引き渡し要求
昨夜あまり眠れなかったから午前中は私室でちょっと眠って
午後から学校に行こうかと準備しているところで王から招集が掛かった。
案内されたのは王城の小さな会議室のようなところだ。
第三王子とアネッサ王女、王女の後ろには側近かな?
男女が2組控えていて
あ、マクシムも居る。
案内された席に着く前に王が大声で聞いてきた。
「お前まだ童貞だよな?」
『突然の辱め!』
「いきなりなんですか。
こんな衆目環視の中で答えることじゃありませんよ。」
さすがに不快感を露わに答えると
「重要なことなんだ!」
と王が言う。
なんだろうこの凄みは。
「陛下がおっしゃりたいのは、ミヤになれるかってことなんだ。」
と第三王子が言葉を添える。
なら初めからそう言え。
「ええ、それは多分」
と答えると、とりあえずなってみろと言われ
王女の後ろに控えていた女性が一人進み出てくる。
「大丈夫、私は身持ちの固い男性好きですよ!」
耳元で囁く女性に両手を取られて向かい合う。
「いきますよ?
女の子にな~れ!」
えっと瑞希の姿瑞希の姿っと。
着地点はさっきの部屋の奥の続き部屋だった。
瑞希の姿になって奥の部屋から戻ると
感嘆の声で迎えられた。
さらに術者を変えて何回か変身してみて
男の姿に戻ったところで王が話し始めた。
「神聖国から書簡が届いた。」
王の手元には何事か綴られた紙が置いてあって
その紙の一番下には連名のサインがある。
王女がそれをみて疑問の声を上げる。
「教皇のサインと…《聖王》ですか?」
教皇が最高権力者だと思っていたけれど
実は聖王というのが最高役職なのだそうだ。
「今代の聖王も10歳を迎えて表に出てきたらしい。
まあ教皇の傀儡だろうがな。」
と、王は言う。
聖王は何世にもわたって生まれ変わっている
神聖国の象徴でもある最高権力者なんだそう。
ダライラマみたい。
生まれ変わってから10歳くらいになって前世の記憶を取り戻し
聖王として覚醒するんだそうだ。
だが王が言うには先代の聖王は見事なまでの教皇の傀儡だったという。
「それでその書簡には何と?」
と王女が聞くと王が答えた。
「聖女ミヤの引き渡し要求だ。」
神聖国では最近近くの森での魔獣被害が起こっているらしい。
魔獣がそこまで国内に近づいてくるのは有史以来初めての事で
聖女不在の影響という結論に至ったそうだ。
「ラリアさんでなく私ですか?」
と王に聞く。
「聖女フローラリアの行方については足取りがつかめず
さほど重要視もされていないようだな。」
くくっと王が笑う。
「好機だ。
神聖国に食い込むぞ。」
「えっと、私は聖女の力ありませんよ?」
と言うと
「それこそ神聖国に付け入る足掛かりだ。」
と答える。
「塔に閉じ込められるとか嫌ですよ?」
「そうはさせん。安心しろ。」
なんでも神聖国から戻ったミヤはその神聖力が認められ
マクシムの使用人では無く王宮に招かれ
王宮内の精霊王の神殿の巫女として働いていて
手放すわけにはいかない存在なのだそうだ。
へぇ初耳。
王の話す計画では
精霊王の信徒であるミヤのために神聖国に精霊王の神殿を建立し、
ミヤは年に数回そちらに滞在することにする。
こちらの交渉カードはミヤの定期的な滞在と魔獣除けの結界魔方陣を刻んだ石柱の提供と維持で
それを口実に精霊王の神殿に魔法使いを常駐させ
民衆相手に治癒魔法を施すなどの活動も行っていき
「一年もすれば聖女の存在意義など無くなる。」
そうだ。
代わりに精霊王国の存在価値が上がり発言力が高まるそう。
そんな上手くいくのかな。
「他国の武力が持ち込まれる前に速やかに入り込む。
準備しろ。」
と王の命令が下り、使節団の編成が出来次第出発することになった。
マクシムにはラリアさんの身柄の保護を強化するよう指示が下され
今回の使節団には参加しないそうだ。




