共鳴
夢かな。
深いけれど明るい森とキラキラきらめく水辺が見える。
私が知ってる森とは少し違う雰囲気だ。
ピンクがかった空に飛ぶ鳥の長い尾羽は虹色に輝き、
水辺で遊ぶ少女たちの上を旋回している。
鳥が羽ばたくたび光の粒が振り注いで
まるで少女たちを祝福しているようだ。
こことも地球とも違う世界のよう、ただただ美しいと感じる風景だった。
今の姿とは違うけど少女たちのひとりはラリアさんだと解る。
「ほんとに行くの?」
とツインテールの少女に問いかけられたラリアさんは嬉しそうに頷いた。
しかしその思いはすぐに後悔に変わる。
暗いトンネルに吸い込まれるように生まれ落ちたこの世界では
肉体は重く人々の心は冷たく森は昏く恐ろしい。
神聖力を見出され神殿に入ってからはさらに孤独が加わった。
人々の治療に成功して感謝された時だけ、ほんの少し気分が晴れたが
力が弱まっていくに従って、民衆のために祈ることは禁止され
一部の有力者のためにのみ祈ることを強要された。
「帰りたい」
空を見上げては呟く。
それだけが彼女に許された自由だった。
目を覚ますと、馬車は止まっていて外は明るく
馬車の中には私に寄りかかって眠るラリアさんしかいなかった。
『《共鳴+》が発動したお。』
え?
『元聖女の神聖力と共鳴して彼女の過去と繋がったんだお。』
そっかぁ。夢じゃなかったんだ。
って、ラリアさんは別の世界から来た人なのか。
辛い思い出を見たのに
ラリアさんの纏う神聖力と接していたからか
体も心も軽く穏やかだ。
私の《癒しの波動》の効果もこんな感じなのかな。
「ん…」
とラリアさんが身じろぎした。
目を覚ましそうだ。
「起きたかい?」
馬車の扉が開いて王子が顔を出した。
「あんまり良く眠っていたから声をかけなかったよ。」
後ろからマクシムも顔を出す。
「男女が寄り添って寝てるなんてと思ったけど
君たちを見てると仲の良い姉弟みたいでね。」
「うん。姉妹みたいだ。」
と王子が言うとマクシムがげんなりした顔をする。
あれかな。
王子が臥せって居た時に元気づけようと思って愛の言葉を囁きすぎたかな。
『罪作りな奴だお』
うん。これからは気を付けよう。
「さあ、馬車から降りて食事にしましょう。
準備ができてますよ。」
マクシムがいつのまにか起きていたラリアさんに手を差し出した。
突然現れたラリアさんに騎士たちは驚いていたが、話はついていたらしく
マクシムを主人とした設定に従っている。
外は森の中の川べりの休憩所らしい。
往路には通らなかった場所だ。
「往きとは経路を変えてるよ。
ほら君の仕事。」
と王子が結界魔法陣を刻んだ石柱を指さす。
世話係としても護衛としても全然役にたってないけど
魔力タンクとしては活躍できるらしい。
食事がすむと私とラリアさんを残して4人は森の見回りに行った。




