夢破れて
申し訳ないが精神的負荷がきついので、挨拶もそこそこに退出させてもらった。
『思ってたのと違う…』
一応聞いてやろう。何が?
『ハーレム…』
まさかと思うけど自分は何もしなくても相手が好き好き言ってくれて尽くしてくれて自分に気に入られるためだけに行動するとか思ってたわけじゃないよね?
自分は一切努力をしなくても浮気をしても愛され続けるなんて都合のいい事考えてないよね?そんなお花畑じゃないよね?
あ、これもまさかと思うけど金と権力で女を侍らすとか?
うわあ下品だなあ。まさかね。
あ、じゃもしかして暴力とか脅迫とかで奴隷状態にするとか?
最悪。クズだな。さすがにまさかそんなことないよね。
『ぼ、僕の愛で縛ってみせるんだお』
きっも
魔法学校の在学期間は平均二年くらいだと聞いた。
25番までの座学は基礎で、その後は専門的なものになるらしい。
未だこれといってやりたいことも見つからない状態なのに、王子と縁が出来るとか混乱してしまう。
一刻も早く働きだしたいと思っていたのに、今は学校を卒業したくなくなってきた。
「町へ行かないか?案内するよ」
アリーに誘われる。
最近煮詰まっていたし、気晴らしするのもいいかもしれない。
町を歩くと女性の視線を感じる。
脳内君がホラホラしだすのを無視する。
「やっぱり目を引く容貌だよね。」
とアリーが言う。
「アリーを見てるんじゃないか?」
「それ、嫌味にしかならないよ。」
アリーが笑う。
だがそんなことは無いと思う。
アリーだって整った容姿をしている。
優し気で親しみの持てる雰囲気も魅力だと思う。
「そういえば」
王子に言われたことを思い出す。
「私に恋人がいることになってるみたいだけど」
と言うと
「名案だったろ?女子に纏わりつかれないで良かったじゃないか」
どこまで本気か分からない、軽い調子でアリーが言う。
『僕に女子を奪われたくないんだお』
アリーの第一希望進路を考えれば無い事もないかもしれないけど
実際授業に集中できたのは良かったな。
アリーのおすすめの店で食事をすることになった。
「今度は私がおごるって言ったよね?」
とアリーに言うと
「君に払わせるわけにはいかないよ。」
と固辞する。
『卑怯な奴だお。
おごって当然だお。
ここでおごるのだってお店のお姉さんにかっこつけるつもりなんだお。』
なんかひねた見方をするようになっちゃったなあ。
『それでも僕の魅力にはかなわないお。お姉さんは僕のものだお。』
また気持ち悪いことを。
だいたいそのしゃべり方だって女性に嫌われる口調№1でしょ。
『そんなはずないお!やわらかくて親しみやすい口調だお!』
え、マジで言ってんの?
「お待たせしましたぁ」
給仕の女性が料理を運んできてくれた。
甘えたような口調もお姉さんというよりは幼く、成人したてに見える。
「ありがとう」
お礼を言って微笑みかけるとポッとほほを染める。
『惚れたな、だお』
よーし、よく見とけよ。
「おいしそうだお!」
大きな声で、はきはきと、だお口調で言う。
すっと女性の表情が消えた。
さっき頬に灯った熱が冷水を浴びせられたように引いていった。
「ごゆっくりー」
と平坦な口調で言って
踵を返し去っていく姿はこちらとの繋がりを一切断ち切ったようだ。
わかったか?これがだお効果だ。
「どうしたの?」
アリーが驚いたように聞いてくる。
「こういう口調が流行ってるって聞いてさ」
「いや止めた方がいいよ。僕が聞いても気持ち悪い」
「だよな」
自分でも気持ち悪かった。




