国王
数日後、王子直々のお迎えを受けて登城することになった。
王子の私室に通されソファーを勧められ雑談。
私室とは言っても何間も続いている部屋の一番手前の広い応接スペースだ。
ややあって扉がノックされる。
「父上」王子が立ち上がり、入ってきた人物に話しかける。父上って国王?
バッと立ち上がり、とりあえず日本式のお辞儀をする。
「座って楽にしてくれ。私的な場だ。」
国王は40手前くらいかな。茶色い髪に緑の瞳の精悍な顔つきの男性だ。
王子様然とした第七王子とはずいぶん雰囲気が違う。
威厳、豪胆、ワイルド、カリスマ… そんな言葉が似合う。
気圧されて緊張に汗ばむようだ。
『視られているお』言われてハッとする。
『この国王、精度の高い鑑定眼持ちだお。嘘も見抜くみたいだお』
どうしよう。さっきの緊張と違う汗が背中を伝う。
王が片手で合図をすると護衛も侍従も王子さえも席を外して部屋から出ていく。
「なぜ」一対一になったところで国王が口を開いた。
「なぜ両親共に黒目黒髪なのにその髪色とその目なのだ。
それにお前の輪郭はぼやけて見える。
まるで何人かが重なっているようだ。」何か鋭い。
これはもうそこそこ事実を言うしか無さそうだな。
「実は私は事故で死んだ人間で、その人格を持ったまま、女神様にこの体を与えられ、気が付いたら王都の外れの町に居たのです。」余計なことは言わないように慎重に話す。
「なるほど。信じがたい話だが信じるしかあるまい。
詳細はわからんが神々に多くの加護も与えられているようだ。」
詳細はわからないという言葉にちょっとだけ安堵する。
なおも王は私を凝視してくる。