謹慎
「あの殿下 ミルダは」王子に引っぱられながら聞く。
「ああ大丈夫だ。命まではとらない。」
「じゃあ」
「魔力を封印して退学が妥当な線かな。」
思いのほか厳しい処分に絶句してしまう。
「君は自分の心配をしたほうがいいんじゃないか?」
王子の声がいつもより厳しい。
「君は王族に害をなそうとしたものを手引きした自覚はあるのかな?」
ミルダの取り調べが終わるまでと言われて
城の地下の牢屋より多少待遇の良い反省房というところに閉じ込められた。
「王族に害をなそうとしたものを手引きかぁ」
まあ王子がデレるの見たいとか思ってたし、完全に悪気が無かったとは言えないなあ。
まさか初対面でいきなり魅了魔法をかけようとするとは思わなかったけど。
魔力を封印されるとか言ってたけどそんなこと出来るのかな?
私もされたらどうしよう。
『一国の王であろうと何であろうと矮小な人間ごときに封印される我ではないわ』
お。強気だねえ。
『いざとなればこんな城ごとき全て消し去ってくれる』
なんか魔王みたいになってる。
強気な厨二魔王さまのお陰で気持ちが楽になった。
たまにはこんなところでゆっくりするのもいいかもしれないな。
こっちの世界に来てから怒涛の日々だったし。
とりあえず惰眠を貪る。
王の私室にて。
夕闇の迫る中明かりも付けず、王は一人考え込んでいる。
王家の血筋に受け継がれる能力は、同世代複数人に現れることも有れば、数世代に一人にしか現れないことも有る。
今代の王は2世代ぶりに現れた能力者で、その能力を持って父親を操り伯父である暴君を排除した。
ただその子供たちには未だ能力の発現がない。
能力発現の年齢も過去の例はまちまちで法則性を見いだせない。
そこに現れたのが女神に体を与えられたと言う男。
神々に数多の加護を与えられ、その能力は王家のそれを凌駕する。
「王家に忠誠を誓う制約さえ掛けることが出来ればこの国も安泰なんだがな。」
制約魔法を盤石なものにするには、制約に見合う代償が必要だ。
本人の望む代償を与えることによって、制約は術者だけでなく、本人の魔力も使用した強固なものになる。
未だ己の価値を知らない純朴な青年をどう囲い込むか。
「父上、ミズキの冒険者カード持ってきましたよ」
第七王子がやってきた。
「見てみろ」
台座にカードをセットすると、本人にしか見えないはずの文字が浮かび上がる。
「何ですかこの加護の数は」
「あまりに多くて本人も把握していないらしい。」
「でしょうね。知っていたらあんなところで大人しくしていないでしょう。」
「とりあえずうまく懐柔するまでは気付かせないようにしないとな。」
「はい。」
能力を可視化できるこのカードは冒険者ギルドでしか発行できない。
王はミズキのカードを鍵付きの引き出しに仕舞い込んだ。
「元気そうだね」
反省房に第七王子がやってきた。
「ミルダが君に魅了魔法を掛けて僕に取次ぎを頼んだって自供したよ。
君はもうちょっと謹慎してもらうけど私室に移っていいことになった。」
「ミルダの処分は」と聞くと
「予想した通りだ。魔力を封印して学校は退学。」と言う。
「私は彼女の魔法には掛かっていません。
状態異常無効の加護があるので。
彼女の罰は軽くなりませんか?」
私が先に指摘していればと、少し罪悪感がある。
「君が操られたかどうかなんて関係ない。
彼女が魔法を掛けたことが問題なのさ。」
「今まで魔法を使っていた人間が全く使えなくなるのは酷では」
「ああいう手合いはその場その場で最大限の力を使ってのし上ろうとするものさ。
心配しなくても僕らなんかより余程逞しい。
ああ、君が僕を呼び出したことについては不問にするよ。」
「そういうわけには参りません。
やはり私では力不足です。責任を取って側近候補は辞したいと」
「責任をとるって言うのは職務を全うすることじゃないのかな?」
く。
『交渉術+の加護を持っているはずだが。』
基礎力が違い過ぎる。
私の私室に連れていかれ王子の話を聞く。
「今回の筋書きはこうだ。
君はミルダの魅了魔法で操られ僕を呼び出したが、僕の侍従がミルダの魔法に気付き僕に魔法を掛ける前にミルダを倒した。
呪詛返しのことは秘匿事項だ。対策を練られるのは困るからね。
君の状態異常無効の能力も隠しておいてくれ。
君がガードの甘いボンクラでいてくれた方がいい弾除けになる。」
ボンクラて。弾除けて。
部屋のドアがノックされる。
「お茶をお持ちしました。」
「入れ」と王子が言うとワゴンを押したメイドが入ってくる。
後ろに深緑色のドレスが見えた。
「姉だ。」




