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脳内男子がうるさくて  作者: ちぇりこ


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聖王

翌日 神聖国に入る。

通された謁見の間には壇上の玉座に10歳ほどの少年が座り、その両側に神官たちが並んでこちらを見下ろしている。

聖王と言われた少年は隣に立つ教皇をきょときょとと落ち着かない様子で見る。


王女が優雅に挨拶をした後、こちらの条件を一つずつ説明すると

「ずいぶんとそちらに都合の良い話ですな。」

教皇が言って、聖王をじろりと見た。

「まあ我々は聖王様のご決定に従うまでですが」


聖王は教皇の顔色をうかがうばかり。

その思考も感情も教皇の意向に沿うことに集中している。

これは教皇の傀儡で、話し合いは長引きそうだと思ったとき

聖王の纏う空気が変わった。


「そちらの条件をすべて飲もう。代わりに頼みがある。」


その口から発せられた言葉に教皇は気色ばんだ。

「何をっ」

と叫ぶように口を開いた教皇をひとにらみで黙らせた聖王は

王女の側近が差し出した書類にサラサラとサインをすると

教皇たちに向かって

「お前たちは席を外せ。」

と命令した。


その場の空気は重く厳しいものに変わり、

気圧されたように教皇たちはおずおずと部屋を出ていく。


神官たちがすべて去り扉が閉まると部屋の空気は穏やかなものになった。

聖王は壇上から降りて頭を下げる。

「聖女フローラリア様の保護、感謝申し上げる。」


なぜ知って、と私が言う前に王女が質問を発した。

「聖王様 そのお姿は真でございますか?」

聖王はうっすらと微笑むと感心したように言う。

「さすがに魔法に長けた国のものだな。」


この少年は聖王の遠縁にあたる只人で、今は聖王の魂が憑依しているのだと言う。

そしてその口からは神聖国の現状に対する嘆きが零れた。


神聖国では教皇その他要職の神官は全て世襲制なのだという。

「初めのころは其れで良かった。

各家庭での教育はすばらしいものだった。

だが長い間には驕りが生まれ ただ傲慢なだけの人間が権力を握るようになり

先代の教皇はとうとう私を見つけることも叶わなかった。」

と言う。

聖王として覚醒した時には既に別人が聖王として据えられていたそう。


「名乗り出なかったのですか?」

と王女が聞く。

「名乗り出たさ。

だがそこで もし私が本物なら

現聖王とその親を聖王を騙ったとして罰するという計画を聞いてしまってな。

担ぎだしたのは教皇だというのに。」


そのまま姿を消して、その後は一般人として暮らしたのだという。

「先代の聖王が死んだ時私はまだ存命であった。

すぐさま新しい聖王が担ぎ上げられたのを見て

生まれ変わりを諦めて憑依と言う形をとることにしたのだ。」


「憑依と言う形ですと不都合な事もあるのではないですか?」

と王女が聞くと

「魂の状態ではこの地から離れることは出来ない。

それゆえ頼みがある。」

と聖王は話した。

「ここより日の沈む方角に馬車で三日ほど行ったところに嘆きの森と言われている場所がある。

そこを浄化し嘆きの元となった聖女様をお救いしてほしい。」

それは その森のある地の領主に売られるように嫁がされた聖女様だそうだ。


聖王は続ける。

「聖王と言っても私には特別な力が有るわけではない。

せいぜい一時的に人を従わせることができる程度だ。

嘆きの森の聖女様をお救いする方法も私には分からなかった。」

そして私に視線を向けた。

「神の声を聴くことができる貴殿なら聖女様をお救いすることも叶うだろう。」


聖王の話によると先の聖王の代で 聖女の扱いは大きく変わったのだと言う。

その前は聖女は塔に閉じ込められることなどなく

通いで何年か聖女を務めた後は自由な身分が与えられ

それぞれが思うままこの世界を楽しんだと言う。


「聖女様は神の力の体現者として神に近い世界からお預かりした大切な魂。

それを私欲で利用するなど有ってはならないことだ。」

静かに言葉を続けるが強い怒りが滲んでいる。


「この百年、聖女様方には理不尽な不自由を強いてしまった。

前世では聖王として聖女様方をお守りすることは叶わなかったが

その行く末は見届けようと聖女様方の嫁ぎ先を訪ねて回ったのだ。」


「聖女様方はその本質ゆえか周囲に愛され幸せな人生を送っていらっしゃった。

ただ一人を除いて、な。」

聖王はふうとため息をついた。


「我が精霊王国の全力を持って対処させていただきます。」

と、王女が言った。

「ただ、お約束していただきたいことがございます。

もし今後新たな聖女様が現れましても

この契約を反故にすることは無きようお願い申し上げます。」

受け取った書類を示す。


「聖女様が新たに御生まれになることは無い。」

と聖王は話した。

「聖女様は神の力の体現者。聖王はその守護者。

守護者の存在を目印に聖女様はこの世界にいらっしゃる。

守護者が生まれていない世界に聖女様が御生まれになることは無い。」



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