決着
「私は弱者をいたぶる趣味は無いんだけど、あなたは好きなんだよね?」
じりじりと悪魔に近づいていく。
「恐怖に怯えてからの方がおいしいんだよね?」
悪魔が放つ弾丸は盾に吸い込まれていく。
弾丸を放つ手がウザいので捕まえて肘あたりをぎゅっと掴むとそこで千切れた。
千切れた部分を両手で揉み込むと手の中で灰になっていく。
悲鳴を上げる悪魔の胸倉を掴んだ。
ジュウジュウと音をたてて煙が上がる。
「自分は殺しておいて死ぬのは嫌なの?」
「殺してない!腹の中に置いてあるだけだ!」
悪魔が意外なことを言った。
「生きてるの?」
「ああ!腹の中に置いておくと恐怖に怯える感情をずっと味わえるのさ!
もとより人間の体を消化などできん!」
「じゃあその人たちはずっと恐怖を味わってるの?
そういうの生き地獄って言うんだよ?」
ギリギリと悪魔の喉を締め上げる。
『ミズキコワイお』
「俺を殺せばそいつらも死ぬぞ!」
「どうかな?あなたを殺せばみんな出てくると思うけど。」
ぐ、と悪魔が言葉に詰まる。
『図星だお』
「でもそうだね。死んだらかわいそうだから先に出してよ。」
「出したらっ」悪魔が叫ぶが取引なんてしない。
「出してよ。」締め上げる手に力を入れる。
『交渉の余地なしだお』
悪魔の腹辺りが膨らんでぼとりぼとりと人が落ちた。
木の幹のようだった悪魔の下半身がすっかりスマートになって二本足になっている。
締め上げていた手を放して倒れた人たちの脈をとる。
みな顔面蒼白で気を失って、かなり衰弱しているようだが生きている。
さっとさらに隅に逃げた悪魔が叫ぶ。
「もういいだろう!帰してくれ!」
「帰す?」
「もう二度と召喚には応じないと約束する!だからこのまま帰してくれ!」
約束、ねえ。
『ここはアレだお!』おうよ!
「お前だったら帰すのか?」
「なっ?」
「助けを乞う人たちをお前は帰したことがあるのか?」
『一度言ってみたかったセリフだお!』
やだちょっと恥ずかしい。
突然、扉が激しく叩かれた。
「ミズキ!そこにいるのか!?」
王子の声だ。
「開けないで!」と叫ぶ間に扉が開け放たれた。
開いた扉にボロボロの悪魔が突進していく。
「逃がさないで!」と叫ぶ。
「聖域!」
リットさんが両手を前に出して叫ぶと、光の壁が入り口ごと王子とリットさんを取り囲み、
勢い余ってその壁に衝突した悪魔は叫びを上げながら溶け込むように消えていった。
「消えた…のかな?」
「悪魔、か?」呆然とした王子が呟く。
「もし悪魔だったのなら消滅したはずです。
“聖域”は聖属性の最上級魔法ですから。」
と、リットさんが言う。
「自分では悪魔と言っていました。」
言いながら、終わったかと思ったら力が抜けてへたり込む。
「そこに悪魔に取り込まれていた人たちがいるので」と指をさす。
そのうちの一人を助け起こした王子が叫んだ。
「兄上!」




