進路
通されたのは前と同じ第七王子の私室だった。
ややあって国王が現れる。
「父上!ミズキが側近候補として働いてくれるそうです!」
王子が立ち上がって主人を迎える犬のように王に近づく。
「よくやった。早速ミズキの私室を用意するよう伝えてくれ。」
「はい!」明るい返事をして王子が出ていく。
「私室ですか?」
「ああ、ここに泊まることもあるだろう。私室を与える。」
「いえ。
側近候補と言っても王子殿下が学校にいらっしゃる時だけというお話でしたし必要ないかと。
私の能力が王子殿下のご期待に添えないかもしれませんし。」
「遅かれ早かれお前はここで暮らすようになる。諦めろ。」
え?どういうこと?
「お前ほどの能力を持つものを王家は放っておかないということだ。」
能力値がバレてる?
「鑑定眼で能力値が分かるのですか?」
と聞くと、王は秘匿事項だと前置きして話す。
「お前が冒険者登録した時も魔法学校の試験を受けた時もお前の能力値は報告されている。
優秀な人材は囲い込むに限るからな。」
「王は国民に自由を保証したと聞きましたが。」
「ああ。この国という檻の中ならどう暮らしても自由だ。
国の内にいるならそれだけで利になる。
そうだな。お前の能力値なら種馬としてだけでも価値があるな。」
『種馬…甘美なる響きよ』あ、そういうとこは変わってないんだ。
「だがひとたび国外に出れば脅威に代わる。わかるか?」
「つまりこの国で生きるしか許されないと?」
「そうだ。お前がこの国に降り立った時点でお前の運命は決まったのさ。
側近になるも種馬として生きるも自由だが王家の管理下に置かせてもらう。」
「種馬は無理ですね。
私のこの体は女神さまに与えられたもので能力が遺伝するかは不確定です。
それに私には与えられた使命があるので。」
「使命?言ってみろ」
「【真実の愛】です。」あれ、ちょっと恥ずかしい。
王は目を見開いて3秒ほど固まったがのけぞって笑い出した。
「それは難儀な使命を授かったものだ。種馬は無理だな。」
あれ?【真実の愛】を笑ったんじゃないのかな?
「使命というものは人知を超えた崇高なものだ。
使命に準じていれば何事も上手くいくし、背けば何もかも上手くいかない。
上手くいかないと分かっているものに労力を費やすのは無駄というものだろう。
とにかくお前はこの国の中でどう生きるか考えることだ。
野心も悪心も無いのはいいが。」
そしてくくっと笑う。
「アレに絆されるくらいのお人よしだからな。」
王が出ていくと入れ替わりに第七王子が入ってくる。
後ろに水色のドレスが見える。
「もう一人の妹だ。」
その場を辞して帰りたい旨を伝えると私室を見てからと言われる。
案内された部屋に入ると王子と二人きりになった。
「二人の時は何でもするって言ったよね?」
色々逃げ道を塞がれていくイライラを王子にぶつけてしまう。
王子の襟を掴んで聞くと王子はにっこり笑って言った。
「何でもするとは言ったけど何してもいいとは言ってないよ?」
こいつ、あの低姿勢で頼み込むのが手なんだな。
狡猾な腹黒王子め。何か仕返ししてやりたいけど…
「さあ、何してほしい?」
王子は両手を広げて微笑んだ。
『しゃぶれ…』それは言っちゃダメ!




