聖女の証明
謁見の間を出ると、教皇たちが待ち構えていた。
「聖王様にお許しをいただきました。」
と王女が礼をとると
「そちらの方が本物の聖女で在らせられるのでしたら、の話ですがな。」
と教皇が言う。
世襲制で地位を得て、血統を重んじるこの教皇は
ランダムに市井に生まれる聖女をもともと軽んじていたようだ。
ミヤのことも一時民衆の目を逸らせればいいと思っているみたい。
その思考には、精霊王の信徒が聖女であるわけがないとの思いが視えた。
聖女として据えるなら無理矢理にでも改宗させる腹積もりだったようだ。
《結界魔法陣とやらの提供は利があるが
この神聖なる地に異教の神殿を建てるなど》
ブツブツと心の中で呟いている。
『でも聖王のサインはもらっちゃったもんね!』ねー^^
そのまま浄化の女神の神殿に連れて行かれる。
「どうか私めにも奇跡をお見せ願いたい。」
言葉は丁寧だけど見下すように教皇が言った。
礼拝堂には沢山の信者たちが集まって外にまで人が溢れているのが見える。
『女神様が応えてくれなかったら赤っ恥だお!』
それが狙いだろうねぇ。
まあそれも見越して仕込んではあるんだけどね。
装身具として腕に嵌めてある大きな石のついたバングルは
魔力を通せば光り輝く魔道具だそう。
光らせている間に、王女の側近たちがこっそりと具合の悪そうな信者に治癒魔法をかければ
聖女の証明は成される計画だ。
ま、女神様が応えてくれれば一番なんだけど。
聖王の依頼のことも聞きたいしできれば応えて欲しいなあ。
さあ跪いて目を閉じ祈りの姿勢をとる。
ああ、女神様っ、お願い応えて!
『しーん』
ひいい
《ふふ》
あ、女神様!
《もうちょっとじらした方が面白かったかしら》
意地悪言わないでくださいよ。
水の壁の向こうに人の声を聞くような感じで
どよめきが起こったのが遠くに聞こえる。
ちゃんと光ってるかな。
とりあえず聖王様の依頼を話して助言をもらう。
《あそこの浄化は普通の魔法じゃ無理ね。
聖女の祈りが必要よ。それも一人じゃ難しいわね。
歴代聖女の力を借りなさい。》
なるほど。
嘆きの元となった聖女様もそこにいらっしゃるのでしょうか。
《その魂はこの世界の輪廻の輪に乗ってもう生まれ変わってるわね。》
生まれ変わった聖女には前世の記憶が無くなっているはずとのこと。
《嘆きの森に残した感情を本人が受け入れて初めて救済になるわね。》
と言う。
それはどうしたら?
《そのバングルでいいわ。そこに感情が宿るようにしてあげる。》
腕のバングルが一瞬ちりっと熱を持ったように感じた。
《本人は記憶が無いから何がおこったのか話にまとめてから感情を返すといいわ。》
えっと、その本人はどこにいるのでしょうか。
《案外近くにいるかもしれないわよ。》
いたずらっぽく女神が答える。
教える気はないみたいだな。
すっと気配が遠のきそうになって慌てて女神に言う。
女神様っ、祝福をいただけると助かります!
《はいはい、大サービス!》
どよめきが地鳴りのように響く。
うまくいったみたいだな。
女神様 ありがとうございました!
愛してます!
《はぅ》
あ、女神様にも《愛してる+》効果あるんだ。
どよめきの中で目を開けると
「お認め頂けましたでしょうか。」
教皇に笑いかける王女が居た。
『ドヤァ!』
ぐ、と言葉に詰まったかに見えた教皇だったが
「精霊王国の方は魔法が使えると言いますからな。」
と食い下がった。
思ったより往生際が悪い。
「あれはまさしく女神の祝福だったぞ!」
群衆の中から大きな声がした。この声は吟遊詩人さん?
そうだそうだと賛同の声が次々に上がり、怪我や病気が治ったと言う者も現れて
教皇たちは黙るしかなくなった。




