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第1話 異世界転生した俺は中級冒険者をやっている。

よろしくお願いします。

 

 異世界転生してから今年で21歳になる。

 前世は日本人で、この異世界では《ギーク・エリード》という名前の男性として生きている。

 異世界で何をしているかというと冒険者として普通に働いていた。

 冒険者というのは様々な依頼をこなし生計を立てる職業だ。モンスター退治からキャラバンの護衛などなど。種類は何でもあるが安定して収入を得るのは難しい。

 依頼も常にあるわけでもなく、高給の依頼は適した資格が必要なこともある。

 常に一定の需要があり、金払いがよく、俺でも受注可能な依頼。

 そんな依頼がないものかと俺は探し続け、遂に見つけるに至った。

 『地下水道のスライム討伐』である。



「『猛火球レイジング・ファイアーボール』」

 火の中級魔法をスライムに目がけて放つ。

 スライムは火に包まれ、次第にぼろぼろと崩れ落ちていく。

 その様子を確認した後、俺は後ろの同業者に指示を飛ばす。


「スライム処理開始。確認をお願いします」

「了解。確認作業を開始します」

「俺は周囲の警戒にうつります」


 同業者の男は下級冒険者で名前をドリーという。ドリーさんは安全な作業をしたいという理由で未だ下級冒険者だが、仕事ぶりは丁寧で好感が持てる男性だ。

 冒険者の主な階級は、下級・中級・上級で、俺は中級冒険者に当たる。任務とモンスターも同様の区分がある。

 そしてスライムは下級モンスターであり下級冒険者でも『処理』は容易である。

 ならばなぜ俺がこの任務についているのか?

 

 スライムには目視できない核が存在し、核が残る限り時間が経てば再生する。剣で体を切れば動かなくなるが、周囲の魔力や汚れを吸って再び活動を開始するのだ。

 核の破壊には中級以上の魔法攻撃が有効とされている。

 スライムが溢れた際の『処理』は下級任務だが、『討伐』に関しては中級任務となるのだ。

 

 俺は中級魔法を使えて、剣も使える魔法剣士として冒険者をやっている。中級魔法でスライムを討伐可能で、更に一人で前衛もできる。そのため冒険者ギルドから重宝され、よくスライム討伐を任せられるのだ。公共事業に関わる依頼なので金払いも良い。

 勿論他にも依頼をこなす必要はあるが、十分に生活ができている。


「この区画のスライム討伐完了……ドリーさん、上がりますか」

「了解。お疲れ様」


 決められた区画のスライム討伐を終えた。

 俺はドリーさんに近付き、『洗浄』魔法をかける。水と風の複合魔法で汚れと匂いを落とせる。


「ありがとう。ギーク君がいてくれると汚れ落としまでしてくれて助かるよ」

「汚れ落とすの大変ですもんねー」


 雑談しつつ外への出口に向かう。梯子を昇り切り外へと出ると、既に夕暮れだった。

 石造りの町並み、夕暮れ時の風、人の往来。それら眺めて伸びをする。

 一仕事を終えた満足感に浸る。

 そのまま任務完了の報告へと向かう。


 

 冒険者ギルドへと戻り、報告を終える頃には日は沈んでいた。提出する報告書はスライムを討伐した場所の記入やら、討伐した個数など書かなければならないことも多く時間がかかるのだ。

 外で待っているドリーさんと合流する時には日は沈んでしまっていた。


「すみませんね、待たせました?」

「いやいや全然。報告業務は時間がかかるから仕方ない

「というか書く項目が多くなったんすよね。要領改訂とかで年々書類仕事が面倒になりますよ」

「そうだった。また要領もチェックしないと」

「仕事が増えちまいますね……それはそうと今日は飲みに行く予定なんすけど、ドリーさんも一緒に行きません? 《紅の砦《くれないのとりで》》の人達も来ますけど」


 『紅の砦』というのは冒険者クラン※の一つだ。俺はソロで活動しているのでメンバーではないが、仲良くさせてもらっている。

 ※10人以上の冒険者で構成された冒険者集団。4人まではパーティーとよぶ。


「あぁ……悪いけど今日は予定があってね。遠慮しておくよ」

「そうだったんですか。じゃあ、また次の機会に」

「悪いね。お疲れ様」

「お疲れ様っす」


 手を振りドリーさんと別れる。俺はそのまま行きつけの酒場へと向かう。



「あぁー。疲れた」

 と独り言が口を出る。

 

 ――異世界転生してから21年。俺は普通に生活している。

 前世の知識はあるが転生前の自分の記憶については殆ど覚えていない。

 異世界転生したものの、特別な使命を持っているわけではない。偉業を成したわけでもない。

 成りあがりともハーレムとも無縁。

 それで良い、と思う。

 適度に仕事をして、無理をせず、人間関係を大事にしつつ、偶に遊んで、社会貢献をする。飯を食って夜はぐっすり眠る。

 そこそこ幸せな生活ってやつを噛みしめる。

 

 俺の異世界生活の目標は『後悔をしないよう生きること』だ。

 この幸せを頑張って維持するために今日も頑張るぜ。


 ギーク・エリード

 種族:人族(転生者)

 年齢:21

 出身地:西大陸 ゼル王国 

 職業:中級冒険者(6等級),魔法剣士。

 備考:保有資格(中級魔術師、上級召喚士、他)。

    契約モンスター:中級悪魔1体


 ※2~4話の途中までは主人公の過去編になります。


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