側妃の宮
その宮には女性の姿はほぼ無く、様々なタイプの見目麗しい男性が集められていた。
『うわぁ露骨ぅ』女帝のハーレムみたい。
始めに対応してくれたのは初老の紳士だった。
『枯れ専までカバーしてるお。』
雑用係か、まだ成人もしていなさそうな双子の男子が動き回っている。
『ショタ枠だお!』
嫁いだばかりの側妃にこの国の事を教える教師役という文官は長身長髪の若い男だ。
『インテリメガネ!』
教師役はこの文官だけでなく、専門の講師が時間によって何人も入れ替わり立ち代わり来るのだと言う。
マナーの教師以外は全て男性らしい。
見る限りではみな事務的に接しているようで、
感情を覗いてもどちらにも特別の好意は感じない。
情夫候補と言うことは知らされていないぽいな。
側妃は黒髪に青い瞳の可憐な少女だった。
「本日より身辺警護にあたるミズキと申します。
よろしくお願いいたします。」
礼をとりつつ思考を覗いてみる。
「よ、よろしくね」
《なんでこの国の男の人みんな綺麗なの》
側妃は自分の黒髪を一束手に取った。
《私なんかにできるのかな》
同時に思い浮かべたのだろう、父王の姿が浮かび声が聞こえる。
《なんとしても寵愛を得て男子を産むのだ
お前の価値を示せ》
その表情には父親らしい優しみは感じられない。
王の言葉が思い出される。
《まあここに妃として送られてくるのは、王女とは言っても自国で後ろ盾もなく冷遇されていたものばかりだ。
王女を差し出すことが決まって市井で暮らしていた庶子を探し出して来たり、
替え玉を差し出してきた国も有ったな。今はこの国の一地方に過ぎないが。》
教育が終わるまで、という名目で、王は昼にしか訪ねてこない。
茶の席を王と共にしながらぎこちない笑みを浮かべる側妃の思考を覗く。
《陛下のお顔は落ち着く…》
初めてこの国に来た時のイメージかな。
不安と緊張で委縮しきった心に投げかけられた国王の笑顔が深く響いたようだ。
「側妃はどうだ?」膝の上から王に聞かれる。
王は私の部屋に来る度膝枕を要求する様になっていた。
疲れが取れるんだそうだ。
『《癒しの波動》の効果だお』
安眠枕みたいな扱いかな。
「周りの男性が綺麗すぎて気が引けるそうです。
陛下の顔は落ち着くそうですよ。」
「そうか。なんか引っかかるが綺麗な男は好みで無いのだな。」
「いえ、初めてこの国に来た時の陛下の笑顔にときめいたらしいです。」
「そうか。それはまずかったな」
まんざらでもなさそうだ。
「側妃様がお望みですし、無理に他の男をあてがおうとしなくてもいいのではありませんか?」
「いや。さすがに娘の視線が痛い。
それに」
王は遠くを見るように呟いた。
「黒髪も膝枕もひとりだけでいい」
ふと上から覗き込むような、黒髪に淡い褐色の瞳の女性のイメージが浮かぶ。
王にも特別に想う女性がいるのかもしれないな。
「膝枕は私だけの特権てことですか?」
とぼけて聞いてみると
「お前は男だろ。数に入らん。」
素気無く答える。
お前の中に女がとか言ってたくせにな。
「褐色の瞳じゃありませんしね。」
ついからかうように言い返すと王はぎろりと私を見て体を起こした。
「視えるのか?」
「え」
『墓穴を掘ったお!』
「どこまでわかる?」
「い、一瞬イメージが浮かんだだけです。
魔力の高い人相手だと思考も感情も読めません」
『さらに墓穴を掘ったお!』
「つまり側妃の話も思考を読んだと言うことか?」
「…はい。あ、でも陛下も読めますよね?」
「俺は思考までは読めん。真偽は感じ取れるが。」
読心術のことを事細かに話すことになってしまって
新たに覗いた思考を報告する任務が追加されてしまった。




