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俺の異世界生活はこれで良い  作者: 脱出
第2章 中級冒険者は少女を救う
23/27

第23話 中級冒険者達は決戦に備える

よろしくお願いします。

 

 俺たちが真実を知った日。

 リューベンの北東部で大量のモンスターの召喚反応が検知された。

 街の到達まで三日ほどと予想された。

冒険者の動きは迅速だったと思う。


 メイナさん達『紅の砦』は襲撃に備えていてくれたからだ。他の冒険者やリューベンの領主に話をつけて、冒険者と衛兵の合同部隊が結成した。モンスターの出現と同時に、迎撃・防衛・避難誘導の3部隊に分かれ、半日ほどで準備を終えることができた。


 俺たちは『紅の砦』の拠点で迎撃作戦を練る。偵察部隊からの報告で敵兵力の分析を始める。

「言われていた本を図書館から借りてきましたよ」


 と団員から古い本を受け取る。大昔のモンスターを収録した図鑑で、偵察部隊の報告書と照らし合わせる。

 九つの首を持つ蛇が描かれた頁を見つけ、広げる。


「モンスターの群れの中には上級モンスターもいます。おそらく1000年前の人界侵攻作戦に用いられたモンスタ―《アルタ・ヒュドラ》でしょう」


 神話級のモンスター《ヒュドラ》を兵器として運用する試みとして、1000年前に悪魔の手により複数製造された魔法生物。

 1000年前の戦いで勇者により全て破壊されたと記録されていたが、生き残った個体がいたのだろうか?

 俺の話を聞いて周りの冒険者達がざわめく。


「一匹で国を滅ぼした魔物と聞いたぞ。そんな化け物がいて勝てるのか」

「勝てますよ。敵の兵力として上級モンスターはコイツ一匹だけです。こちらには勇者パーティーのロクゴウがいます」


 みんな一斉にロクゴウの方を見る。ロクゴウは頷いた。


「ヒュドラはロクゴウが抑える。互いの戦闘能力を分析したところロクゴウ単騎で十分に倒せる相手だ」


 おぉ、と周りの歓声が上がる。


「だがロクゴウはヒュドラの相手に集中しなければならない。他のモンスターの相手はできない、と考えてほしい」

「彼女の言う通りです。問題になるのはむしろ周りにいる中級~下級のモンスターです。単純に数が多い」

「どうすれば良い?」

「……こちらは3人一組のパーティで一匹ずつ対処に当たります。そのためにも敵側は連携を作らず、各個撃破の状況を作ることが重要となっていきます。俺とアグリは敵の攪乱に当たり、中級モンスター達の対処はメイナさん達が中心に対処します。班員を改めて鳴り直すので、皆さんの武器や魔法、使用するスキルをもう一度確認させてください――」


 作戦を何度も練り直し、メンバーが共有する情報を統一する。

 全ての準備を終えた頃には夜になっていた。



 外で休んでいるとアグリがやってきた。


「雪降っていますけど寒くないですか」

「頭使って疲れたから冷やしてんの」


 実際、戦う前だというのにけっこう疲れた。


「今回の作戦。結局、ご主人の負担が一番大きくないですか? ほとんど一人で戦場全体を把握する必要が出てくる」

「そうだな。でもアグリの負担も大きいぞ。モンスターの攪乱と誘導については、お前の『催眠』魔法がキモになってくるし」

「構いませんよ。私はご主人の使い魔ですので存分にお使いください」

「気になるのは元凶である《パーミティ》だが、奴は今回の戦いには出てこないだろう。俺たちでは打つ手がない」

「ですね。この件についてはロクゴウさんを信じましょう」


 ロクゴウから先ほど一つの作戦を相談された。上手くいけば街を防衛すると同時に、パーミティを討つこともできる。もっとも俺たちでは為しえない作戦なので、ロクゴウ達を当てにするしかない。


 二人して並んで立つ。相も変わらず雪は降り続いている。

 ……雪のせいで視界は悪くなり、足も取られて動きにくくなる。寒さのせいで兵士の動きも低下してしまうだろうな、とつい戦いのついて考えてしまう。

参ったな。休まらない。


「ご主人。一つ聞いても良いです?」

「あん? 良いけど」

「今回の戦いは大規模なものになります。ご主人は平凡な生活を望んでいたのに、不満はないのですか?」

「別にないよ。リルのために出来ることがあってむしろ嬉しい」


 俺の異世界生活の目標はあくまで後悔せずに生きること。

 こんな大規模な戦いに参加なんて望んではいなかった。

 しかし少女を見捨てて逃げてしまえば、絶対に後悔するだろう。

 その後悔を一生抱えて『二度目の人生』を生きるなんて、考えただけでぞっとする。


「折角の二度目の人生なんだ。誰かを助けることができる人生の方が……」

「人生の方が?」

「気分が良い」


 戦う理由も生きる理由もそんなもんだ。

 俺は結局、平凡な人間だ。特別な使命もなく。英雄的な思考も持ち合わせていない。

 今できることをやる、そういう生き方しか選べない。


「なるほど。それでこそ私のご主人ですね。惚れ直しますよ」

「せやろ。ま、お互い頑張ろうぜ」


 作戦は十分に練った。

 ロクゴウがいる以上、多くの犠牲を出しながらも勝つことは出来る。

 しかし今回に限り『そんな勝ち方』ではだめだ。


 リルの今後の人生を守るためにも一人の犠牲者を出してはならない。一人でも死んでしまえば少女は『自分が生け贄になっていれば』と自分を責めるだろう。

 一人も死なせてはならない。


「ご主人」


 とアグリは口を開いた。


「もし今回の作戦が失敗しても、もし仮にリルさんを守れなくても――少なくとも私はご主人達が頑張ったことを覚えていますよ。だから安心してください」


 と悪魔は笑った。

 俺も笑う。


「分かった。ありがとうな」


 気休めでも十分に助かる。

 いつの間にか随分と気分は楽になっていた。

 早いとこ終わらして、またリル達と遊びにでも行きたいものだ、と俺は思った。


 ――もうすぐ戦いが始まる。



 敵戦力:

 上級モンスター:1アルタ・ヒュドラ

 中級モンスター:6体。

 下級モンスター:30体


 計:37体。


 味方戦力(モンスター迎撃班)

 上2等級:1ロクゴウ

中5等級:3人(メイナ、他2人)

 中6等級:5人(ギーク、他3人)

 中7等級:10人

 中級モンスター:1アグリ

 下8~10等級:20人

 他:領主の衛兵など30人

 計:70人。


 勝利条件:モンスターの殲滅


 ギーク達の勝利条件:犠牲者0で勝利


本日の更新はここまでとなります。

読んでいただきありがとうございました。

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