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脳内男子がうるさくて  作者: ちぇりこ


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久しぶりに学校に戻る。

食堂でひとり食事をしていると、隣の椅子が荒く引かれた。

「よ、夢魔も逃げ出す変態君。」

『ファッ?』


隣に座ったのは背の高い、ヤンキー寄りのチャラ男みたいな男だ。

「俺の事は覚えてないか?

あんた剣術部はすぐに卒業しちまったからな。」


ああ剣術部にいた人か。

最初の呼びかけといい物言いといい、私にいい感情は無さそうな人だけど

『こんなときこそ《挨拶+》だお!』そうだね。

「こんにちは^^

久しぶり…かな?

その夢魔も逃げ出すって何?」


「あんたのことさ。

夢魔が逃げ出すほどってのは変態か絶倫かって議論になっててさ。

俺は変態に賭けたんだけど実際どっち?」

なんでそんなことに?

『どっちかっていうと変態寄りだと思うお!』

うるさいわ。


「別に逃げ出されたわけじゃない。

出禁はくらったけど。」

『夢魔を泣かせたのは事実だお!』

マジうるさいわ。


男はハハッと笑うと

「前提が違ったんじゃ賭けにならねぇな。

俺はウィズ。今度は覚えてくれよな、ミズキ」

軽く手を振って去っていった。


なんなの?こういうのが男の付き合い方なの?

まあはじめの印象よりはだいぶ感じ良く去っていったけど。

『堂々と夢魔に出禁くらったと宣言した勇者として語り継がれるんだお』

なにそれ。

とりあえず食事を終えたら噂の出所を調べに魔法研究部に向かおう。



魔法研究部のある廊下に差し掛かると、部室の前に女子が数人集まっている。

あんな噂があるしと思って近づくのを躊躇していると、後ろから腕を引っ張られた。

オングとルルナだ。

「こっちこっち」と空き部屋に連れていかれると一冊の雑誌のようなものを見せられる。


「独身貴族名鑑?」

「そうなのぉ。その新刊にマクシム先生がここの顧問だって紹介されてて、入部希望を装った女子がいっぱい!」

現在独身の貴族子女が紹介されているその雑誌には家格や家族構成、婚約者の有無、趣味、好みの傾向などがエピソードを交えて書いてあり、勤務先なども載っていた。

『この世界のプライバシーとは一体』


「まあ先生が来ればいつものあの顔で追い払ってくれるんだけどね。」

似非入部希望者の対応が面倒なので最近はマクシムが来るまでここで待機しているという。


マクシムの紹介記事を読む。

伝統ある貴族の一人息子でその性格は誠実かつ穏和。

婚約者を病で亡くし現在は婚約者無し。

次期魔法研究室長候補筆頭、か。

『超優良物件だお』


「夢魔の庵に行ったこととか書いてないんだね。」

「ああ醜聞になるようなエピソードは省くらしいよ。

貴族を敵に回すと厄介だからね。」

「醜聞か。私も夢魔も逃げ出すなんとかって言われてるみたいだね。」

と呟くと二人がビクッと身を震わせた。


「すまない。」

「ごめんなさい。」

オングとルルナに揃って謝られる。


ルルナに夢魔の庵の事を問い詰められたオングが私が出禁になったことも話し、

マクシム目当ての入部希望が増えて面倒くさくなったルルナが

「うちの部には夢魔に出禁にされたほどの人がいるから来ない方がいいよ」

と話したことが歪曲されて、私は夢魔も逃げ出す変態もしくは絶倫男と言うことになっているらしい。

『絶倫は男が誇っていい称号だお』

どうだかなー。エロ漫画でしか見ない言葉じゃない?


「ほんとにごめんなさい。

お詫びに売り上げのなっ、7割渡すからぁ」

ルルナが防御魔法陣の売り上げだと布袋を差し出した。

顔を背けて目を閉じて腕をピンと伸ばして自分の内面と格闘しているようだ。


「それは取り決め通りでいいよ。」

「ほんとぉ?」

さっと布袋を引っ込める。

ルルナはわかりやすくて面白いな。


売り上げの3割といっても結構な金額だった。

「市場価格よりは安くしたからすぐに売れたよ。

評判もいい。」

「こんなに稼げるならまた描くよ。」

魔法陣職人として穏やかに暮らすのもいいかもしれないな。


言っている間に外でざわめきが起こり、女子たちが散って行ったようだ。

「何なんだ、全く」

呻くマクシムの後から部室に入った。


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