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今更自己紹介?

 ……どうしよう?


 思いっきり目立ってる……!


 孤高の存在である彼女が、異性の手を引いて歩いている。


 そりゃ……みんな見るよなぁ。


「どうしたの? 早く行こう」


「いや、どうしたの?はこっちのセリフなんだけど……」


「私は君と早く帰りたい」


「いや、そういうことを聞いてるんじゃなくてね?」


「うん、とりあえず帰ろう」


「人の話を聞いて!?」


 結局そのまま、校門の外に出るのだった。


 明日からの学校が……憂鬱だなぁ。






 すると……途中で彼女が手を離す。


 俺は……なにを残念に思っているんだよ。


「うん、この辺りでいいかな」


「えっと……」


「視線がめんどくさかったから。ここなら、もう学校の人は少ない」


 周りを見ると……確かに、通学路から少し外れた場所のようだ。


「なるほど……それで、どういった意図で? 一応、急いでるんだけど……」


「君に興味がある。大丈夫、すぐに終わるから」


 ……落ち着け、これはどう見ても好きとかいうアレじゃない。

 何か、不可思議な生き物を見る目だ。

 ……というか、俺もそんな感じなんだけど。


「コホン! それは、どういう意味かな?」

「……立ちっぱなしは疲れる……非効率だけど仕方ない」

「ちょっ!?」


 俺は再び手を引かれ、近くにある公園のベンチに連れて行かれる。


「ここでいいかな」

「いや、近いんだけど?」


 さっきから良い匂いするし……。

 隠キャってほどじゃないけど、女の子と接する機会なんか滅多にないし。


「問題ない。私は気にしないから」

「ハァ……もう好きにして」

「うん、そうする」


 ……めちゃくちゃマイペースな人だなぁ。

 ていうか、こんなに喋るところ見るの初めてだ。


「私のこと知ってる?」

「へっ? も、もちろん。もう同じクラスになってから二週間経ってるし……」

「そう。でも、一応自己紹介する。綾崎麗華、十七歳。誕生日は八月一日。趣味は映画鑑賞や読書に料理。得意なことは勉強と運動。身長167センチでスリーサイズは上から……」


 ……はい!? 待ったァァァ!


「ストップ——ストッープ!」

「どうしたの?」

「い、いや、こっちの台詞なんだけど……」

「カップ数の方が良かった? それならEカップ」


 その言葉に……思わず視線が下に下がる。

 そこには見事な双丘があった……お胸と言う名の。

 うわぁ……こんなアングルで見たの初めてだ……。


「胸が好き?」

「はい!?」

「なるほど、伊藤君は胸が好きと……」

「違う違う! いや、違くないけど! 今のは『はい』ではなく疑問の『はい?』だから!」

「むぅ……難しい」


 あれぇ? 綾崎さんって、こんな子だったの?

 大人っぽくて知的なイメージだったけど……意外と子供みたいな表情するんだ。


「まあ、良い。はい、伊藤君も」

「な、何が?」

「自己紹介」


 その目は有無を言わせずといったところだ。

 自己紹介するまで帰れそうにない。


「はぁ……えっと、伊藤和馬、年齢は十七歳で誕生日は六月十日。趣味はゲームと読書、映画も見るかな。得意なことは……ないかなぁ」

「そう。ゲーム以外は一緒」

「いや、多分種類が違うから。読んでるのは漫画とか、ライトノベルってやつだし」


 俺が読むのはラノベで、教室で彼女が読んでいるのはそういうものではなかった。

 芥川賞を取るような作品や、映画化されている作品だった気がする。


「そう……ん、とりあえずわかった。これにて自己紹介終了」

「ほっ……良かった。これで本題に入れるね」


 こうしている間にも、時間は経っている。

 早く家に帰らないと……。


「それで……何が目的かな?」

「貴方、今朝何してた?」

「質問の答えになってない……」

「良いから答えて」

「何というマイペース……」

「褒められると照れる」

「いや、褒めてないから」


 無表情で淡々と照れるとか……不思議な人だなぁ。


 さて、今朝の俺は……何か特別なことをしてたっけ?


 夕焼けの空を見上げて、俺は今日の出来事を思い出してみる……。

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