変身
「エリーナには気にしてないって伝えておいてよ。
前みたいに話してくれると嬉しい。」
と頼んでリシアと別れ食堂を出ると、すれ違いざまに肩を叩かれた。
ウィズだ。
「よ、変態王子!」
変態王子…。
ただの変態より不名誉な気がする。
「お前の噂も忙しいな。」
と笑ってウィズは去って行った。
意識してしまうと、ちらりちらりと人の視線が妙に気になる。
久しぶりの寮の個室に逃げるように入った。
なんかもう、しばらく学校休もうかな…
せめて人目を気にせず歩きたい。
『瑞希になったら?』
お。おお!それいい!
一人で転移魔法使えるかな?
『技術習得+の加護があるからきっといけるお!』
一日何回くらい使えるだろ?戻らないといけないし。
『5回くらいは余裕でいけるお!』
早速魔法を使ってみる。
光に溶けて再合成するイメージだ。
ベースは転移魔法だけど移動のことは頭から外して
瑞希の姿になることに集中する。
マクシムと転移した時より発動するまでは時間がかかったけれど
溶けてしまえば再合成までは一瞬だった。
鏡を覗き込む。
ちゃんと瑞希になれてるぅ!
もしかしてだけどこの調子で、全く別の人とかに変身出来たりもしないかな?
猫とかにもなってみたい。
『それは危険な考えだね。』
ん、先生?
『君が瑞希に変身できるのは
体の隅々、細胞の一つ一つに至るまで経験して知っていたからだ。
もし仮に猫に変身したならば外形は再現できたとしても内部はどうかな?
生命の維持さえ危うい状態に陥って自己再生の加護が働けば
永遠に崩壊と再生を繰り返す肉塊になりかねないね。』
やだ怖いこと言う。
『そもそも大前提。
これは変身魔法ではなく転移魔法の事故ってことだ。
君の覚悟が出来た時その姿は固定される。』
ああそうだっけ。男として生きる覚悟かぁ。
『何より転移魔法中の雑念は厳禁だ。
大事故につながる恐れがある。』
はーい。わかりました。
あ、じゃあ変身魔法っていうのは別にあるの?
『相手に幻影を見せる精神魔法は存在してるね。
だが物理的に形を変える魔法は今は存在してないはずだよ。』
今は?
『遥か昔には精霊の力を借りて姿を変えることが出来たと言い伝えがある。
童話として残ってるんじゃないかな。』
へぇ。そのうち探してみようかな。
しかしよく考えたら瑞希の顔はラリアさんとマクシムには知られているし
学校内で瑞希でいるのは危険じゃない?
転移魔法もどきが使えるようになったことは秘密にしておいた方が良いと思うし…
なんだ結局学校ではミズキでいるしかないじゃんか。
ラリアさんに口止めすればあるいは?うーん。
とりあえずミズキに戻って魔法研究部に顔を出すことにした。




