表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/43

4.キスって気持ちいいって言うけど、ホントかな?


 2人して雑誌のキス特集を眺める。

 隣で密着している祐真もそれに倣う。

 キスに至るまでの雰囲気作りやタイミング、サインの出し方を見ていると、ふいに手の甲に涼香の指先が触れた。

 驚き、ビクリと肩をわずかに跳ねさせた祐真は、彼女を見る。

 少しばかり瞳を潤ませ好奇の色を湛えた涼香は、悪戯を提案するかのように囁く。


「ホントかな?」

「どうだろ」

「試してみない?」

「い、いやいやそれは……さすがに……」


 いきなりの涼香の提案に驚く祐真。

 いくら涼香の好奇心が強いとはいえ、さすがにほいほいとするようなことではない。


「いいじゃん、どうせうちら初めてってわけじゃないし」

「それは……そうだけど、あれは子供の頃に試しで――んっ!?」

「ん……ちゅっ」


 さすがに小さい頃とは違うのだからと、その提案にまごついていると、ふいに唇を啄まれた。

 祐真は目を大きく見開けば、涼香はただ怪しげな笑みを浮かべ、ごちそうさまとばかりに唇を舌でぺろりと舐める。

 ぞくり、と祐真の背筋が震えた。


「しちゃったね」

「……涼香」

「っていうか今のキスっていうより、歯が当たったって感じ。ね、もっかい」

「んっ……」


 涼香は感触を確かめるように、再度祐真の唇を啄む。

 そして唇を離し、眉を寄せて呟く。


「なんか、柔らかい? 不思議な感触。気持ちがいいってもの――」


 なんだか頭がくらくらしていた。

 何かのスイッチをが入れられてしまった祐真は、わずかに手の甲に触れていた喋っている途中の涼香の手を取り、逃さないとばかりに指を絡め、今度は自分から唇を押し付けた。


「んちゅぅ、んっ…………」


 唇でちゅっと吸い付きながら、はむはむとぷっくりした涼香の下唇を味わう。

 されている時はわからなかったが、こうしてみると涼香の唇は随分と柔らかい。

 自分とは違う異性の、女の子の唇だった。

 幼い頃、好奇心からしたキスとは何もかも違った。

 まるで取り憑かれたように夢中になって、何度も呼吸も忘れて啄む。

 やがて酸素を求めて身を離せば、互いの喘ぐような荒い息が部屋に響く。


「……もぅ、いきなりなんだから。で、どう? 気持ちいい?」

「……さぁ、今一つよくわからん」

「……そっか。けど、なんだか熱くなっちゃったね」

「俺も」

「やっぱ、気持ちいいのはディープキスなのかな? 舌を絡めるやつ」

「じゃないのか? ……どうするのか、わからないけど」

「……雑誌によると、相手の唇の少し内側にそっと舌を入れる、だってさ。やってみる?」

「おぅ、やってみる……んっ」

「んんっ……んっ!?」


 にゅるりと舌を差し込んだ瞬間、涼香はビクリと肩を跳ねさせ目を大きくした。

 一瞬その反応にたじろぐものの、恐る恐る歯茎や頬の内側をなぞれば、涼香は次第にとろんと目を蕩けさせていく。

 舌先で歯をコンコンとノックすれば僅かに開き、繋いだ手をぎゅっと握ってきたのを合図に、祐真は彼女の口腔内へと侵入を果たす。


「……ぁ」


 舌先と舌先がぶつかると共に、涼香の口から何とも艶めいた声が漏れた。聞いたことのない声だった。

 祐真の中に奇妙な征服欲めいたものが埋まれ、目の前の少女を蹂躙したいという嗜虐的な欲求が生まれ、ただひたすらに舌先を絡め合う。


「ん……んっ」

「ちゅっ……ん……」


 身体はこれ以上なく熱を持ち、まるで溶け合い1つに合わさっていくかの様。

 部屋にはただぴちゃぴちゃと淫靡な水音と、喘ぐような荒い息が響く。他のことは何も考えらなかった。


「んんっ!?」

「ぷはっ!」


 その時、涼香のスマホが通知を告げる。弾かれたように互いの身を離す2人。


「だ、誰から?」

「り、りっちゃんから! 何かシュークリームがどうこうって」

「そ、そっか」

「う、うん」

「……」

「……」


 会話はそこで終わり何とも気まずくももどかしい空気が流れる。

 先ほどは完全に空気に呑み込まれてしまっていた。

 そして身体はまだ熱を持ったまま。明らかに先ほどの続きを求めている。

 ちらちらと互いの上気した顔を窺い合う。


「……さっきの凄かったね」

「……あぁ、なんかこう、すごかった」

「ゆーくん、気持ちよかった?」

「さぁ、それがわかる前に途中で終わったというか」

「雑誌だとあれ以上のこと、書いてあったね」

「抱き合ってとか、舌を激しく絡めてとかあったな」

「あはは、試すにしても誰かに見つかったらアレだなぁ」

「あぁ、晃成の部屋、鍵壊れてるし」

「……」

「……」

「じゃあ、さ……あたしの部屋、来る?」

「…………おぅ」


 その涼香の誘いに、祐真は頷くことしかできなかった。



次回、12時更新です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i372743 『てんびん』公式ツイッター
角川スニーカー文庫から発売中です
i372743
i372743
i372743
集英社ダッシュエックス文庫から発売中です
i372743
こちらはコメディです
ある朝ツン過ぎる妹が急にデレ始めたので、幼馴染と後輩に相談したら修羅場になったんだけど!?~
i372743
さっくりと読める短編です。次までの更新の繋ぎに、よかったら読んでね!
大好きな幼馴染と身体が入れ替わったあたしは、とりあえず自分を襲ってみた
TSラブコメもあるよ都子ちゃんは晶君を嫁にしたい~女子力高い幼馴染が本当の女の子になっちゃった件~

押して応援してくれると嬉しいです
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ