじゃない。
『密室に男女が二人きり…ロイスが危険だお!』
いやそこまでケダモノじゃないでしょ?ウィズ。
いや?あれ…なんか心配になってきた。
さっと人数分の飲み物を買って部室に向かった。




