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俺の異世界生活はこれで良い  作者: 脱出
第2章 中級冒険者は少女を救う
15/27

第15話 中級冒険者と新たな出会い

祝日のため時間がとれたので投稿します。

投稿間隔が不定期になり申し訳ありません。。

今回から新しい話になります。

よろしくお願いします。

 

 スライムは生物ではない、というのが定説である。

 魔王が作り出した魔法兵器だそうだ。

 俺が転生した世界は神が治める人界と呼ばれている。また人界とは別に魔神が治める魔界という世界も存在する。一万年以上も前、魔神は人界を滅ぼそうと画策し、配下である魔王はそのための作戦を幾つも実行した。

 その一つがスライムを用いた人界侵略である。スライムの元となる『核』を世界中に散布した。核が周囲の魔力を吸うことで、人を襲うスライムが発生する。

 作戦は成功しスライムは世界中に散らばった。しかし当のスライムの戦闘力が低いのもあり、人類への被害は最小限ですんだ。

 ・・・・・・もっとも一万年以上経った今でも、魔王が散布したスライムの核は世界中に残っており、スライムは発生し続けている。散布した核は限りがあるのでいずれは全滅するはずだ。『スライムが絶滅した時こそ魔界との戦いが終わる』と唱える学者もいるくらいだ。


「といっても、俺が生きている間は無理だろうなぁ」


 地下水道で俺はそうひとりごちる。

 目の前には白色のスライムがいた。普通のスライムよりは固く、動く度に霜を振りまいている。周囲の冷気を吸い発生したスライムは『アイススライム』となる。

 動きはとても遅いので処理は容易い。俺は火球を放ち、スライムを焼き尽くす。

 

「アイススライムが出始めたってことは、もうすぐ冬か」

 

 スライムで感じる冬の訪れ。情緒もくそもないな、と俺は思った。

 前回の悪魔崇拝者が起こした騒ぎから既に一ヶ月が経過していた。

 気が付けば季節は冬に差し掛かり、あっという間に年を越すことになるのだろう。俺は目立った活躍もせず、いつも通りスライムとちびちび討伐して小銭を稼ぐ日々だった。きっと来年も変わらないだろう。

 魔王との戦いといった『英雄』の活躍とは無縁なのだ。そういうのは勇者を始めとする上級冒険者の領分であり、俺は自分にできることをすればいい。



「――ギークさんに『勇者』パーティー所属のロクゴウ様がお見えです。お話があるそうで、奥の応接間にてお待ちしております」


 とスライム討伐を報告した後、受付嬢に俺はそう言われた。人族の女性である彼女は更にこう続けた。


「……ギークさん、何かやらかしたんですか?」

「失礼な。法に触れることは何もしていませんよ。当然、勇者パーティーに目を付けられることもしていません」

「ですよね。ギークさんは平凡で冴えない一冒険者ですもの……。じゃあ、何の要件なのでしょうか?」


 彼女は、美人で愛嬌もあるので冒険者の中でも人気が高いが、時おり素で失礼なことを口にする。


「もしかしたら俺の隠れた才能に気付き、勇者パーティーに勧誘しにきたのかもしれません」

「それはないでしょ」

「声出して泣いていいですか?」

「冗談はともかく、結構長くお待ちいただいているので、早く行ってあげてください」

「ええ……行かないと駄目ですかね……」


 正直言って怖い。

 勇者といえば冒険者のトップに位置する正真正銘の英雄たちである。実力も名声も富も全て持っている者達だ。彼らの一言で俺のクビなんて簡単に飛んでしまうだろう。

 そんな人たちに会うのは怖すぎる。

 聞かなかったことにして帰って寝たい。


「行かなかったら余計に面倒なことになると思いますよ」

「だよなぁ……」


 いざとなれば権力者には逆らう気概で生きているが、いざという時でもなければ、面倒なので権力者にはおもねって生きている。

 よって従うしか道はないのであった。

 俺は応接間へと向かう。



 勇者パーティーのサポーター・ロクゴウ。正体は勇者が創った自動人形である。魔術師が自らの魔力を人形に組み込み、その魔力が尽きるまで主人に仕える自動人形。

 勇者が創った自動人形ロクゴウはあまりにも人に近く、誕生した時は『人と認めるべきなのか』と大いに議論をよんだそうだ。魔法による人の生成は禁忌とされているからだ。

 最終的には人形だと結論付けられたらしいが……いざ目にすると、その結論を疑ってしまう。

青色の髪に同じ眼の色。整った顔立ち

 応接間にいる彼女の見た目は人族と変わりはなかった。白いローブを見に纏っていて、裾から覗く手の指には人形らしい関節があるが、それがむしろわざとらしいとすら感じさせる。


「ご足労いただいて、すまない。中級6等級の冒険者ギーク・エリード……さん。ロクゴウの識別名称はロクゴウという。どうぞ、よろしく頼む」


 と彼女は頭を下げた。俺も慌てて頭を下げる。


「こちらこそ遅くなり申し訳かったです。あのー。それで何の御用でしょう」


 俺は揉み手をしながら言う。ロクゴウは立ったまま続けた。


「オーラムからアナタは頼りになる冒険者だと聞いた。そんなアナタに一つ頼みたいことがある、とロクゴウは考えている」


 以前依頼を受けた上級冒険者の名前が出てきた。オーラムの依頼を引き受けた時は、自分の名前が広まり仕事が増えないかと確かに考えはしたが、勇者パーティーからの依頼が来るとは予想していなかった。


「ロクゴウはロクゴウの手にあまる問題を抱えている。できれば、手を貸してほしい」


 そこでロクゴウは思い出したように応接間のソファを指さした。


「失礼した。座ってくれ」


 俺は言う通りにソファに座る。

 ロクゴウは立っていた。


「…………」

「どうした? ギーク・エリード……さん。何か困っていることがあるのか?」

「いや、アナタも座ったらどうです?」

「ロクゴウは休息の必要を感じないが……?」


 とロクゴウは不思議そうに首をかしげた。

 ……やれやれ。これまた面倒事の気配がするな。


 ロクゴウ

 種族:自動人形

 職業:上級冒険者(2等級),魔法剣士。


※【冒険者のランク】

 10~8等級までが下級

 7~5等級までが中級

 4~2等級までが上級

 という区分になっています。

 説明を入れるタイミングがなかったので、ここに記載します。すみません。


 ここまで読んでいただきありがとうございました。

 ブックマーク、評価、いいねもありがとうございます。

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