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俺の異世界生活はこれで良い  作者: 脱出
第2章 中級冒険者は少女を救う
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第16話 中級冒険者は自動人形から依頼を受ける

よろしくお願いします。

いいね、ブックマーク、評価もありがとうございます。



「対象は人族の女性。年齢は10歳。この少女の精神状態の回復をお願いしたい」

というのが自動人形ロクゴウの依頼内容だった。意味が分からない。

 彼女――という呼称が相応しいのか分からないが――彼女の説明は要領を得ない。仕方がないので最初から話を聞くことにした。

あと頼み込んでロクゴウにもソファに座ってもらうことにした。


「ではギーク・エリード……さん」

「ギークで良いですよ。ロクゴウさん」

「感謝する。識別名称に余計な情報を追加する慣習はなかなかなじまない。ロクゴウのこともロクゴウで構わない。堅苦しい話し方も結構だ」

「……分かった」


 相手は目上だが、今回は言う通りに従おう。彼女相手なら砕けた話し方の方が通じやすい気もした。


「ではギーク。『ナムアの想宮』を知っているだろうか? 一月前にロクゴウの主人である勇者(マスター)が解放したダンジョンのことだ」


 俺は頷く。

 ナムアの相宮。俺たちが住む西大陸の南方にあったダンジョン。

 遙か昔、凶悪な呼ばれる魔女によって一つの国が滅んだ。その国は魔女が支配する地域となり、魔女が使役するモンスターが跋扈するダンジョンとなった。

 だが一ヶ月前、勇者が魔女を討ったことにより、その地域は魔女の支配から開放された。今は開拓作業が進められていると聞く。


「ダンジョンの隠し部屋には人族の少女が囚われていた。その少女は殆どの記憶を失っていた」

「・・・・・・その子の記憶はどれくらい残っているんだ?」

「自分のリルという名前と、《リューベン》の街の景色だけだ。彼女はロクゴウ達が保護することになった。ここまでで何か質問はあるか?」


 ロクゴウの問いに、気になったことを尋ねてみる。


「いちおう聞いておきたいんだけど……、その子供に何か仕掛けられている可能性はあるか? 遠隔で起動する魔法が体内に仕込まれていたりとか」


 悪魔崇拝者たちが自らのメッセージを発信するために使っていた手法だ。命を代償にして魔界からのゲートを開かせる魔法を、一定時間経過後に発動するよう子供の体内にしかける。その子供の記憶を失わせ大きな都市などに放り込む。そして保護された瞬間に魔法を発動させる。

 胸糞悪い話だがいちおう確認しておかなければならない。ダンジョンにいた記憶喪失の少女ってのは怪し過ぎる。


「ロクゴウ達も様々なケースを想定した。勇者を含めた上級魔術師が少女の検査を行った結果、少女には何も仕掛けられておらず危険度は低いと判断した。特別な力も持たない人族の少女だと考えられる」

「なるほど」


 俺より優秀な専門家が検査をしているのなら、本当に少女自体の危険度は低いのだろう。

 

「そのリルって子の記憶の手がかりはリューベンの景色以外にはないのか?」

「リルの側に一冊の手記が残されていた。重要書類として一週間前までは王国の管轄下にあったが、閲覧許可が出たため写しをロクゴウは所持している・・・・・・。リルには身の覚えのない手記で、未知の言語が用いられている」


 と俺にも手記の写しを見せてくれた。本当に見たことない言葉、というか意味不明な記号が不規則に書かれている。本当に言語なのかも怪しいレベルだ。


「一週間前からロクゴウの方でも解読作業を開始したが難航している」

「だろうな。悪いけど解読については俺も手伝えそうにない」


 この世界には幾つかの言語があるが、そのどれにも当てはまらない。

 ロクゴウは話を続ける。


勇者(マスター)達はまた別のダンジョンへ向かわなければならず、リルは連れて行かなかった。そこでロクゴウがリルを預かることになり、彼女の記憶の手がかりを求めてリューベンまで来たのだ」

「事情は大体分かった。もしかして依頼ってのは、リルって子の記憶の手掛かりを探すってことか?」

「その推測については否定する」

「違うんだ……」

「リルはロクゴウと共にいる。肉体の状態は良好。ただ精神状態は落ち着いてはいるものの、同年代の子供と比較すると、活動的ではないように見受けられる。家でじっとしている状態が続く――つまり」

「元気がない?」

「その表現が適切だと思われる」

「…………」

 

 ロクゴウとの受け答えは機械的ではないんだが、どうにもかみ合わないな。


「ギーク。ロクゴウは人族の心の機微には疎い。理解が難しい。そこでリルを元気づけてほしい。これが依頼だ」

「なるほどねぇ……。何で俺に?」

「信頼できる冒険者に頼みたい。オーラムがギークのことを信頼できる冒険者と言っていた」

「……俺、医療の専門知識とかないけど。子供の精神ケアも専門外だ」

「主治医からは他者と交流しても問題ないと言われている。『元気がない』状態であるが、精神面では落ち着いているのだ。専門的な対処ではなく、リルが年頃の少女らしく――そう、楽しく過ごさせてやってほしい。笑わせてほしい。難しいだろうか?」


 ロクゴウは常に無表情だったが、この時は少し不安そうに見えた。

 ……子供は苦手だし、正直面倒だ。


「分かった。引き受けよう。けど大したことはできないから、あまり期待しないでくれよ」

「――感謝する」


 けどまぁ、あれだ。子供をほったらかしにしていたら、今日飲む酒が不味くなりそうだと思った。

 やれるだけやってみようと思う。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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