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脳内男子がうるさくて  作者: ちぇりこ


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妖精石

「あの…殿下って言ってたけど」

少年がおずおずと話し出した。

ごまかしてもしょうがないな。


「君を男と見込んで頼みがある。

このことは秘密にしてくれないか?」

と言うと少年は目を輝かせて

「うん!」と答えた。

『チョロいお』


少年が売りに来たのは湖で取れるという石のアクセサリーだった。

湖の向こう岸は森が浅く集落が近い。

そこの物見やぐらみたいなところからこちらを見ていて

人が来ると物売りに来るのだそうだ。


せっかくだからアクセサリーを見せて貰う。

灰色の平たい石に穴を開けて紐を通しただけのシンプルなペンダントだ。

妖精石と名づけられたその石は湖の底から浮かび上がってくるのだという。


「石が持ち主を選んで出会いの時期に浮かび上がってくるんだって。

妖精が石の中に眠っていて、本当の持ち主が身に着けると幸運が訪れるんだよ!」

少年自身も信じていなさそうな話だけど、私はそういう話嫌いじゃない。

『ロマンだお。』


そこらへんに落ちている石ころとそう変わらないような色味の石だけど

平たくて魔法陣を描きやすそうだし、男性が着けてもいいかんじのペンダントだ。

値段も高くないし全部で十数個ほど。

「じゃ全部貰おうかな。」

というと少年はぽかんと口を開けたがすぐにうれしそうな笑顔を見せた。


お金を受け取ってお礼を言った少年がひとつのペンダントを見て一瞬目を泳がせた。

「あ」

「ん?」

「ううん!」

言いながらもちらちらとそのペンダントを見ている。


『それ、気に入ってたみたいだお。』

え、じゃあ返す?

『でもお金も必要みたいだお。』


それとなく少年の身の上を探るように話を聞く。

父親が亡くなって苦しい生活を送っているようだ。

「僕は男だからね!

母さんと妹を守るんだ!」

少年がまだちいさな拳で自分の胸を叩いた。


厳しい世界だな、と思う。

この子のことは誰が守ってくれるんだろう。


少年が気にしていたペンダントに防御魔法陣を描く。

何事かと覗き込んでいた少年は魔法陣が光って溶け込むのを見ると歓声を上げた。


「これを」

少年の首にペンダントを掛けた。

「君を男と見込んで頼みたい。」

と言えば、少年は真面目な顔をして頷く。

「私はまだ魔法陣を描き始めたばかりでね。

上手くできているか心配なんだ。」

コクコクと少年は頷く。


「だから君にいつも身に着けて検証してもらいたい。

頼めるかな?」

「これを着けていればいいの?」

「うん。検証が終わったら君の好きにしていい。

報酬はそれだけじゃ少ないかな?」

「ううん。これでいい!」

こころなしか少年の胸の石もうれしそうに揺れた。


擦れてる子なら自分が施しを受けたと気付いてしまうかもしれないけど

この少年は素直でまっすぐだ。

何の魔法陣かも聞かないうちに引き受けるなんてその純真さが心配になるくらい。


魔法陣の説明をしていると4人が帰ってきた。

運んできた魔獣をさっき倒した魔獣と一緒に積み上げる。

「君の集落に冒険者ギルドはあるかな?」

と聞いた王子は、はいと答えた少年に

魔獣の処理を依頼してくれと言ってコインを握らせた。


「魔獣は買い取ってもらえると思うけど…」

と少年が言うと

「僕らは先を急ぐから後のことは任せるよ。」

と王子が言う。


「でもそれじゃ…」

と言いかけた少年の背中を押して桟橋まで送る。

いいから貰っておきなさい。

『親戚のおばちゃんみたいだお。』


「妖精石の伝説は本当かもしれないね。」

少年の胸元で揺れる石に目が行って、そんな言葉が口をついた。

少年は胸元の石をぎゅっと握るとうれしそうに微笑んだ。


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