ツボ
「他に方法は無いんでしょうか。
こんな劇場型詐欺みたいなことをしなくても。」
「あるかもしれんが。」
と、王が言う。
「情夫をあてがうメリットは多いぞ。
恋仲になってしまえば側妃の制約魔法の代償は情夫だけでいい。
側妃の管理と精神の安定、生国の情報を引き出すのも全てが一人で済む。
何より俺の負担が減る。」
「両思いならそれでいいんでしょうけど」
「愛情は育てるものだろう。」
確かに見合いで結婚しても幸せな夫婦も見てきたし、
恋愛結婚でも仲の悪い夫婦も沢山いる。
それでも利害が絡むって言うのがどうしても釈然としないんだよなあ。
『ミズキは恋愛至上主義だお。』
そうなのかな。
「明日の夜から側妃の宮を一巡付き合え。」
と王が言う。
情夫を認めた成功例を見せてくれるそうだ。
側妃と情夫に逆心のある時だけ報告しろと言う。
そっちがメインかもね。
アリーとイニー妃か。
マッサージしながらため息が漏れる。
「なんだ?」
と王が揶揄うように言う。
「今更情夫の座が欲しくなったなんて言うなよ?」
「そんな気は無いです。
ただ心配っていうか。」
と言うと、王が窘めるような声で言った。
「あいつは覚悟を持って選び取ったんだ。
心配などという言葉でその覚悟を貶めるな。」
そしてフッと鼻で笑った。
「もとより、泣いて逃げ出したお前には心配する権利も資格もないしな。」
『カッチーン』
まあ確かに私にできることはもうない。
ただ見守って幸せを祈るだけ。
心配は呪いに近いって言っていたのは誰だっけ。
でも鼻で笑われたのはちょっとだけムカついたかな。
ふと視ると、王の腰のあたりにひときわ暗い光溜りがある。
ここって確か
『生殖器のツボだお!』
ほう。それが弱ってるってことは
『使いすぎ?』さあね。
「陛下、今夜はこれからどちらかへお渡りですか?」
と聞くと王が答える。
「今日はもう眠るだけだ。」
「寝室は王妃様と一緒なんですか?」
「いや。」
王妃も他の側室たちと同様に自分の宮があるという。
へえ、じゃ今夜は一人なんだ。
『ミズキ、悪い顔してるお!』
ありったけの神聖力を注ぎ込むつもりでそのツボに力を込めた。
そう、ラリアさんの神聖力が流れ込んできたあの時のイメージだ。
ドン、ってね!
そこを中心に光が波紋のように体中に広がっていく。
「ぅぐ」と、王が声を漏らした。
クーックック!
一人寝の寝台で性欲を持て余し悶え苦しむがいい!
『なんて非道なことを!』
ま、効果有るかは知らんけどね。
不思議なことに私の方はスポーツの後みたいに爽やかな気分だ。
いい汗かいた感。
「力入れ過ぎました?」
とにこやかに聞くと
「いや、大丈夫だ。」
と答えた王は立ち上がるとさっとマントを羽織って出ていく。
『前かがみに…』
なってない!なってない!




