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塩対応で有名な綾崎さんはモブの俺に興味津々みたいです  作者: おとら@7シリーズ商業化


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送る

 ……だからどうしたって話だけどね。


 綾崎さんは、俺のことそういう目では見てないし。


 むしろ、そういう目で見てないから俺といれるんだと思うし。


 今まで通り、なるべく普通に接しよう……できる限り。



「こら! 息子!」

「な、なに?」

「聞いてなかったの? 遅いから駅まで送って行きなさい。車で送って行こうかと思ったけど、駅前のマンションらしいから」

「い、いいです。伊藤君には、ただでさえご迷惑をかけて……」

「ううん、送っていくよ。もちろん、迷惑じゃなければね」

「……じゃあ、お願いします」


 まあ、良いや。


 とりあえず、綾崎さんを困らせないようにしないとね。






 夜の夜道を、並んで歩く。


「今日はありがとね」

「……お礼を言うのは私……楽しかったから」

「そっか、ならよかった」

「ん……またきても良い?」

「うん、もちろん」


 涼しい風が吹く中、静かな時間が過ぎていく……。


「……何も聞かないの?」

「なんのこと?」

「その……」

「いいんじゃない、別に」

「えっ?」

「話したくなったら話せば良いんじゃないかな。もちろん、俺でよければ話を聞くから」


 泣いた理由を考えたけど、正確なことはわからない。

 情けない話だけど、女の子の気持ちもわからない。

 だったら、自分にできることをするだけだ。


「……どうして、そんなに優しくいられるの?」

「そんなことないけど……あえて言うなら、優しくされたら嬉しいからかな?」

「ん……どういう意味?」

「自分がされたら嬉しいことをしてるって感じかな……深く考えたことないけど」


 これに関しては、俺も上手く答えることができない。

 別に聖人君子ってわけでもないし、良い子ちゃんぶってるわけでもない。


「自分がされたら嬉しい……だから人に優しくする……」

「ごめんね、上手く言えなくて」

「ん、そんなことない。確かに……優しくされたら嬉しい。でも、みんながそうじゃない」


 俺を見つめるその目は……とても悲しい色をしていた。

 そして、その意味も……何となくわかる。


「そうかもね。良いことをしたから……優しくしたからといって、それが返ってくるわけでもないし」

「ん……見てると君は損ばかりしてる。私の代わりに水をあげたこともそう。あの時も、お迎えがあったんでしょ?」

「まあね。はは……あの時は走ったよ。でも、損はしてないかな」

「えっ?」

「その……君と友達になれたから」


 あの行動を起こさなければ、こうして話すこともなかっただろうし。

 優香が、あんなに喜ぶこともなかった。


「…………」

「あ、あれ? 綾崎さん?」


 か、固まってしまったぞ?

 やっぱり、くさかったかなぁ。

 無表情だから、どういう反応か読みとれないや。


「……帰る!」

「えっ!? ちょっ!?」

「もう平気!」


 そう言い、駅まで走っていく……。


 確かに、もう駅は見えていた。


 俺は立ち止まり、彼女が駅の中に入るのを確認し……。


「どういう反応だったんだ?」


 ひかれた? 嬉しかった? くさかった?


 悶々としながら……家路につくのだった。

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