聖女の条件
別室へと引っ張られる。
ちょうど祈祷室から出てきたマクシムたちが見えた。
「ご主人様!」
と助けを求めると一緒に別室へと案内された。
『とりあえずソロは回避できたお。』
うん良かった。ひとりぼっちは寂しいもんね。
てかひとりで対処できる自信が無い。
事情が分からないと言うマクシムたちに神官が説明をする。
「あの光と浄化の力は聖女様に違いありません。
神聖国で保護すべきかと。」
保護、ね。
昨夜の元聖女の話を聞いていた私たちにはその言葉は空々しい。
「保護とはどういう環境に置かれるのですか?」
とマクシムが聞く。
『知ってるくせに』
「神聖国でもひときわ聖なる場所、国の中心にある塔で暮らしていただくことになります。」
「そこでは何を?」
「聖女様はいらっしゃるだけで尊い存在ですからただ神への祈りさえ捧げていただければ結構です。」
「空いた時間は自由にしていいと?」
「ええ、塔の中でご自由にお過ごしください。」
聞いていた通りの待遇のようだ。
元聖女がまだ力が使えたころは何日かに一度、
塔の下に集まった民衆に対して祈りによる治療も行っていたけれど
ここ数年はただただ塔の中で神に祈りを捧げるだけだったと言っていた。
「外に出られないの?」と聞く。
「外には危険が沢山ございます。
尊い御身を危険に晒すことはできません。」
ものは言いようだよね。
「えっと、いつまで?」
「次代の聖女様が現れるまでです。」
「現れなかったら?」
「神が見計らいになられてお使わしいただけます。」
元聖女と会って話を聞いたという事は言わない方が良さそうだ。
でもそう、確認しておきたいことがある。
「報酬はいただけるんですか?」
と聞くと、昨日の嫌味な神官が声を上げた。
「聖女様ともあろう方が対価を要求するなど!」
嫌味な神官を制して、神官長なる人物が落ち着いた声で話す。
「必要なものは全て揃えさせていただきます。
金銭は必要ございません。」
「次代の聖女が現れた後の話ですよ。
お金もなく放り出されたら困るでしょ。」
「聖女様が引退なさる時はふさわしいお相手にお任せしております。」
「本人の意思はないんですか?」
「神の意志を受け入れるのが聖女様です。」
「先代の聖女は酒場で働いてらっしゃると聞きましたが。」
とマクシムが言うと
「ああ。」
神官らしい穏やかな笑みを浮かべたまま神官長は答えた。
「それも神のお導きでしょう。」
ほんの少し、元聖女さんに持たされたお金が
直接お金を渡した人の不正かもと疑っていたけれど組織ぐるみの犯行らしいな。
神官長の思考を覗けば
《もう少し若ければ高く売れたものを》
ほら、下衆なことしか考えてない。
そろそろ切り上げよう。
「やっぱり私には無理みたいです。
私もう27歳だからお相手は見つからないと思いますし。」
と言うと、ピキっと空気が割れるような音が流れ込んできた。
『主に王子の方から』
ああ昨日の時点で歳を話しておくべきだったな。
王子はまだ18歳くらいだっけ?
今朝の王子にときめいた自分にも反省。
でもまあ仕方ない。
ここでもう一押しだ。
「聞けば聖女には純潔が求められるとか。
私処女じゃないですし。」
ビキビキっと空気がひび割れるような音があちこちから流れ込んで来た。
『ひと際大きなビキ音が王子の方から』
それは言わないでくれるとありがたい。
『まさかの処女厨!』
いやこの世界なら普通そうなんだろうし。
「ありえません!純潔でない聖女など!」
嫌味な神官が声を上げた。
こいつに言われるのはなんかムカつくな。
ああ?なにか?神聖力は膜にでも宿るんか?
『瑞希 品がないお』
「ですよねー。私は聖女じゃないです。」
と立ち上がる。
『じゃ、そゆことで!』
マクシムと王子を促して退席する。




