権力
でもどうしたものか。
最悪私たちが戻るまで学校を休んで貰うのもありかな、と思うほど
学校の雰囲気は良くない気がする。
表立って何か言われるとかではないんだけど
学校全体に悪意の詰まったシャボン玉が漂っていて
いつどこでそれが割れるかわからないみたいな危うい空気感がある。
昼を食堂で摂る気にならず、包んでもらって部室に向かうことにする。
そんな時後ろから声を掛けてきたのは第七王子だった。
「難しい顔してるね。」
と笑いかける王子に安堵の息を漏らした自分に驚く。
『この腹黒にホッとするなんて!』
あれかな。溺れる者は藁をも掴むってやつかな。
「心配ごとかい?」
と聞いてくる王子に現状と留守の不安を話すと
「そうだね。
僕も気になってるよ。」
と同意した王子はそのまま私についてくる。
部室にまで入ってくると自分も魔法研究部に入部すると言った。
「権力には権力だろ?」
と笑う。
えっ、やだ頼もしい。藁なんかじゃ無かった。
『ピコン!ミズキの中で王子の評価が上がったお!』
うん。腐っても鯛くらいには上がったかな。
王子が自己紹介すると皆もそれぞれ名を名乗った。
「君が噂の呪い子さんか。」
と王子がロイスを見ると一瞬空気がピリついたけれど
「綺麗だね。」
と続いた言葉に緊張は緩み、ロイスは頬を赤らめて俯いた。
「でしょお?」
とルルナが得意げに言う。
「呪い子とか言うヤツは嫉妬してるんだよぉ」
「そういう面もあるかもね。」
と肯定した王子はロイスに向き直ると言葉を続けた。
「君はもう少し自己評価を上げて賛辞に慣れるといいよ。
故郷でも、今はこの学校でも呪い子なんて言われてるかもしれないけど
社会に出ればそんなふうに言う奴は少なくて
綺麗だと持て囃す者が多くなるだろう。
言い方は悪いけど珍しもの好きな者もいる。
そうなってからやっかいなのに引っ掛からないようにね。」
「いいこと言う!」
と言うルルナにオングが小さい声で
「相手は王族だよ。」
と言葉遣いをたしなめた。
ハッとしたルルナが
「第七王子殿下にありがたいお言葉を賜り光栄の極みでござりまするぅ」
と仰々しく言うと王子が笑って言った。
「この部室の中では気取らずに話してくれると嬉しいな。
僕は後輩になるわけだしね。」
「そっかぁ」
ルルナはとたんに砕けた口調になる。
何はともあれ学校のことはこれで安心できるかな。
「明日からは昼を食堂で一緒にとろう。
僕の入部をアピールするよ。」
と言って席を立つ王子を見送ってお礼を言うと
「学校の管理も僕の仕事だからね。」
と笑う。
私たちが留守の間は毎日登校してくれると言う。
改めて王子と繋がりがあって良かったななんて思ったりする。
今回のことは正直自分ではどうすればいいかわからなかった。
自分自身に悪意が向けられるのはまあ耐えられるけれど
親しい人たちが悪意に晒されるのは結構辛い。
王子が味方についてくれれば貴族子女も静かになるだろう。
『やはり権力!権力は全てを解決する!』
まああれよね
寄らば大樹の陰ってやつよね。
この際だから利用させていただこうじゃないの。
だけど去り際に王子は私の耳元で囁いたのだった。
「貸しにしとくね。」
前言撤回!
やっぱり掴んじゃいけない藁だった!
『揉め事の解決にヤクザの手を借りた男の末路が待ってるお!』




