側近候補
『我 真を得たり。』
起き抜けの脳内君はキツイ。
今度は何?
『世に迎合することの愚かさに気づいたのだ。
迎合すべきはこの世の方である。
この全能の我の前に跪くが良い。』厨二病かな。
まあ前よりはましなので放っておこう。
朝食を済ませて食堂から出たところで第七王子に捉まった。
「側近候補の話、考えてくれたかい?」王子が聞いてくる。
「何をしたらいいのかもわかりませんし、正直私では力不足かと思います。」
「僕が学校に来ている間、近くにいてくれるだけでいい。とりあえずはね」
王子は毎日学校に居る訳ではない。割のいい仕事に違いはないのだが。
『何を恐れる。己の危機感知の加護を信頼するが良い。』
そんな加護も有ったんだ。
このなんとなく気が乗らない感じは杞憂なのかな。
とりあえず返事は一旦保留にさせてもらって、用があると言い繕って寮に向かうと王子がついてくる。
部屋に逃げ込もうとするも追いすがられ一緒に部屋に入ってしまった。
部屋に入った王子は床に膝をついた。
「頼むよ!君を懐柔するように父上に言われてるんだ!
出来なかったなんて言ったら見捨てられちゃうよぉ!」
え、王子 キャラ崩壊なんですけど。
本人に懐柔とか言っちゃうし。
「人前でだけ王子として扱ってくれたらいいから!
二人きりの時なら何でもするから!頼むよおぉ」
縋りつくように訴えてくる。
『今なんでもって…』それは言うな。あと口調が普通になってる。
と、ノックがされて侍従の声がする。
「失礼、こちらに殿下がいらっしゃいますか?」
「はい」と答えて扉を開け振り返ると
王子が何事もなかったかのように微笑みを浮かべて立っている。
「ミズキ君と話があるんだ。先に行ってくれ。」
「かしこまりました。」
侍従がお辞儀をして扉を閉めると、王子はまた膝をつく。
「頼むよぉ」
短いノックがして扉がまた開く。
「殿下にお伝えすることがございました。」
「何だい?」恐るべき速さで立ち上がった王子がまた微笑みを浮かべている。
「あ、いえ。思い違いだったようです。」
侍従が扉を閉める。王子が崩れ落ちる。
「あ、殿下!」侍従がまた扉を開ける。王子もう立ち上がってる。
王子、侍従に遊ばれてないか?
王子が不憫に思えて侍従が出て行ったところで鍵をかけた。
また膝をつかれる前に椅子を勧める。
「とにかく頼むよ。学校にいるときは近くにいてくれるだけでいい。
あとはたまに登城してもらうだけだからさぁ」
『哀れなる力無き者を救うのも強者の義務』
あれ?意外に優しい?
まあ立場的に王子の方が圧倒的強者なんですけどね。
「私も生徒として授業を受けている身なのですが」
「僕は3・4日に一度しか学校には来れないからその時だけでいい。
どうしても授業が受けたいならそれでもかまわないからさ、頼むぅ」
王子は椅子から滑るように降りると土下座した。
「頼む!」
額を床に擦り付けんばかりだ。
一国の王子がDOGEZA。しかたないなあ。
「わかりました。将来的にはわかりませんが側近候補お受けします。」
ぱぁっと顔を輝かせた王子は立ち上がり私の手を取る。
「早速今から父上に報告に行くよ!」




