裏側
陽が落ちてしばらくして王が部屋に訪ねてきた。
「今夜は予定があるのでは?」
「おう。お前にしっかりほぐしてもらおうと思って予定を入れたぞ。」
王は自分からソファに俯せに寝転んだ。
その背中に光る筋のようにエネルギーの流れが視える。
前にマッサージした時はこんな風に視えなかった。
所々に光溜りがあるのがツボってことかな。
『聖女の神聖力を体に通したことで鋭敏になったんだお。』
なるほど、自分でも魔力と神聖力の区別がつく感覚がある。
聖女効果すごいな。
光溜りに指を当てて軽く力を入れながら神聖力を注ぎ込む。
「うぉ」
と王が声を漏らす。
「前より効くな。」
これ、神業マッサージ師になれるんじゃない?
光溜りが他より暗く感じるところはエネルギーの流れが滞ってるみたいだ。
「肩周り、凝ってますね。」
と言うと
「ああ。嫌われ役は肩が凝るな。」
と王が言う。
「そんな繊細な神経があるとは驚きです。」
「お前に味見をするような男と思われたのにも傷ついたぞ。」
いやだってあなた好色王だし。
王は肩越しに私を窺うような視線を向けた。
「イニー妃の反応は?」
「思考は読まないと言ったはずです。」
「で、どうだった?」
く。見透かされてる。
「アリーに助けを求めてました。」
「そうか。」
と、王は満足げに言った。
「アリーは」
アリーを思い浮かべる。
人懐こい雰囲気で話しやすくて、それでいて腹の底が読めないアリー。
「アリーはイニー様を幸せにできるんでしょうか。」
「少なくともこんなオッサンの側妃として過ごすよりはいいんじゃないか?」
と、王が言う。
『根に持ってるお!』
「でもアリーは王家側の人間で」
言ってしまえばイニー妃を騙して誑かしている。
「知っているのか。」
「本人から聞きました。」
「たとえ本心がどうであれ側妃に尽くすことになる。
情夫に掛ける制約魔法は側妃に隷属に近い状態にすることは伝えてあるしな。」
「隷属ですか」
そうまでしてアリーの望む生活は手に入るのだろうか。
「あいつには制約魔法の代償にでもしない限り叶わない望みがあるんだ。」
ぽつりと王が言った。
「それは?」
と聞くと王はニヤッと笑って言った。
「成った暁には教えてやる。
お前にも働いてもらう予定だしな。」
『嫌な予感』
「教えて貰わなくていいです。」
「そう言うな。
まあ、あいつのもう一つの望みはイニー妃の絶対的保護だ。
気持ちはあるんだろう。」




