王命
アリーと食堂に向かう途中で迎えに来たリットさんに出くわした。
アリーと別れ、そのまま城に向かうことにする。
『王城の食事の魅力には抗えないお!』
正直言うとそうだな。
特別豪勢と言うわけではないが、献上品なのか珍しい料理や果物が出てくる時が有る。
そしてやっぱり料理人の腕は王城の方がいいんだと思う。
食事を済ませてから私室のソファで寛いでいると扉が叩かれた。
また国王かな。
王は私が泊まる度に顔を出すようになっていた。
ノックに返事をする間もなく国王が入ってくると
ソファに座っていた私に端に寄れと言う。
「膝を貸せ」
国王はソファに寝転がると私の太ももに頭を乗せた。
「固いな」
『何が?』フトモモ!筋肉!
『わかってるお。なんだと思ったんだお?』
くっそうざい。
「鍛えてますから」
と答えると、王は
「まあいい。ちょっと眠らせろ」と言って目を閉じる。
「こういうことはお妃様たちにお願いした方がよろしいのでは」と言うと
「お前の中にも女がいるだろう。黒髪の。」と言う。
王にはどこまで知られているのかな。
なんとなく怖くて聞けないでいる。
さて瑞希だったらどうするかなと思っていたら自然に手が王の髪をなでていた。
『新しい扉開いちゃう?』
いや、王は嫌いでは無いけどそういう感情ではないな。
母性みたいなものかな。
この、片時も気を抜けないであろう為政者を哀れにも愛しくも思う気持ち。
あの絡みついた制約魔法の帯を見てから特にそう感じるようになった。
実際、神様にいじられたせいか
男性に対する恋情はマジでひとかけらも湧いてこないんだよね。
ほんの少し眠ったような王だったが、すぐに目を開けると言った。
「女を一人 籠絡してくれないか?」
はああ?
対象は小国から寄越された成人したばかりの側妃だという。
「さすがに娘より年下が相手ではな。」
いや今から側妃を娶ったら自然とそういう歳になるでしょう。
でもこの人ハーレム王じゃなかったっけ?
『好色王とも言われているお。』
そんな人が年齢差なんか気にするかな。
「では王子殿下のお相手に考えたらいかがです?」
「そう簡単な話ではないのだ。」
私にはよく解らないけど国力のバランスとかなんとかで王の側妃に収めることになったらしい。
「実際のところ他国の魔力の低い者との間に子を設けるメリットはこちらには無い。
情夫を認める条件で忠誠を誓わせた方が管理しやすい。
すでに思い人がいればそれが一番だったんだが」
調べた限りではそういう相手はいないという。
「どちらにしても私には人の心を弄ぶようなことは出来ません。」
「本気になって良いんだぞ。
表立って下賜することは出来ないが同じ宮に住まわせてやる。
他国に売られた哀れな姫君を守る騎士という役どころだ。」
策略を知っていて恋愛関係になんかなれるわけがない。
返事をしないでいると
「まあとりあえず会ってみろ。
明日から七番から外れて側妃の警護に当れ。
ついでに母国の状況とか探ってこい。」
王は体を起こすとニヤッと笑って私に向けて指をさした。
「王命だ!」
『ドーン!!!!って効果音が聞こえたお。』
翌日
届けられた騎士っぽい服を着る。
『カッコイイお!』
やだすごく似合ってる。
そんなことで気分が上がってしまう。
多分抜くことが無い剣を腰に下げて、なんちゃって護衛騎士の出来上がりだ。
今度乗馬も習ってみようかな。




