推測と報告
翌日、第七王子の私室に呼ばれた。
リットさんと国王もいる。
「まだ推測に過ぎないが」と前置きして王が語り始める。
先々代の王の統治時まで、王宮の神殿には精霊王の召喚陣があった。
精霊王の権能を授かるものが現れないときは召喚の儀式を行って後継者を決めたこともあったと言う。
だがもう百年以上、召喚に応じることのなかった精霊王は、先々代の王の召喚にも応じることは無かった。
自分以外の者が召喚に成功する可能性を恐れたその王は召喚陣を破壊し、関連の文献も全て焼き尽くしたが、もう一つ罠を仕掛けた。
精霊王の力を欲するものが悪魔を呼び出すように。
『陰険だお』
「王城のどこかに精霊王の召喚陣を記した書物があると噂を流しておいたのだ。
三番はイリヌスに唆されてそれを見つけたのだろうと俺は考えている。」
「悪魔については詳しい文献も少ないし研究者もほとんどいない。
その昔は精霊と同じように悪魔と契約して力を得た者もいたらしいが、その者たちの悲惨な末路がおとぎ話程度に残っているだけだ。」
まあ、あの悪魔もかなり性格悪かったしね。
こっちの悪魔は、前世でよく見た漫画みたいに死後の魂と引き換えに力を貸すとかじゃないんだろうな。
「悪魔って普通にいるんですか?」
「いや。ごく稀に魔物と共に現れることはあるがさほど脅威ではない。
今回のように人を生きたまま取り込むような高度な技を使う悪魔は召喚陣でしか現れないと思われる。」
王は大きく息を吐いてから私の方に向き直った。
「あとはお前に聞きたい。
どうやって被害者を救出し、
あの悪魔を倒したんだ?」
「いえ、倒したのはリットさんですよ。
私は防御の魔法陣で攻撃を防ぎながら、攻撃魔法でちまちま削っただけです。」
「だが」
と、王が言いかけたのを遮ってリットさんに言う。
「聖域魔法、すごかったです!
今度教えてください!」
王に目で許可を取ってから、リットさんが言う。
「そうですね。
私の聖域は殿下と私の定員2名ですからミズキ殿も自分の身は守れるよう覚えておくべきですね。」
「聖域魔法って定員があるんですか。」
「いえ、聖域にいれるメンバーで強度が変わるのです。
私の聖域は殿下と私で最強です。」
『いざというときお前は入れないぞ、って言ってるお。』
リットさんもしかして王子大好きなのか?
扉がノックされ、入ってきた男に何やら耳打ちされた王は出て行った。
王子が言う。
「イリヌスの身柄は当分夢見の塔に置くことになった。
被害にあった学生たちの証言が取れるようになるまでね。」
夢見の塔とは、王宮内の精霊王を祀る神殿に隣接された塔で、その昔は聖人が定期的にそこに入り、夢のお告げとして国の凶事の予知などを行っていたという。
「よほど心の清い聖人でないと予知は得れない。
心のあり様をそのまま映す夢を見せる部屋なのさ。」
罪人は恐ろしい悪夢に苛まれ、精神に異常をきたすものまでいると言う。
「神官たちも聖人でないとバレるのが嫌で使わないから、今は完全に罪人用だけどね。」
と、王子は笑った。




