責任転嫁と部活動
「出版社には抗議したよ。
勤務先まで晒すのはやりすぎだってね。」
「災難でしたね。」
「本当に」
マクシムはふっとため息をついた。
「日に日に女性が恐ろしく思えてくるよ。
僕はもう結婚なんてできないかもしれないな。」
「婚約者さんとさっさと結婚しちゃえば良かったのに」
ルルナに言われたマクシムは昏い目を向けた。
「本当にそれは後悔してるよ。
母が病に倒れて引継ぎと研究室の仕事も有って先送りにしてしまったんだ。
一人前になってからなんて考えずにさっさと結婚してしまえば良かった。」
マクシムの周りの空気が重く沈み込むようだ。
「ごめんなさい。
事情があったのに無神経だった。」
とルルナが謝る。
「いや、僕が愚かだったんだ。
忙しいと言いながらあの女の相談なんかに時間を費やして。
婚約者はいつも僕の都合を優先して考えてくれていたのに。」
『鬱スイッチが入ったお』
「そうだ。そうしていたら彼女もあんな病気になんか…」
ブツブツと呟きだしたマクシムにヤバいものを感じる。
こうなったら責任転嫁だ。
「全部あの相談女のせいですよ!」
「そうだよぉ!先生は悪くない!」
ルルナも追随する。
「全く恐ろしい女もいたものですね!」
オングも調子を合わせて相談女に責任を押し付ければマクシムの気持ちもやっと上向いたようだ。
気を取り直したマクシムがみんなに聞く。
「物質転送魔法はうまくいってるかい?」
「僕には難しいですね。」
とオングが言い、
「私もぉ。
そこの取ってぇなら浮遊魔法で済むってことに気づいちゃいました。」
とルルナが言う。
「君は?」と聞かれて
「ええまあ。練習はしてます。」
とごまかす。
実際、物質転送の練習をしようとすると空間収納が働いてしまう。
練習しようとすればするほど空間収納の精度が上がっていくようだ。
はじめは見えていた空間の裂け目みたいなものが
入れるものにぴったりと重なるようになって傍目からみれば物質転送魔法にしか見えない。
手を触れずに仕舞うこともできるようになったし、結構遠くに落とすように取り出すこともできるようになった。
「やってみて」
と言われて渋々披露すると皆に感心される。
「その調子だ。」
笑顔で激励してくれるマクシムから目を逸らして話題を変えることにする。
「そういえばアリーは?」
「なんか王宮で仕事が貰えるかもって言ってしばらく来てないよぉ。」
アリーはずっとイニー妃のところなのかな。
「アリーが来ないとさすがに部員が少なすぎる気がするね。」
とオングが言う。
「この際だから集まってる女子たち部員に誘う?」
「いやトラブルの予感しかしないな。」
「君たちの友人を誘うのはどうだい?」
とマクシムが言った。
「ゆうじん…」
「友人ですか…」
二人は思い当たる人がいないようだ。
『バカップルの条件が整いつつあるお!』
私も友人と呼べるのはアリーと弓術部の女子たちくらいだ。
この噂の中で弓術部の女子に声を掛ける勇気は無いな。




