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俺の異世界生活はこれで良い  作者: 脱出
第2章 中級冒険者は少女を救う
24/27

第24話 中級冒険者達はモンスターの大群と戦う~開戦~

投稿期間が空いてしまい申し訳ございません。

忙しかったため投稿時間がとれませんでした。

残りは今回の話も含めて戦闘3話、完結話の予定です。

よろしくお願いいたします。

 

 《アルタ・ヒュドラ》を中心にしたモンスターの群れは、木々を倒し、森を抜け、リューベンへと今まさに迫っていた。俺たちはモンスターを迎え撃つために、森と街を挟んだ平野に陣を敷いた。森の中では視野が狭くなり、お互いの連携も取りづらいからだ。

 布陣は主に三つに分かれる。

 

 まず一つ目。敵の下級モンスターを迎撃する陣営。

 中級7等級の冒険者達を筆頭に、他の低級冒険者および衛兵を含む総勢60名で三人一組の班を作成した。計20個の班は扇状に配置され、常に両隣の班を視界に収められるよう展開している。基本的には低級モンスターの相手をする。班一つがモンスター一匹を相手取るのが理想的だが、敵側の低級モンスターは30匹もいる。

 戦線が崩壊しないよう上手くモンスターを誘導しなければならない。


 二つ目。中級モンスターを迎撃する陣営。

 6等級以上の中級冒険者達が、他の中級モンスター達を相手取る。

 ……正直言ってここが一番きつい。こちらの戦力としては6等級が5人、5等級が3人の計8名。俺は全体のサポートに回るので実質7名。敵の中級モンスターは8体。戦力からして相手が上回っているのだ。中級以上のモンスターともなれば、厄介な魔法を持つ個体も多い。

 それでもメイナさんは「問題ない」と言ってくれた。

 俺も全力でサポートしなければならない。


 そして三つ目。

 唯一の上級冒険者であるロクゴウのみの陣営だ。

 彼女は敵側の上級モンスター《アルタ・ヒュドラ》を迎撃する。彼女の戦いによって戦況は決定されると言っても過言ではない。

 ヒュドラの強さは――正直言ってロクゴウを除いた俺たちの69名の総戦力で、ようやく釣り合いが取れるレベルだ。それも数値上の話であり、実際に戦うことになれば俺たちは壊滅するだろう。奴の全体魔法により一瞬で下級冒険者は焼き払われ、中級冒険者も善戦してもヒュドラより先に体力が尽きる。それほどの相手だ。

 そのヒュドラを一人で抑えられるロクゴウも十分に化け物なのだが。

 

 ――以上が俺たちの布陣となる。布陣が一つでも壊滅すれば、敵が他の陣営へと進み総崩れになってしまう恐れがあった。布陣の壊滅を回避するためには敵側の戦力を誘導しなければならない。

 その誘導は俺とアグリが担う。


「――来ますよ」


 隣のアグリがつぶやく。

 森から一匹の狼が飛び出てきた。下級モンスター《イビル・ウルフ》。それに続いて下級モンスター、中級モンスターが飛び出してきた。

 そして巨大な蛇が現れる。とぐろを巻いた体勢でも高さ40mくらいはありそうだ。八つの蛇の顔が俺たちを睨む。《アルタ・ヒュドラ》は不気味に叫んだ。


「――行くぞ!! 開戦だっ!」


 メイナさんも蛇に負けずと叫ぶ。冒険者達の雄叫びで地面が震えた。

 同時に俺は、アグリとロクゴウを連れて、飛んだ。


 浮遊魔法で体を浮かせ、敵陣の本陣、ヒュドラの真ん前まで飛ぶ。

 敵はヒュドラを中心にモンスターが円状に展開しているので、そのど真ん中に降り立った。

 まず反応したのはヒュドラだった。

 ――近くに来たから分かる実力差。気圧されて奴が放つ魔法で八つ裂きにされるイメージが浮かぶ。


 しかし。

 俺の隣でガタンと、大きな機械音がなった。

 

「――『起動せよ 断罪の射手』――」


 ロクゴウが自身の武器を展開した。

 ローブから除く左腕が武器に換装され――この異世界にない言葉だが適切な表現が思いつかないので使用する――『回転式機関砲』となった。腕よりも長く、重厚感がある鉄の銃身。七つある銃口。

 ロクゴウは右腕で銃を支えつつ、グリップに手をかける。

 瞬間、爆音と閃光。

魔法で体を守っていなかったら、鼓膜が破けて失神していただろう。

 『魔弾の射手』と呼ばれる古代兵器。かつての英雄が使ったとされる兵器であり、ソレを勇者が改造しロクゴウに持たせた。銃から放たれる高密度の魔弾(エネルギー弾)の7連射。その威力は地面を割り、大陸を真っ二つにしたと聞く。


 攻撃をくらったヒュドラの体は大きく裂かれ、動きを停止した。

 その隙に俺とアグリは動く。 

 まずアグリが魔法を唱えた。


「――『錯乱せよ』」 

周囲のモンスターが俺たちに攻撃を仕掛ける前に、アグリがまず『錯乱』魔法を周囲に放つ。この魔法により下級モンスター達は統率力を失う。


「――『意識を委ねよ』」

 次にアグリは『催眠』魔法を放つ。アグリの催眠魔法は人に特化した魔法だが、モンスターにも十分に効く。操れなくても無意識に働きかけて、移動方向を誘導することはできる。


 モンスター達の動きが鈍った。

 次は俺の番だ。

  

「――『浮遊弾』ッ」


 俺は浮遊させ、魔力を込めた石や瓦礫を下級モンスターにぶつける。大したダメージを与えられないが、思考力が低下したモンスターは攻撃に対して『防御』ではなく『回避』を選ぶ傾向にある。浮遊弾の乱れ打ちから逃げるために、下級モンスター達は移動を開始した。

 

「ご主人。モンスターの魔力反応を共有いたします」


 アグリの言葉に俺は頷く。

 アグリは優れた魔力感知能力を持ち、魔力を持つモンスターの位置情報を把握できている。アグリの契約者である俺も同じ位置情報を脳内で共有できた。

 モンスターの位置を把握し、所定の位置まで誘導する。


「下級モンスター30体の内、23体を下級冒険者陣営に誘導。7体は『大旋風』で攪乱させ陣営から引き離しつつ各個撃破――!」


 下級冒険者の班は全てで20班。お互いをカバーしつつ、下級モンスターを相手取る。

 また残ったモンスターは魔法の竜巻内に閉じ込めることで、戦線に関わらせないようにする。


 次は中級モンスター達だ。

 催眠魔法も効きにくく、俺の浮遊弾にも動じない。

 しかし下級モンスター達が移動し、ヒュドラは動きを停止したことにより、中級モンスター達も孤立していた。その隙にメイナさん達が攻勢をしかける。

 見れば既にメイナさん達は戦闘を開始していた。


「――誘導完了っ」

 

 俺は大きめの石を幾つか選び、その石ころに風魔法で文字を刻む。現在の状況を書き込み、それを各陣営へと浮遊魔法で飛ばした。

 俺の浮遊魔法をかけた石を他の班員にも渡している。文字を刻み、石に仕掛けられた魔法を起動させれば、指定した方向へと飛ばせることができる。これによって互いの陣営への情報伝達が可能となっている。

 ……敵がモンスターのみだから出来た戦法だ。人語を理解できる敵がいたら一発でアウトだからな。


「ご主人。魔力を回復します」

「助かる」


 アグリに俺の魔力を回復させてもらう。

 ……俺の魔力にも限りがある。常に浮遊弾で下級冒険者達の援護も行う必要もあり、魔力の消費は激しい。蓄えていた魔石を使い、アグリに自身の魔力(MP)も回復してもらう。

 また魔力切れがなくても、魔法を使い続けることによる疲労はどうしようもない。既に頭が割れそうだった。


「ギーク。悪いが、休んでいる暇はなさそうだ」


 先頭にいるロクゴウが声をかける。

 アルタ・ヒュドラの傷は再生を始めていた。


「ああ。問題ない」


 まったくキツい仕事だ。


「頑張ってくださいね。ご主人。勝てたら褒めてあげますよ」


 と隣のアグリが笑った。

 俺も笑った。


ここまで呼んでいただきありがとうございます。

完結までよろしくお願いいたします!

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