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塩対応で有名な綾崎さんはモブの俺に興味津々みたいです  作者: おとら@9シリーズ商業化


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約束

 お昼ご飯を食べ終え……。


 春風が吹く中、二人黙って空を見上げる。


 ……なんか、良いなぁ。


 こう……女子ってずっと喋ってるイメージがあったから。


 こうして黙ってても平気な子もいるんだね。


 何より、気がつかないうちに……余裕を失くしてた気がする。


 勉強のこと、優香のこと……もっと気楽にしないとダメだよね。




「ありがとね、綾崎さん」


「……何かした?」


「はは……うん、お弁当作ってくれたよ。あと、気が楽になったかも」


「ん……よくわからないけど……なら良い」


「何かあれば言ってね。俺にできることならお礼したいし」


「……お家に行きたい」


「……ふぁ!?」


 ど、どういう意味!?

 お、お、落ちつけ! 自分!


「また変な顔」


「……否定できないや。そ、それで、どういうことかな?」


「……優香ちゃんと遊ぶ」


 危ない危ない……また、変な勘違いするところだった。


「そういうことね。うん、良いよ。きっと優香も喜ぶよ」


「じゃあ、今日の放課後いく」


「い、いや、それはちょっと……」


 部屋の中とか掃除してないし……。

 いやいや! 俺の部屋に入るわけないじゃん!


「顔赤い? 具合悪いの?」


「うわっ!?」


 お、おでこに手が……!


「ん、どんどん熱くなってる……今日は我慢する」


「へ、平気だから! じゃ、じゃあ、放課後!」


 あまりの恥ずかしさに、屋上から逃走する。


 ……午後の授業が集中できなかったのは言うまでもありません。






 そして、放課後を迎え……。


 俺は、あることに気がつく。


 あれ? これって……一緒に帰るパターン?


 それとも、一度家に帰ってから……。


「伊藤君、帰ろう」


「へっ?」


「一緒に帰る。今日、家に行くって約束した」


 その瞬間——あれだけ騒がしかったクラスから音が消えた。


「ちょっと……誤解を招くよ!」


「ん、何も嘘ついてない。今日、伊藤君の家に行くって言った。君も、きて良いって……嘘だった?」


「嘘じゃないけど……ああ! もう! とりあえず行こう!」


 このままでは、俺の平穏な日々が終わってしまうので……。


 彼女の手を引いて、教室を飛び出すのだった。




 ◇



 今日は、朝からおかしい。


 昨日はあんまり寝れなかったし、遅くまで料理の本とか見てしまった。


 男の人に料理作るのなんか初めてだったから。


 やるからには、きちんとしたもの作りたい。


 ……あれ? そもそも、何で作ろうと思ったのだろう?







 何とかいつも通りに起きて……台所に立つ。


「男の人の好きな具……唐揚げって書いてあった」


 でも、野菜も必要。

 量も、私より多くないと。


「結局……何で作ろうと思ったんだろう?」


 昨日、伊藤君がパンを食べてて……。


「それじゃない……その後に、私のお弁当を美味しそうって……すごいねって褒めてくれたから?」


 だから、食べて欲しいって思った?


「わからない……誰にも言われたことないから」


 綺麗とか、可愛いとか、頭が良いとか……そういうのはあるけど。


「むぅ……難しい」


 こういう時、誰に教えてもらえるんだろう?


「母親? 父親? ……どっちもいない」


 あの二人に会わなくなって、もうすぐ一年くらい?

 高校生になったから、義務教育は終わったらしい。

 そしたら、二人は家から出て行った……私だけを残して。


「そもそも、会話らしい会話もしたことない」


 物心ついた時には、父と母の間で会話をしてるのを見たことがない。

 ……見たのは、離婚という話し合いの時と、私をどうするかの時だけだった。


「……別に良い、今は関係ない」


 もしくは……友達?

 それも、いたことないからわからない。

 みんなから、不気味だって避けられてたから。


「あれ? 伊藤君は……友達?」


 ……なんか、違う気がする。

 でも、相談には乗ってくれるかな?


「あっ——早く作らないと」


 伊藤君の面白い顔を思い出しながら、お弁当作りを始める。


 すると……不思議と、暗い気持ちが消えていったような気がした。

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