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俺の異世界生活はこれで良い  作者: 脱出
第2章 中級冒険者は少女を救う
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第26話 中級冒険者達はモンスターの大群と戦う~決着~

よろしくお願いします!


「――ご主人! 下級冒険者班優勢! 左翼2,3班には余裕がありそうです!」

「了解。残っている下級モンスターを誘導するっ」


 ロクゴウの援護をしつつ、離れた戦場への援護を行う。余裕がある班に、戦場に残っている下級モンスターの対処を任せる。

 そのために風魔法で対象のモンスターを追い立て、所定の位置へ移動させる。

 班員へ指示するために浮遊魔法で、指示文書を刻んだ石を飛ばす。

 更に援護のために魔力を込めた攻撃用の浮遊弾。回復魔法を込めた浮遊弾を送る。


「ご主人ッ。正面から攻撃来ますッ!」


 正面からヒュドラが放つ火の玉が迫ってきた。

 後ろに飛んで間一髪に躱す。


「あっぶな……!」


 正面の戦闘。後方の戦闘援護。戦況の把握。

 ・・・・・・いや、ほんと。死にそうになる。

 ただでさえ魔法の連続使用のせいで頭痛がするのに、考えることも多くて脳がオーバーヒートしそうだ。


「アグリッ」

「何です!」

「俺、この戦いが終わったら長めの休暇取るんだッ!」

「奇遇ですね! 私も温泉旅行にでも行きたい気分です!」


 軽口をたたきながら、俺は剣を振るう。ヒュドラの体に切りつけるが、大したダメージは与えられない。しかしヒュドラの注意を引くことができる。

 アルタ・ヒュドラの思考は機械的かつ、複雑な思考はできない。

 基本的に『攻撃』には全て反応する。

 俺のしょぼい攻撃なんか無視した方が得策なのに、わざわざ迎撃しようとする。

 俺への注意が向いた間に、アグリがロクゴウを回復させ、再びロクゴウは攻撃を開始する。


「ギーク! 離れていろ!」


 ロクゴウの砲撃がヒュドラに直撃する。

 攻撃をくらった箇所の再生が始まるものの、その速度は明らかに落ちている。


「よしっ。あと一押し……!」


 そのとき。背後からモンスターの叫び声が聞こえた。

 振り返れば巨大な狼の中級モンスターが吹っ飛び、地面にたたきつけられていた。

 側には槍を持ったメイナさんが立っていた。

 メイナさんは槍についた血糊を払い、言った。


「中級モンスターは全て片付けたぞ。犠牲は一人も出ていない」

「マジすか。流石です」


 不利な戦力差を覆し犠牲を出さずに勝ったのか。

 メイナさんは単騎でモンスターを2体仕留め、更に周りの援護もしていたようだ。

 ……これ以上の権力はいらないということで昇進を断っているが、戦闘力なら確実に上級に入る人だ。強さは俺と比べものにならない。

 メイナさんはアグリに回復してもらったあと、再び槍を構える。


「アタシはお前達の方に加勢する……踏ん張れよ」

「了解ッ」


 俺も気合いを入れ直した。

 

 ――ロクゴウの砲撃に併せてメイナさんも攻撃を放つ。槍がヒュドラの首を切り落とした。再生が始まらず、八つある内の一つの首が地面に切り落とされた。

 ヒュドラは叫び声を上げて火の玉を放つ。

 アグリが魔法で障壁を張り、敵からの攻撃を防ぐ。

 俺は浮遊魔法でロクゴウとメイナさんを浮かし、それぞれを攻撃に集中できるポイントまで飛ばす。他にも浮遊弾で攻撃し続け、ヒュドラの注意をそらす……俺の役割ちょっとしょぼいな。まぁ良いか。

 遠くから石が飛んできて、俺の側で止まる。伝言用の浮遊弾で下級冒険者班からのメッセージが刻まれていた。


「――下級モンスターも殲滅完了しましたッ! 誰も犠牲は出ていません!」


周囲へ警戒と負傷者の手当をするよう指令を書いた浮遊弾を下級冒険者班へと飛ばす。


 ――あと少しだ。


 ヒュドラの魔法がロクゴウを襲う。俺は浮遊魔法でロクゴウを浮かせて、攻撃を回避させる。


「すまないっ。助かった」

「大丈夫だ! ロクゴウは攻撃に専念してくれっ!」


 ロクゴウは自身の魔力を魔弾に変えて、銃から放つ。疲労も相当のものだろう――が、


「あと少しだッ!」


 犠牲を出さずに襲撃を乗り切る。

 勇者がパーミティを倒す。

 リルが生け贄になる必要なんてなかったのだと証明する。


「はぁぁぁ!」


 ロクゴウの砲撃がヒュドラに直撃する。

 メイナさんの槍がヒュドラを貫く。


 二人を攻撃から庇いながら、俺も剣を振るう。


 …………………

 

 ふと、思った。

 やはり俺は強くないのだ。

 それなりに腕は立つが、ヒュドラに致命的なダメージを与えられない。最終決戦の場面で援護しかできない。

 目の前の問題に対して、一人で、かつ完璧に対処できる力を持っていない。

 リルの件もそうだ。

 犠牲が出たとしても、誰かが死んでもリルのせいではないのだ。彼女は何一つ悪くない。

 しかし現実で死者が出れば、俺の言葉なんか意味はなくなり、少女は自分を責め続ける。

 ……本当は。

 例え誰か死んでも、リルが自分は何一つ悪くないと思える場所を与えたい。生きているだけで許され、何かを証明しなくても存在を肯定される場所を与えられたら良いのに。

 でも俺はそんな方法を思いつけないし、与えられる力も勇気もない。

 無力な人間だ。


 けど無力な人間でも、今はやれることがある。

 まだ少女が再び笑える、幸せに生きられる方法が残っている。

 犠牲を出さずに戦いに勝利する。生け贄の必要性を否定する。

 

 俺は異世界転生した。二度目の人生だ。

 どうせ二度目の人生を生きるのなら、不幸な光景より幸せな光景を見たい。

 二度目の人生を生きるのなら、そっちの方が良い。



 ヒュドラの動きが鈍る。

 再生は始まっていない。


「決めるぞ! ロクゴウ!」


 俺の言葉にロクゴウは頷く。

 ヒュドラは再び火魔法を放つ。炎を躱すために、俺は浮遊魔法でロクゴウと俺の体を浮かせた。

 上空。正面。

 ヒュドラの顔の一つが俺たちに向く。

 火を放つ。

 もう一度、俺は浮遊魔法を発動し、空中で回避する。


「行け!」


 ロクゴウは頷き、回転銃のグリップを握った。


「――最大出力――爆ぜろッ!!」


 轟音が鳴り響き、回転銃から魔弾が放たれ、ヒュドラに直撃する。


「ガアアアアアアアアア!!」


 魔弾はヒュドラの体を焼き切り、爆発した。

 

 ロクゴウと俺は風圧で吹っ飛ぶ。地面直前でなんとか浮遊魔法を発動させたので、衝突は避けた。

 体を起こしてヒュドラの方を見る。

 アルタ・ヒュドラの体はバラバラになって、機能を停止させていた。


「……終わった……」


 ヒュドラの討伐が完了した。

 そのことを伝える浮遊弾を後方に飛ばす。


 疲れた。

 俺はそのまま地面に仰向けに寝転がった。

 冬の済んだ夜空が浮かんでいる。

 

 アグリが近づいてきて、俺の顔を覗き込む。


「お疲れ様です。ご主人」

「お疲れ。ロクゴウ達は大丈夫か?」

「疲れているけれど傷はないですよ。誰も死んでいません……よく頑張りましたね」

「ああ。ほんとだ」


 誰も死ななかった。

 俺たちの勝ちだ。


 俺はぐっと拳を上に上げた。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

次回で完結の予定です。

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