求婚
翌朝
食事を部屋に持ってくると言ってマクシムが部屋を出た。
身支度を整えて王子とテーブルにつく。
「あのさ」
と王子が言う。
「昨夜考えたんだけど、もし男に戻れなかったらさ、」
「はい」
後の言葉が言いにくいのか王子は口を開いては閉じ、開いては閉じと数回繰り返す。
そして叫ぶように言った。
「僕と結婚したらいいよ!」
バーンと扉が開いてマクシムが入って来た。
「正気ですか殿下!これはミズキですよ?」
マクシムが言う。
「一応女性の形にはなっていますがほら筋肉がついていて体が固い。」
言いながら私の肩とか腕をパンパン叩く。
「本当に女性かどうかわかりませんよ!」
いやちゃんと女だって!
なんか傷つくわ。
「僕には魅力的な女性に見えるよ。」
と、王子は言う。
「実は僕、ミズキみたいな人が僕を支えてくれたらってずっと思ってたんだ。」
じっと私を見る。
「そんな人が異性だっていうなら結婚して欲しいと思うのは普通じゃないか。」
『きゅん』
あれ?
確かに胸の奥にときめきのようなものを感じる。
男性に対する恋情は湧かないんじゃなかったっけ?
『同性に対する恋情は湧かないんだお。
ミズキは今女性なんだお。』
どうしよう。私の手を取って見つめてくる王子の顔が直視できない。
優しくて誠実で実直な第三王子。
とても好ましい人柄だ。
支えたいかもしれない。
その手を剥がしたマクシムが言う。
「さあさあ、早く食事を済ませて神殿に向かいますよ!」
出かける準備が済むと
マクシムに鞄から取り出した白っぽいローブを渡される。
認識阻害の魔法が掛ったローブだそうだ。
それを着て、部屋を出る二人の後をついていく。
フロントで宿の主人がマクシムに尋ねた。
「お二人だけでお出かけですか?」
ほんとに認識されていないらしい。
「うん。使用人の素行が悪くてね。
今日は部屋に閉じ込めておくから絶対に開けないでくれ。」
とマクシムが答えた。
「おや、あの青年が?
好青年に見えましたが」
と主人が首を傾げる。
「特に女性は部屋に近づくことも避けた方がいい。
私にも責任が取れないことになるといけない。」
ちょっとちょっと私どんだけ凶悪なのよ。
『女性の気配に反応するヤバい奴だお!』
不安そうに眉を顰める主人に
「処置はしてある。
人が近づかなければ大人しくしているはずだ。
迷惑をかけるね。」
と言ってマクシムはいくらかのお金を握らせた。
処置って。
『鎖に繋がれた野獣的なものを想像したお!』
宿を出てしばらく歩いたところでローブを脱いでマクシムに不満を言う。
あれじゃ私犯罪者みたいじゃない。
まあああ言っとけば誰も近づかないんじゃない?と、王子がクスクス笑う。
もう宿の人と顔合わせられないよ。




