今後のことを考える
混雑のピークが過ぎた宿の食堂で、食事をしながら親父さんに話を聞く。
「魔法学校の試験を受けてみたらどうだい?魔力が高くないと入れないから腕試しにもなる。」
魔法学校は国で運営する職業訓練校で、入学試験が厳しく才能が認められないと入れないらしい。学費は不要だが卒業後は国の管理の元、働くことになる。
「卒業すればいろんな資格を手に出来るし、卒業後学費相当の金を払えば国の管理から外れることもできるのさ。まあ大金だから大抵はそのまま国の管理の下で働くけどな。
でも国に雇われるのも悪くない。働きが認められれば爵位だって授かれるし、ここらへんで働くよりは給料もずっといい。」
親父さんはふと私の顔を見つめてニヤッと笑った。
「まあお前さんならその顔でいくらでも稼げそうだけどな」
部屋に入ってから洗面台の前でまじまじと鏡を見る。
「これはすごいな」瑞希だった頃の面影なんかどこにも無い。
完全に別人の完璧な美男子だ。
しかもそう、瑞希としてすごい好み。
ゆるいウェーブのかかったプラチナブロンドに紫にも見える濃い青い瞳。
でもどうなんだ?真実の愛を見つけるのにはあんまり外見がいいのも不利じゃないか?
『真実の愛!ロマンだお!』
そう言えば女神に説明を受けていた時、真実の愛と言うワードに周りが盛り上がっていた気がする。何もかもぼんやりとしていたから確かな記憶ではないけれど。
『【真実の愛】に沸いた神々がみんな面白がって加護をくれたんだお』
確かに私に与えられた使命が【真実の愛】と言っていた。
真実の愛を見つけるでも手に入れるでもなく…。
あれ?どういうこと?私何すればいいの?
『学園生活!楽しみだお!女子生徒もいるんだお!』うっさいわ能天気野郎
とりあえず明日は魔法学校の入学試験の申込に行こう。どんな試験なのかな。
ベッドに横たわって静かになると日本でのことが思い出される。
私が死んで両親と弟は悲しんでいるだろうか。恋人は今居なかったから良かったな。
働き出してからあまり会えなかった友達は?同僚は?
そういえばここに突然連れてこられて、過去を振り返るわけでもなく死を嘆くわけでもなく行動している自分に違和感を抱く。
『適応力+の加護を貰ってるんだお』
なるほどね。性的趣向も変えられたわけだし何かいじくられていても不思議はないけれど。
ちゃんと私は瑞希でいるだろうかと自問する。まあ多分瑞希でいるよ…ね。