登校
保母さんにからかわれつつも、優香を無事に保育園に送り届け……。
学校へ向かい、綾崎さんと一緒に歩いていくが……。
俺の足りない頭は、大混乱に陥っていた。
学校までの距離はそこまでないし、ちんたらしてると誰かに見られるよね?
そもそも、明日も来るって?
いやいや、えっと……まず聞くことはなんだ?
「あのさ……どうして来たのか聞いても良いかな?」
「昨日言った、 貴方に興味があるって」
「でも、理由は言ったよね?」
「納得いかない。だから、わかるまで観察する」
「ええぇ……つまり、だから朝に訪ねて来たの?」
「そう、それもある……けど、まずは謝ろうと思って。あと、お礼がしたい」
「ん? ……何かあったっけ?」
思い返してみるけど……特に思い当たらない。
「ん……本当に無自覚」
「はは……」
「君は私の話を、忙しいのに嫌な顔しないで聞いてくれた。妹さんのお迎えがあったのに」
「あっ、昨日の話か……ん? どうして、妹の迎えがあることを……」
「ん、後をつけた」
「……はい?」
「昨日、あの後追いかけた」
……待て待て、どういうこと?
この学校一の美女が、俺の後をつけてた……?
この、どこにでもいるようなモブ高生を……自分で言って悲しくなってきた。
「そ、そうなんだ。それはわかったけど……お礼?」
「私が休んだ時、貴方が代わりにお花に水をあげたって先生が言ってたから」
……ああ、あれか。確か、先週だっけ?
いつも花に水をあげてることは知ってたから、少し気になったんだっけ。
「別に大したことしてないよ」
「そんなことない。私にとっては大事なこと。だから、お礼を言いにきた」
「うーん……わかったよ。じゃあ、受け取ることにするね」
「ん……でも、その行動原理がわからない」
「……特には考えてないかなぁ。あえて言えば、お花が可哀想かなって。あと、綾崎さんが一生懸命にやってたから気になって」
「……変な人。だったら、言えば良いのに」
「別に恩に着せたいわけじゃなかったから。ただ、自分がしたかっただけだよ」
「ますますわからない……私にはわからない……」
……そんなに考え込むことかなぁ。
俺は自分でしたいことをしてるだけだし。
結局解決しないまま……学生達と合流する。
「お、おい……」
「まじ?」
「うそー、あんな地味なので良いの?」
「もったいないねー」
……あぁ、俺の地味な学生生活が終わった。
これから、質問ぜめとかされるんだ……憂鬱。
でも、突っぱねることもできないしなぁ。
そりゃ、俺も男だし……少し嬉しい部分は否定出来ないから。
「どうしたの?」
「いや……気にならないの?」
「別に、慣れてるから」
「俺は慣れてないから!」
「大丈夫、すぐに慣れる。人は慣れる生き物。なので、明日からもよろしく」
「いや、慣れないからね? 明日もくるの? 誤魔化されないからね?」
「むぅ……なるほど、意外と強情な部分もあると」
「あの……何をメモしてるのかな?」
「生態系。どのような人かを確認するため。だから、明日も迎えに行く」
「……もう、好きにして」
「ん、そうする」
前略おふくろ様……帰ったら話すことが多そうです。
どうやら、明日からもうちに来るみたいです。
教室に入り、自分の席に着くと……。
親友であるイケメン、もとい佐々木浩二が話しかけてくる。
下品でない程度に、少し茶髪に染めたサラサラの髪。
身長も175と丁度良く、細身のマッチョでスポーツマン。
人当たりも良く、まさしくハイスペックリア充モンスターだ。
俺は中学の頃から気に入られ、何故かよくつるんでいる。
「おいおい、どういうこって?」
「どうもこうもないよ。なんか、興味を持たれたというか……好きとか告られたとかじゃないことは言っておく」
「なるほど。確かに、そんな感じには見えないな。おっけー、あとはまかしとけ」
俺が何も言わずとも、浩二が男子達と話をしに行く。
きっと、このままだと質問責めにされる俺を助けるために、自分から率先してみんなが気にしてることを聞きに来たんだろう。
正直言って助かった。
どちらかというと、俺はクラスでは浮いてるし……幸い、いじめとかはないけど。
部活も入ってないし、集まりにも参加したりしないから。
それよりも……はぁ〜明日からどうしよう?