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脳内男子がうるさくて  作者: ちぇりこ


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第四側妃

今日は昼間から王の要請で側妃の宮に付き合わされている。


「第四側妃の宮だ。」

と王が言う。

第四側妃は故人と聞いた。

「なぜ?」と問うと

明日謁見に来る第四側妃の弟を案内して欲しいという。

姉の墓参りがしたいのだそうだ。


側妃の弟は、今はこの国の一部となった側妃の生国を領主として治めているのだそう。

側妃の死後、後ろ盾のない王女と粗末な扱いをしていたくせに

大事な王女を死なせたと難癖をつけてきた生国の王族を

「ムカついたから」滅ぼして

側妃がずっと気にかけていた同腹の弟を領主に据えたそうだ。

満足な教育も受けさせてもらえずにいた弟が治めるのは容易ではなく

補佐に人を送って、円滑に領主としてやっていけるようになったのはほんの最近のことで

こちらにくるのも初めてなのだそう。


第四側妃の宮にはひとけは無く、

たまに掃除が入るだけで 生前のままにしてあると言う部屋は

そこかしこに甘い思い出が匂い立つようだった。

奥に進むとちいさな裏庭に出て花に囲まれた墓石がある。

墓石には側妃の名前とその下に第四王子と記してある。


「なぜ御子を?第四側妃様は魔力が高かったのですか?」

不思議に思う。

体が弱いという話だったし、この世界にはいい避妊薬があるらしいから。

「いや。俺は子供など欲しくなかった。」

と王は言う。

側妃の強い希望があったそうだ。


「証が欲しいのだと言った。」

と王は言う。

生きた証?それとも愛された証かな?

『俺が証だ!』ぷ。恥ずかしいセリフ。


「俺が証だとか言えば良かったじゃないですか。」

「言った。」

「え」

「俺では証になれないかと言った。」

マジでそんなセリフをこの人が?ホントの恋こわい


「誰かの唯一になりたいのだと

自分を唯一としてくれる存在が欲しいのだと

そう言われてしまっては認めるしかなかった。」


「それは王妃にして欲しいとかの謎かけだったのでは?」

「そんな女ではないぞ。」

と王は即座に否定する。

そして遠くを見るように言った。

「だがもしそう望まれたなら

俺はとんでもない愚王になっていたかもしれんな。」


王は墓石の隣のベンチに腰を下ろした。

「あいつの体が弱い事も

子を成すことで命を落とすものがいることも知っていた。

だが結び付けて考えてはいなかった。」

と深いため息をつく。

「俺の人生最大の失敗だ。」


少し一人にしてくれるか、と王に言われて室内に戻る。

そっと家具に触れると甘やかな思い出が流れ込んで来る。

他愛ない話を交わすひと時を過ごしたテーブル

王への思いをつづった机

膝枕のソファ

奥に続く扉は少し開いていて寝室なのだとわかる。


『ベッド!ベッド!二人の愛を見せつけられてやるんだお!』

人の性生活を覗く気?悪趣味だなあ。

『そう言いつつ寝室に向かってくれるミズキ!好きだお!』

ま、オッサンの弱み握れるかもしれないしね。


でも寝室に足を踏み入れた途端、流れ込んできたのは恐ろしく暗いイメージだった。

『ずうん』

しまった。ここで亡くなったんだ。

とてつもない悲しみの感情が押し寄せてくる。

人払いしたここで…

王はこんな風に泣くんだ。


廊下に出て床に座り込む。

人の感情がここまで響くのは加護のせいとかもあるのかな。

『《共感力+》だお!』

愛するものを得た喜びと失った悲しみと。

胸が痛い。

壁に寄り掛かって上を見上げて息を吐き出す。

はぁ。ホントに想い合っていたんだな。



しばらくして王がやってきた。

「なぜこんなところに座り込んでいる。

椅子に座るなとは言ってないぞ?」

と言う王に

「側妃様の思い出を汚してはいけないと思いまして。」

と答える。


「殊勝なことを言う。」

と言いながら王は

のろのろと立ち上がる私に探るような目を向けた。

「読めるのか?」

「え」

「人の思考を読めるのなら物に染みついた記憶が読めても不思議は無い。」

『バレてる!』

王に嘘は通じない。


「強い感情が残った物ならいくらかのイメージが視える、それだけですが。」

と答えると

「あいつは」

と王が呟いた。

「あいつは幸せだったろうか。」

その言葉にはいつになく固い響きがあった。

「ええ。この宮は幸せな甘い思い出でむせかえりそうですよ。」

と答えると

王はついと顔を背けて呟いた。

「急なことで 何も遺さず逝ってしまったからな。」



《ごほうび》

ふいに誰かに囁かれた気がして呟く。

「ふたり出会えたことはご褒美だったのかもしれませんね。」


「すぐに取り上げられたのにか?」

王の顔が一瞬くしゃりと歪んで泣き出しそうに見えた。

「残酷なものだ。」


それでも

「出会わなければ良かったですか?」

と問えば

「いや」

と答える。


「出会えて良かった。」


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