魔法研究部
学校に戻ると半端な時間になっていたので、魔法研究部に行ってみる。
部屋にはアリーと一組の男女が居た。
「紹介するよ。ルルナとオングだ。
二人は将来を誓い合った仲さ。」『ち』
「よろしくぅ」
「よろしくね」
書類やら何やら散らかった机の向こうから二人が挨拶した。
こちらこそよろしくお願いします、と言い終わらないうちにルルナが話し出す。
「アリーがこの前連れてきた女子ふたり、もう来ないかもよぉ」
「なにかあったの?」
「新顧問にこーんな顔で見られたってギャーギャー騒いでた。」
眉を顰めて目を細めて斜め上からさげすむような顔だ。
「えー、そんな失礼なことすると思えないけどなあ。あの先生。」
「僕もそう思ったけど実際見たよ。
まあ彼女たちが家柄とか婚約者がいるのかとかしつこく聞いたからだとは思うけど。」
顧問は若い、結婚対象になりそうな男性と言うことらしい。
「先輩たちがみんな卒業しちゃったから部員増やそうと思ったのになあ。」
と、アリーはため息をついた。
「でも今日また一人増えたんでしょ?」とルルナが私を見る。
見学とは言いにくいなあと思っていると、短いノックの後扉が開かれ男が入って来た。
「あれ、君は」
「あ」
現れた男は夢魔の庵から連れ帰った男だった。
「知り合いかい?
顧問のマクシム先生だ。」とアリーが言う。
どうごまかそうか悩んでいると
「いいよ。隠すことでもない。」とマクシムが話し出した。
「わあ。ロマンチックですねぇ。」
亡くなった婚約者の面影を求めて夢魔の庵に行ったこと、私が連れ帰ったことをマクシムが話し終わるとルルナがうっとりと言った。
男子二人は複雑な表情をしている。
そりゃあ夢魔だもんね。
『淫夢だもんね。』
「あのあと、君の言った通りに婚約者の親友に話を聞いたよ。
酷いものだった。」
マクシムは目を閉じて首を振る。
「だけど婚約者が嫌がらせを受けたのはあの女が初めてじゃなかったらしいんだ。
僕はそんなことにも気づかずただ未来を信じて疑わなかった。
自分の愚かさに呆れたよ。」
「それで積極的な女性にはあんな対応になるんですね。」
オングが言うとマクシムは不思議そうに聞いた。
「あんな対応?」
「昨日、すごく嫌な顔されてましたよ。」
「そんなはずないだろう。
僕はいつも紳士だって婚約者も言ってくれていた。」
本人は自覚が無いらしい。
「いや、こーんな顔してましたって。」
ルルナとオングが実演する。
「そーんな顔するはずないだろう。」
「ほんとにこーんな顔ですって。」
私もちょっと信じられないな。
あの誠実そうな紳士な青年があーんな顔するなんて。
「ありえない。
そんな人に不快感を与えるような顔を…」
マクシムが言いかけたところで扉から覗く二人の女子の顔が見えた。
「あ、君たち来てくれたの?」アリーが声を掛ける。
「また部員が増えたみたいって聞いて」
おずおずと入って来た二人が私を見た。
「話してた二人だよ。ほら見て」
ルルナにつつかれてマクシムを見るとあーんな顔をしていた。
『ゴミを見る目だお。』
その顔を見たのかわからないが女子ふたりはまた来ると言い残して去っていった。
「あー、これはもう来てくれないな。」
「先生があーんな顔するからですよ。」
みんなで責めてもマクシムは頑なに認めようとしない。
「いや、そーんな顔してないって!」
『この先生ポンコツ味あるお。』




