王子の事情
王子の周りの空気も重い気がする。
「殿下も何かお気落ちしているようですが?」
マクシムが聞くと王子が答える。
「ああ。
…僕に従者が居ないのは不思議じゃないかな?」
王子王女には乳兄弟やその兄弟姉妹が従者として就くのが普通らしい。
第七王子に対してのリットさんみたいな。
第三王子の従者は見舞いにも来なかったと王は言っていたな。
「僕にも乳兄弟が従者としていたんだ。こんなことになる前までね。」
「悪魔に取り込まれる前ですか?」
マクシムが聞く。
一般には悪魔を呼び出したのはイリヌスが単独で行ったことで
第三王子は最初の被害者としてあるらしい。
「うん。貴族学院で親しくしていた女子と3人でよく行動を共にしたよ。
その女子とは将来を考えたこともあったな。」
貴族子女は15歳まで貴族学院というところに通うらしい。
その後は魔法学校に進むものや騎士学校に進むもの、
自費で教育を受けるものなどに分れ、20歳くらいで結婚するのが一般的だそう。
「でも僕が生還した話が伝わるや否や、その二人が結婚して遠方の親戚を頼って王都を離れたらしいんだ。」
王子がうっすらと笑う。
「そして先日子供が産まれたんだそうだ。」
「計算では殿下が悪魔に取り込まれる前に授かったと言うことになりますね。」
「うん。で、昨夜気づいちゃったんだ。
その頃、やけに彼女と二人きりになる機会が多かったなって。」
「二人きりになるよう手引きしてたのは乳兄弟だった。」
「それって殿下が間違いを犯すよう仕向けていたってことですか?」
『托卵計画!』
「そう思いたくは無いし、結果的に何も無かったけどね。
熱烈に口説かれはしたけれど。
ただ二人きりの時間が有ったって事実は出来たんだ。」
「それから僕が行方不明になって、彼女の妊娠はわかっていただろうに生還するまで結婚しなかったってことはさ。」
「殿下の子供と言い立てる算段があったと思ってもおかしくないですね。」
『托卵計画その2だお!』
王が視ればすぐにわかってしまうことだけどその能力は公にはしていないんだろうな。
「殿下が病気ではなく行方不明になったことは彼らは知っていたのですか?」
「うん。乳兄弟は確実に知っていた。」
「乳兄弟は嫡男ではないし、彼女も兄がいる。
彼らの立場を考えれば気持ちは解らなくもない。でも」
王子は長い溜息をついた。
「もしかしたら彼らは僕の死を望んでいたのかなと思ったら」
「殿下…」
思わず王子の手に自分の手を重ねるとマクシムも手を重ねてきた。
『ここに人間不信の男三人の旅が幕を開けたのである。』
変なナレーション入れないで。




