新たな噂
夜は城に戻るとして久しぶりに学校に来た。
学校の雰囲気は…前よりは視線が刺さらないかな。
久しぶりに姿を見せたせいか目が合うとぎょっとしたように目を逸らす人が多いけど。
午前中は個室で講義を受けて昼食を摂りに食堂に入るところで後ろから呼び止められた。
弓術部のリシアだ。
「お昼一緒にいい?」
と聞いてくる。
リシアに先導され一番奥の、人の少ない席に着く。
「エリーナが落ち込んじゃって」
とリシアが話し始めた。
「あなたに酷い態度とっちゃったって。」
神聖国に行く前日の、あからさまに目を逸らされた時のことかな。
「あんな噂あったし嫌われても仕方ないと思ってるよ。」
と言うと
「それよ!エリーナは嫌ってなんてないのよ。
もちろん私たちもね。」
一旦語気を強めたリシアが声を落として続ける。
「あなたの噂が流れてから、みんなで妄想が膨らんじゃってね。
…弓術部の男子が引くくらいだったのよ…
それで実物を直視できなくて無視するような態度とっちゃったって言ってたわ。」
『その妄想をくわしく!』
「ど、どんな妄想?」
と聞くと、リシアは目を閉じて首を横に振った。
「…言えない。」
『そのめくるめく妄想を覗きたいお!』
いや止めておこう。
女子の妄想のえげつなさを私は知っていたはずだ。
リシアが続ける。
「次に会ったら弁解しようと思ってたらあの劇でしょ?
今さら言い訳しても手のひら返したみたいに思われるって。」
「あの劇?」
「あ、知らない?
演劇同好会の上演があってね。ほらこれ」
リシアが差し出した紙には劇のタイトルと男女が見つめ合うイラスト、
さらにいくつかの煽り文が書かれていた。
※迫害された隣国の王子と美しき我が国王女の王宮ロマンス!※
※記憶を失った王子の二度目の初恋!※
※王子ミツキの恋の行方は?※
「王子ミツキ…」
『メガネっ娘の仕業だお!』
「あなたがモデルよね?」
「ええと…」
そして一番下にはこう書いてあった。
※この物語は事実をもとにしたフィクションです※
事実て。
「どこまでが事実なの?」
私の視線を追ったリシアが聞いてくる。
「記憶喪失なとこだけかな。」
厳密にはそれも事実ではないが。
「じゃ王女様とは?」
「話したことが有る程度だよ。」
リシアは驚いたように
「そうなの?ここ数日あなたの姿が見えなかったから
王宮で結婚の話が進んでるとか言ってる子もいたわよ。」
と言った。
「ないない」
噂って恐ろしいな。




