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勇気をもらう

 食べ終わった後も話は続き……。


「んで、どうすんだ?」


「……どうするって?」


「これから眼鏡のかわい子ちゃんと三人で飯を食うのか?」


「メガネのかわい子ちゃんって……萩原さんのこと?」


「ああ、そうだよ。まあ、よくわかってないお前にも説明すると……それなりに人気ある女の子なんだぜ。静かでおとなしいって感じで、一部の男子からな」


「そ、そうなんだ。じゃあ、綾崎さんと合いそうで良かった」


「……ちょっと種類が違う気かもするが……まあ、合わないことはないかもな。んで、どうすんだ? また変なやっかみが来るかもしれないぜ?」


「うーん、どうなんだろ? というか、流れに任せただけというか……これで、俺がいなくてもいいかなって。だから、そういう心配もなくなるんじゃない?」


 多分俺に興味持ったのも、友達がいないことが一つの原因だと思うし。

 やっぱり同性の友達がいれば、そっちの方が良いと思うし……。


「……の割には浮かない顔だな?」


「……そう見える?」


「ああ、俺の目にはな。それに、誘われたらどうするんだ?」


「どうって……」


 お昼の誘いを断る?


 その瞬間——何故か、綾崎さんの悲しい顔が浮かんでくる。


 それと共に……胸の奥が痛む。


「なるほどねぇ……恋愛とかしてる場合じゃないって感じか」


「だって、勉強だってあるし……優香だって」


「おいおい……それを言い訳にしちゃ可哀想だろ? それに、それが本当の理由じゃないだろ?」


「っ……」


 浩二の言う通りだ……いつの間か、優香を言い訳にしてる。

 もちろん、優香のお世話は大変なことはあるけど、楽しいし幸せな時間だ。

 勉強だって、俺の要領が悪いだけで言い訳に過ぎない。


「……ちょっと、場所を変えるか」


「えっ?」


「ほら、食ったし行こうぜ」






 店を出て、人気のない公園に連れていかれる。


「さて、流石にあんなところじゃ聞きづらかったが……」


「な、なに?」


「あれだろ、綾崎に惹かれてだろ? でも、びびってんだろ?」


「び、びびってる?」


「おっと、惹かれてることは否定しないと……」


「……あっ」


 そ、そうだった!

 まずはそこを否定……無意識に出来なかったってことか。


「妹とか、勉強とかわかるけどよ……別に付き合えると決まったわけじゃないんだぜ?」


「わ、わかってるよ!」


「クク、なら良いけど。俺も含めて、男ってのは勘違いする生き物だからなぁ。ちょっと優しくされたら『あれ? 俺のこと好きなんじゃ?』『この子、俺にだけ優しくない?』とか」


「ぐっ……」


 流石モテ男……何一つ否定できないや。

 確かに、何処かでそんなことを思っていたような気がする。

 まだ何も始まってないのに……はぁ、情けない。


「だから、そんなのは付き合ってから悩めよ。とりあえず友達のまま遊べば良いじゃんか。無理に離れようとすることないぜ」


「……でも、悶々として寝れなかったりしたら……」


「そしたら、俺が話を聞いてやんよ」


「ても、勉強とか、お迎えがあるのは事実で……」


「勉強なら俺が教えるし、何ならお迎えだって週に一回くらいなら代わるぜ?」


 ど、どんどん逃げ道が塞がれていく……。


「ほらな、びびってんだよ……これ以上仲良くなって傷つくのを。その前に離れようってな」


「……相変わらずよく見てるなぁ」


「まあ、親友だし。俺がお節介焼くなんざ、お前くらいだよ」


「……ありがとう、浩二。うん、少し動いてみるよ」


「おう、もし振られたらカラオケでも行こうぜ。あと、学校でも困ったら言えよな」


「はは……まずは自分の気持ちを確かめないとね」


「まあ、その辺りは経験していかないわかんないしな」


 きっとここで『何でそこまでするの』って聞くのは、野暮なんだよね。


 それくらいは俺でもわかる。


 でも、ここまでお節介してもらったんだ。


 少し……踏み出してみようかな?



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