石だけに!
「できました。」
と繕い終えたシャツを渡され着替える。
借りていた被りの服を脱ぐときにペンダントが引っ掛かって
元聖女さんの方に跳ね飛んだ。
ペンダントを受け止めた元聖女さんがうっとりと言う。
「ほんとに素敵な石。
心があたたかくなるみたい。」
見た感じ、女性が喜ぶような石では無いんだけどね。
「差し上げます。防御魔法陣も描いてあるからお守りになりますよ。」
でも、と言う元聖女さんにシャツのお礼ですと強めに言うと遠慮しながらもペンダントを着けた。
私もカバンから別のペンダントを出して着ける。
「あれ、そのペンダント」
私の胸元を見た女将さんが言った。
「気に入りました?差し上げますよ。」
着けているのを外して女将さんに渡しカバンの中を探る。
そこへ店主がやってきた。
「今日はもう終いだ。空気がわりぃや。
みんなにももう上がってもらったぞ。」
と言って空いている椅子にどっかりと腰を下ろした。
「ごめんなさい。私のせいで」
と元聖女が言うと
「あんたのせいじゃないってことはみんなわかってる。ただな」
店主は厳しい顔をして言う。
「あれから聖女を抱くと恩恵が得られるとか言い出した奴がいてな。
ただの酔っ払いの戯言だとは思うが
酒場で働くっていうのはやっぱり良くないんじゃないかって思ってな。」
身の危険を感じたのか元聖女も暗い顔で俯いた。
「もし」
王子が話し始めた。
「国に未練が無いなら外国に出てしまうのはどうかな?」
「外国…ですか。」
「確かにここは小さな国だしあんたのことは知れ渡っちまってるね。」
と女将さんが言った。
「もし行く当てがないなら精霊王国の魔法学校に入らない?」
と王子が誘う。
『僕の国に来て魔法少女になってよ!』
なんか悪い道に引きずり込まれそうだからそれ止めたげて。
王子が魔法学校のことを細かく説明しても元聖女は決心がつかないようだ。
「まあ今すぐ決めることもないでしょう。」
とマクシムが身分を明かし、連絡先を教えて、宿に戻ることにする。
帰りがけに店主が私の胸元のつけたばかりのペンダントを見て呟いた。
「そのペンダント…」
あーはいはい。差し上げますよ。
なんだろう、この石。
本当に持ち主を選んでるのかな。
『うむ。確かに意志のようなものを感じるお。』
石だけに?
『石だけに!』




