加護
4日ぶりに寮の部屋に戻り、シャワーを浴びる。
ベッドに飛び込みたい気分だが、その前にもう一度冒険者カードを探す。
「しかし見つからないな」
狭い部屋に少ない荷物。なのに冒険者カードが見つからない。
『探索を使うんだ!』
あ、そうだね!やってみる。
集中してカードを思い浮かべると光の道が王城へ続いているのが見えた。
王城の私室に置いてきちゃったのかな?
覚えが無いけど。王城へは行きたくないな。
陽はまだあるけれどベッドに寝転がる。
『カードで何したいんだお?』
一度加護をしっかり確認しようと思ってね。
『加護なら僕がわかるお!』
え、じゃ言ってみてよ。
『アイウエオ順でいくお』
『まずは《愛》だお』
どんな加護なのよそれ
『常時発動型の加護で神々の愛に包まれてるんだお』
へえ。
『《癒しの波動》とあいまって近くにいる人も愛で包むお』
あれ、じゃあオンブなんかしたら
『ばっちり癒されまくるお』
あの人を少しでも癒せたのなら良かったな。
『次は《合気道+》だお。合気道時の攻撃力と守備力が上がるんだお。』
合気道ってこの世界にあるの?
『多分無いお。』
じゃ意味ないじゃん。
『みんなが面白がって加護をつけたから意味無いのとか重複してるのとかいっぱいだお。』
『次は《挨拶+》だお。挨拶した時の好感度アップだお』
こんにちは^^
『おぅふ。刺さったお』
『次は《愛してる+》だお。愛してるって言ったときの破壊力アップだお。ただし真実の愛に限る。』
じゃ試せないな。
『次は《アイドル耐性》だお。アイドルとか有名人に会ったときに落ち着いて行動できるお』
眠くなってきた。
『次は《曖昧さ回避》だお。曖昧な表現も的確に理解できるお』
いい加減なこと言ってない?
『ア行だけでもまだまだあるお。』
全部でいくつあるの?
『数えきれないお』
なんかもっとこうヤバいかんじの加護無いの?
『《不死》』
えっ
『寿命でしか死なないお』
あ、死ぬことは死ぬのね。
でも大怪我したりしても生き続けるの?
『《自己再生》の加護があるからたとえ首チョンパしても治るお』
どう治るのか想像したくないんだけど…
瞬時に治るの?
『大怪我だとそれなりにかかるお』
じゃ痛いのが続くの?嫌だなあ。
『《痛覚遮断》の加護があるお。任意で痛みを感じなくできるお』
なんかそれって
『セットで肉盾にぴったりの加護だお』
王子には絶対秘密にしよう。
いよいよ眠気が差してきてまどろみかけた時、強いノックの音で起こされた。
「ミズキ!いるのかい?」
あ、王子だ。側近候補の仕事のこと忘れてた。不味いな。
扉を開け、まず頭を下げる。
「申し訳ありませんでした!
冒険者ギルドで受けた依頼が長引いてしまいました!」
この時、王子の脳裏にはここ数日の記憶が駆け巡っていた。
事の始まりは、翌日王子が登校する旨を伝えに行った侍従が血相を変えて帰ってきたこと。
「ミズキ殿がどこにも居りません!
念のため寮の個室を確認しましたところ荷物が整理されており、残されていたのは筆記用具とノートのみでした!」
「なん…てことだ。見張りは何をしていた!」
「冒険者ギルドで魔獣討伐依頼の完了報告をした後、冒険者数人と話をしてから町で買い物をして帰ったと。」
「何か別の依頼を受けたんじゃないのか?」
「それが依頼を受けたようには見えなかったと。」
「買い物は?何を買っていたんだ。」
「色々な店を回った割に荷物は少なかったということでした。」
「とにかく冒険者ギルドに問い合わせてミズキが依頼を受けたか確認するんだ。」
「それが冒険者ギルドには守秘義務があるので王の勅令でも無ければ開示できないと。
勅書を出していただきますか?」
そんなことしたら父上にこの失態がバレちゃうじゃん!
と、王子は心の中で叫んだ。
矢も楯もたまらず、一番危険な隣国との国境まで馬を走らせた。
国境の門番に厳戒を言い渡し帰路につく。
悪い想像が膨らむ。
ミズキが隣国の兵器になって帰ってきたら…
いやあの善良そうな男がそんな。父上にも視て貰って人柄も確認したではないか。
だが人の心は変わるもの。
ミルダの件で自分の対応に不信を持ったのでは?
不安はとどまることがない。
王都の門をくぐった時、迎えに来た侍従が遠くに見えた。
「ミズキ殿が寮にもどったそうです!」侍従が叫ぶ。
その時の気持ちは言い表しようがない。
安堵、憤り、更なる不安。
その足でミズキのもとに向かった。
そして目の前で頭を下げる男への対応を考える。
相変わらず悪心の無い顔をしている。
王子は侍従を制し、自分だけミズキの部屋に入り鍵をかけると頽れた。
「心配したよぉ。
なんにも言わずいなくなるなんてひどいじゃないか。
無事に帰ってきて良かったぁ」
泣き出しそうな情けない声を上げれば、人の好いこの男は慌てて跪き自分を立たせようとする。
「すみません。すぐ帰れると思ってたんです。
本当に申し訳ありませんでした。」
言い訳をする男に邪心の無いのを見て取った王子はようやく安心した。
やはりこの男にはこの対応が最適解。




