愛の歌
部屋に戻ってしばらくしてから
ポロロン♪
と頭の中に弦楽器の音が流れた。
『今宵奏でますのは赤髪の姫と護衛騎士の愛の物語』
おや 吟遊詩人さんですか。
『数奇な運命を共にする二人の絆の前では
ちょっとした浮気心も愛のスパイスに過ぎないのです。』
ああさっきの。
『それでは聞いてください。
“世界の全ては愛のスパイス”
♪二人の出会いは星空の下
抜け出した王宮の舞踏会
悲しみに溢れた雫を拭ってくれたあなたの
同じ色に染まった瞳に運命を感じたの♪
王に顧みられるのことない妾腹の姫君と
正妃の子である第一王女の近衛の任を
見目の良い後輩に奪われた騎士はこうして出会ったのでした。』
え、何その情報。創作?
『脚色はするけど事実に沿ってるよ。』
記憶を覗いたの?
『君に出来ることは僕にもできる。
君に出来ないことも僕にはできる。
君は自制してしまうからね。』
プライバシーの侵害じゃない?
『芸術のためなら許されるさ』
マッドアーティスト発言!
『♪人目を忍ぶ二人の恋は綱渡り
胸元に忍ばせた毒薬は覚悟の証
あなた無しでは生きていけない
あなたの他には何もいらない
心に決めたあの日から
世界のすべては愛のスパイス
二人のための愛のスパイス♪
運命が二人を引き裂くのなら
命さえ捨てて見せましょうと誓い合った二人は
死を覚悟すると同時に生を楽しむと決めたのでした。』
へえ。
ただの性欲モンスターじゃなかったんだね。
それだけの覚悟が有るからかな。
突き抜けてていっそ清々しい感じもする。
お互いを信頼しあっているのは私にもわかったし。
ところで毒薬持ってるの?
聞き捨てならない情報だよね。
『ここにきて王と制約魔法を結んだ時に処分したらしいお。』
あれ?もうだお君?
歌の感想とか聞かなくていいの?
『詩人は繊細なので批判はお控えくださいだお!』
ああ、自分の作品の感想聞くのって勇気いるよね。
わかるぅ。
それから毎晩、吟遊詩人は側妃と情夫の物語を創って歌った。
全ての側妃には情夫が居た。
そして明日はイニー妃とアリーの宮だという。
あれ?おかしくない?
『詐欺だお!
全然ハーレム王じゃないお!』
いやほんと。
全員最初から情夫がいたみたいだったし。
好色王はどこいった。
そんな男のハーレムの心得と引き換えに制約魔法を掛けられたなんて騙された気がする。
王に不満を口にすると
「嘘ではないぞ。
俺が数々の失敗から学んだ教訓だ。」
と言う。
『こいつ!開き直りやがったお!』




